「七里ヶ浜くん、逃げないでね」
巻島は体育倉庫の扉をゆっくりと引いた。
中に入ると、ちょうど二十四時間前に閉じ込められたときと同じ、埃と木の匂いがする。
「……何のつもりだ?」
「……密会? 逢瀬? なんて言えばいいかな。僕たちだけの言葉、作っちゃう?」
巻島は振り向きながら囁くと、俺の腕を軽く引っ張った。
中に引き込むようにして、扉を閉める。鍵がかけられる。
「お、おい!? 鍵まで……」
「だって、邪魔されたくないでしょ?」
そう言って、巻島は俺のすぐ目の前に立つ。
距離が近い。鼻先がかすりそうな距離。
「……お前、何がしたいんだよ……」
「え? 分からないの?」
彼女は俺の胸に手を置いて、ぐいっと寄ってくる。
「昨日は、なんかいろいろ中断されたから……ね。続き、しよ?」
「いや、昨日の続きって……」
「――キス、しよ」
耳元で、吐息まじりでそう言われた瞬間、俺の心拍数は限界を迎えた。
一体どうしてこんなことになったのか。
俺は即座に、しかし走馬灯のように丁寧に思い返していた。
こんな感じですって感じです。
6話(これを入れて7話)まで我慢して読んでください!




