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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第7章「仇敵の無敵殲滅」

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第7章続々・プロローグ「神が許した晩餐」

 俺はナユから離脱し、3kmの距離を取った。

 このくらい離れていてもまったく安心できないが、まぁ、取らないよりはマシだな。


 さて、ナユに呼び掛けに応じて顕現したのは、6体の惑星竜シリーズだ。



願いを尊ぶ水星竜オウナウィリス・マーキュリィ》』

価値を失う金星竜ヴァリュレス・ヴィーナス

命が蠢く地星竜リグルライフィ・アース

夢を開く火星竜ドリムオープナー・マーズ

理想を抱かぬ土星竜イデアノウト・サターン

恐れを知る海王竜リーグレット・ネプテュス


 空を貫く山のような巨体を持つのが、金星竜と地星竜。

 大きさはそれほどではないが、腕が6本有ったり、尻尾の先にデカイ刀を付けていたりと個性豊かなのが、水星竜と火星竜。


 そして、別格のオーラを纏っているのが、土星竜と海王竜だ。

 土星竜こと、理想を抱かぬ土星竜イデアノウト・サターンはドラゴン達の中心に位置取り、空からナユを見下ろしている。

 その後ろに4匹の竜が並び、一番後ろに海王竜が控えているという陣形だ。


 そんな圧倒的畏怖を振り撒く存在達を、見た目10歳に満たない幼女が、不敵な笑みで見あげている。


 ……幼女とドラゴン?

 いやいや、幼女と獲物だな。


 ある意味で張り詰める空気を引き裂いて声を発したのは、ナユだ。



「なんじゃ、8匹全部おらぬではないかの。木星竜ジュピターはいつもの事として、『希望を戴く天王竜ウィルホープ・ウラヌス』はどうした?」



 不機嫌そうな声で、ナユは最前線に立つ土星竜に語りかけた。

 土星竜は、ほんの少し視線を泳がせた後、僅かに拳を握りながら言葉を返す。



「……天王竜ホープは、死んだ。遺骸は回収してあるが、魂は残っておらず、消息は不明のままとなっている」

「なに?あの天王竜がかの?」


「あぁ、そうだ。遺骸の周囲には、蟲量大数様の側近、『王蟲兵』の装甲が散らばっていた。恐らく戦闘になり相撃ちとなったのだろう」

「王蟲兵……それも、天王竜を下す程となると『奴』か。あ奴は、儂を相手にしてもまともに戦かえるからの。次の命があるからと、お前達のような悪手とを取る事はせん」


「返す言葉も無い。我等『竜族』は、衰退の一歩をたどっている。こたびの惨状も、1000年前ならば、このような事にはならなかった」

「そうじゃな。あの時、お主はまだ若竜じゃったか。だが、そこの後ろの稚魚共よりかはマシじゃったからの」



 ふむ、冥王竜は”雑魚”だったが、他の惑星竜シリーズは”稚魚”ときたか。

 で、なんで魚に例えてるんだ?

