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勇者の孫の旅先チート 〜最強の船に乗って商売したら千の伝説ができました〜  作者: 長野文三郎


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オプション選択の苦悩 再び

 5000を超える魔軍兵士は10隻の船に分乗して一路いちろベッパーを目指していた。

バクナワという海竜がく船の移動速度は速く、数時間後には目的地へ到着できそうだ。

船に乗る魔族たちは戦闘の興奮に心を躍らせながら、開戦を待ちわびている。


 舷側げんそくに寄りかかっていた二体の魔族が会話を交わしていた。


「久しぶりの戦闘だから体がムズムズしやがる」

「ああ、今日も騎士たちをヒイヒイ言わせてやるぜ。奴らの筋肉を突き破り、内臓を掴み出す感触を味わえると思うと、もう……」


 片方の魔族は身をプルプルと振るわせて相棒を笑わせていた。


「くくく、オメーはキモいんだよ。……ん?」


 視界の端に何かをとらえたような気がして魔族は空を見上げた。

こいつはトンボのような複眼の持ち主で、異様に広い視角が自慢だった。


「どうした?」

「あそこを見ろ。何か飛んでいるぞ」


 魔族が指し示す場所には丸みを帯びた箱型で、背中に回転する翼の生えた物体が飛んでいた。


「何かいるな……。イビルゴーレムの一種みたいだが、おそらくブリエル様が援軍として呼んだのだろう」


 ヘリコプターという機械を魔族は知らない。

まして、下等な人間が魔法以外で空を飛べるなど、想像の範囲を大きく超えていたのだ。


「あれ? 引き返していくぞ。ワイバーン部隊のやつらが接触しようとしたみたいだけど、ものすごいスピードで去っていったな」


 全天候型哨戒機イワクス2の最高時速は368㎞だ。

短距離ならワイバーンでも追いつけるだろうが、中長距離なら比較にもならないほど速い。


「何だろうな……嫌な感じがする」


 水平線を睨む魔族の肩をもう一方の魔族が叩いた。


「お前、ビビっているのか? ブリエル様がいつも言っているだろう。魔族は魔族らしく――」


 彼の言葉は突如立ち上がった水柱に遮られた。


「な、なんだっ!? 何が起こった!?」


 混乱する魔軍をよそに、水柱は間断かんだんなく立ち上がっていく。


「水中だ! 水中のバクナワが攻撃を受けているぞ」

「なんだと? だけどどこから?」


 魔族は自慢の複眼で周囲を見回すが、敵の姿は確認できない。

ようやく水中を迫ってくる水雷砲の軌道が見えた時には、船を曳航えいこうするバクナワはすべてやられてしまう。

機動力を失った船は徐々にスピードを落とし、ついには波に揺られるだけの状態になってしまった。


       □□□


 魔導レーダーを睨んでいたシエラさんがニヤリと笑って顔を上げた。


「よし、海中のバクナワはすべて倒したぞ」

「計画通りですね。甲板にいるナビスカさんに伝えます」


 僕はマイクを手に取った。


「ナビスカさん、もうステルスの魔法を解いても大丈夫ですよ」


 返信はすぐにあり、ナビスカさんの必要以上に大きな声が返ってきた。


「もう少しで魔力切れを起こすところでしたぞ! 間に合ってよかったわい、ダハハハハッ!!」


 ナビスカさん達には輸送艦の舳先に陣取ってもらい、光魔法を応用したステルスを展開してもらっていたのだ。

これは光の屈折を利用した魔法だそうで、目くらましに使われる。

かなり大雑把な魔法なので近距離ではバレバレになってしまうのだが、敵との距離が5キロほどだったので、こちらの位置は気取られなかったようだ。

海上で太陽を背にしていたのもよかったのだろう。


 見かけの豪放磊落ごうほうらいらくさからは信じられないくらい、ナビスカさんは繊細な魔法を使いこなすのだ。


「各砲手は決められた手順通り攻撃を開始せよ。まずはワイバーン部隊を打ち落とせ」


 輸送艦、揚陸艇エアロスクランダー、高速輸送客船、イワクス1、2号から一斉射撃が開始される。予想外の攻撃にワイバーンは打ち落とされ、動かない敵の船は次々と轟沈していった。