 あぁそうか。ナユは魚が好きだったな。

 もちろん、食い物的な意味として。


 そして、土星竜の後ろの、稚……惑星竜達が一斉に騒ぎだした。

 流石に、稚魚呼ばわりは耐えかねたらしい。



「おい、そこの女。察するにお前は名の有る皇種なのだろう?だがな、我らを前にして、その態度は何だ?我等は不可思議竜様の側近であるぞ?」

「ふむ。聞いてはおったが、土星竜と海王竜以外は会うのは初めてじゃな。順番に名乗る事を許してやろう」


「許してやる?随分と傲慢のようだな、名乗らぬ皇よ。まずはお前が名乗るべきではないのか?」

「……おい、土星竜。お前、儂の事を教えておらんのか?」



 ……。なんか雲行きが怪しくなってきたな。

 土星竜は目が泳いでいるし、後ろの惑星……稚魚共は逆にギラギラさせている。

 ちなみに、一番後ろの海王竜は知らんという顔だ。


 俺はコイツとは面識が無い。


 俺のパーティが昔ここに来た時も、顔は出したが、一言も声を発する事は無かった。

 ただ、何となく、コイツが一番強いんじゃないかと思う。

 こういった底が見えない奴は、大抵ヤべえからな。


 だが、今は沈黙を保っているし、いったん保留。

 俺は必死に言い訳を考えているであろう土星竜に目を向けた。



「すまぬ。教えてはいるのだ。教えているのだが、血気盛んなのは竜族の性でもある。己が実力を過信し、世界には自分より強い者などおらず、自分が本気を出せば不可思議竜様と並ぶとすらと思っている、未熟な雛たちなのだ。どうか、容赦をして欲しい」

「一言で言うのならば、身の程知らずの馬鹿なんじゃな?」



 ナユがバッサリ切り捨てた。

 その言葉を聞いて、後ろの稚魚ドラゴンたちがギャアギャアと騒ぎ出している。


 しかし、土星竜は完全無視。

 それどころか、ナユの暴言を肯定しやがった。



「そうである。ワシのような老体が事実上の取りまとめ役なのも、コイツらの前任の馬鹿共が、身の程もわきまえず他の皇種や眷皇種に喧嘩を売り、返り討ちに会って死んだからだ。如何に命が複数あろうとも、限りはある。一度の戦闘で命を失うのは一度とは限らない。それは貴女様が説いた言葉だったはず」

「そうじゃな。それは神が証明した事実でもあるからの。しかし、自分ばかりを責めるでないぞ?後ろの稚魚共が未熟なのは不可思議竜がヘタレであるせいもあろう。常に戦いに身を置いている儂の帝王とはそこが違うのじゃ」



 話を聞く限り、後ろの稚魚ドラゴン達は若いらしい。

 ということは、相対的に土星竜と天王竜、木星竜と海王竜は古い時代を知るドラゴンという事になる訳だ。

 そんでもって、冥王竜はさらに若い、成りたてほやほや眷皇種ってことか。


 俺は、手足と尾と翼を焼滅させられて、ツチノコみたいに地を這っている冥王竜に目を向けた。

 何とも情けない姿だ。だが、ほふく前進で俺の目の前まで進んできている。


 諦めない根性というか、必死さは評価するぞ。

 ……よし、捕獲して、万が一のための保険にしておこう。


 俺は冥王竜の目の前まで無音で移動すると、泣きべそをかいて湿っている鼻先を足で押さえつけた。

 ズリズリ……と移動していた冥王竜の動きが止まり、慌てた声が漏れ出てくる。



「進めないすよ……?なんか、進まないっすよっ!?なんでっすか!??進めな――」

「おい。ちょっと顔、貸せや」


「ひぃぃ!いきなり人間が現れたっす!?今度はなんなんすか!?なん……お、お前は!」

「あ?俺の事を知ってるのか?」


「お、お前は、英雄……!」

「おう」


「英雄、フルイラード!」

「……。ちょっと教育が足りてないみたいだな?おらっ!」


「アベッ!」



 なんだよッ、古い動物性油(フルイラード)ってッ!?俺はそんな、食ったら腹を壊しそうな名前じゃねえッ!!

 そしておい、ナユ!笑ってんじゃねえぇぇ!!