       □□□


 洋上を漂う二体の魔族がいた。

味方の体を盾に、いち早く戦場から逃げ出した司令官のブリエルと副官のタトールである。

ブリエルは亀型のタトールの背に乗り、その頭を何度も拳で小突いている。


「タトール、もう少し早く泳げんのか?」

「どうにも海水は苦手でして。湖や川なら問題ないのですが塩水は目に沁みます」


 タトールの受け答えにブリエルは苦虫を噛み潰したような表情になった。

だが怒りに任せてタトールの首をねじ切るわけにもいかない。

ブリエルも泳げないわけではないが、陸までは何十キロもあるのだ。

ここは泳ぎの得意なタトールに任せる方が効率的であった。


「クソッ、忌々しい人間どもめ。まさか古代の魔法兵器を復活させていたとはな」

「まったく想定外でございました。マジックアローが雨あられのように飛んでくるなど考えられない話です。あれではマジックレインというかマジックヘイルストームといいますか……」

「いいから黙って泳げ」


 もう一度タトールの頭を小突いて、ブリエルは目を閉じた。

魔王に知られる前に今回の失態をなんとか挽回しなくてはならないのだ。

さもなければどんな罰を言い渡されるか知れたものではない。


「魔王様へのご報告はどうしましょう」

「黙っていろと言ったであろう」


 タトールに言われるまでもなく、古代兵器の復活はすぐにでも報告しなければならないことだ。

だがそれをすれば5000の兵士と60体のワイバーンをも失ったこともばれてしまう。

同じ報告をするにしても、敵をせん滅してからでなくては自分の地位がはく奪される恐れがあった。


「ブリエル様、少々休憩してもよろしいでしょうか? 泳ぎ疲れてまいりました」

「……」

「はあ……。ここはどこでしょうかね? ダハルまではどれくらいあると思いますか?」

「タトール君」

「はい、なんでしょうか?」

「死にたいか?」

「いえ……」


 二体の魔族は月の上った海を静かに南下した。


       □□□


 今回の戦闘でまたレベルアップした。


職業 船長(Lv.23)

MP 34289

所有スキル「気象予測」「ダガピア」「地理情報」「二重召喚」「伝導の儀式」「三重召喚」


レベルアップにより船にオプションがつけられます。

a.三連魔導砲(輸送艦専用)

b.艦載機:陸戦型重装魔導モービル・ゲンブ


 待ちわびていた三連魔導砲がついに出た! ……って、陸戦型重装魔導モービル・ゲンブってなに? 

僕はステータス画面でゲンブの詳細を調べていく。

画面に現れるスペックに思わず震えた。


 魔導モービルは騎士の甲冑のように体に装着して使う魔道具だ。

とはいえ一般的なアーマーよりも大振りで、機能も多岐にわたる。詳細は以下の通りだ。


陸戦型魔導モービル ゲンブ


駆動装置

失われた重力魔法の応用でホバークラフトのように浮いて進むことができる。

最高時速412㎞。跳躍力28m-50m(装備者の能力によって異なる)

海上でも使用が可能(ただし波に乗らなくてはならないので技術がいる)


防御系装備

〇魔導爆発型反応シールド:自ら小さな魔法爆発を起こして攻撃の威力を相殺そうさいさせる。

〇アクティブ魔導防御システム:魔力波を出して空間に干渉し、攻撃魔法の軌道を逸らす。


攻撃系装備

〇魔導ガトリング砲

〇エ・クラナ:大地神が持つといわれる大剣。鋼鉄をも一刀両断。

〇ショルダー型魔導グレネード

〇12連装マジックミサイルランチャー


強化系

〇魔導アシスト外骨格:外骨格の補助作用で動きの一つ一つがパワーアップする。


その他

〇魔力波探知装置:半径15キロの様子が分かる。

〇魔力チャージボックス:魔力をフル充填で最大30分間活動ができる。



 僕はずっと、次に三連魔導砲が選択できるようになったら迷わずにそれを選ぶつもりでいた。

だって、ロックナ解放には艦砲射撃が絶対に有効だと思ったからだ。

だけど、魔導モービルって何なんだよ!? 


 30分で活動限界がくるなんて、使いどころの難しい乗り物だ……。

だけど、どうしようもなく僕を惹きつけてくる! 

抗いきれない魅力に負けて、僕はそっとb.を選択した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔導モービルとは(|| ゜Д゜)人間が纏うパワードスーツなのか?全体の大きさは何メートルぐらいのサイズだ?(゜ロ゜) 流石に2、3メートルだとレニーは着れんだろ(  ̄ー ̄)ノ
[一言] >抗いきれない魅力に負けて、僕はそっとb.を選択した。 男の子スイッチ?
[良い点] 魔神 ごーーー 誰が装着するのかな
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