 とりあえず冥王竜の鼻先を軽く蹴飛ばしつつ、情報収集を始めるとするか。

 ナユが戦っている間に、終着点を見つけねえとな。


 さてと。まずは、なんでこいつが俺を知っているのかという所からだな。



「んで、冥王竜つったか?お前はなんで俺の事を知っているんだ?何処かで会ったか?」

「会ったも何も、俺の修行場に乗り込んできて騒いでいたじゃないっすか!?その時に戦闘になったの忘れたっすか!?」


「ん?そんなことあったっけ?」

「今から8年くらい前!お前は子供、赤き先駆者(ド・レッド)を連れていた。間違いないっす!」


赤き先駆者(ド・レッド)?あー、ユニク達がヒーローごっこにハマってた時だな。……だとすると、あん時のドラゴンか。変な所に居るなと思って、ついでに狩っとくか程度だったんだが、お前、惑星竜シリーズだったんだな」

「ついで!?ついでで襲撃されたっすか!?」


「だってお前、ぱっと見、強そうだしな。丁度いいやと思って、レベル上げをしてたユニク達に戦わせたんだよ。んで、ボッコボコにされたんだったよな」

「レベル上げ……。だが、赤き先駆者と俺、1対1の対等な戦いだったっす!決闘を申し込むって言われて返事をしようとした所を、後ろから……って、あ、あれ?」


「あー無理に思い出そうとしなくていい。辛い思い出だろうからな」



 そうそう。ヒーローを気取っていながら、不意打ちとか大好きだったもんな。

 人類の守護者や英雄としちゃ間違ってないが、「娘の将来が心配です……。」とアプリがよく嘆いていたっけ。


 さて、コイツの謎は解けたし、そろそろ本題に入るか。っと、その前に……。

 どっこいせっと。



「おい、なんで俺の頭に座るっすか!?いくらなんでも、椅子がわりは酷過ぎるっす!!」

「何言ってやがる。これはお前の身の安全を確保するためだぜ?」


「なんでっすか?」

「ナユは俺には攻撃してこない。だから、俺の傍にいればお前はこれ以上攻撃されない訳だ。分かったか?」


「なるほど!分かったっす!」



 こんな適当な理由で納得しやがった。

 ……ドラゴンの脳味噌は筋肉で出来ているって本当なんだな。


 俺は冥王竜の頭に座り、ナユに視線を向けた。

 冥王竜も安全を確保した今、興味があるらしく、頭を持ち上げて振り返って見ている。


 そこでは、ナユが稚魚共を馬鹿にしまくっていた。

 間に挟まれた土星竜が、視線をオロオロさせてたじろぎまくってるし、相当ヒートアップしてるみたいだ。


 しかし、ナユはまだ正体を明かしていないっぽいな。

 稚魚達の手のひら返しが、非常に楽しみだ。



「それで?儂の事をとやかく言えるほどお前達は強いのかの?どうせ、トカゲに羽の生えた程度じゃろうの」

「とかっ!?……我ら惑星竜を愚弄するつもりか。土星竜はお前と知り合いだから温和な事を言っているが、我等は世界最強の竜の一族である。そして、その中でも族長たる我等はとりわけ最強。最強の中の最強なのだ」


「くくく、族長が最強とは笑わせてくれるの。新しき火星竜よ、先代の火星竜は誰が殺したと思っておるのじゃ。この儂じゃの」

「……なにっ!?ならばお前は、親父殿の仇ということかッ!?」


「そうじゃ。しかも、それだけじゃないぞ?先先代も先先先代も儂が殺した。火星竜は短命という噂があるのは、歴代が揃いも揃って馬鹿ばかりじゃからだの!」

「ぐぬぬ!一族の仇というのなら生かしてはおけぬ!土星竜よ!こ奴は我が狩るッ!!いいかッ!」



 そうか。火星竜は歴代馬鹿だったと。

 そういえば、じじぃも「火星竜はサラマンドラの火杯で完封できるぞ。ほほほ」とか言ってた。

 惑星竜達と和解した後にした親善試合で苦戦した昔の俺は、まだ若かったってことだな。


 俺が懐かしんでいると、冥王竜が「火星竜さんは火力が半端ないっす!6本の腕で獲物は絶対に逃がさないっす!」とフラグを立てやがった。

 そして、その光景を一歩引いた所から見ている他の惑星竜達。


 ちなみに一番目が死んでる土星竜は、「もし、そのお方を狩れたのなら、今日からお前は世界で3番目に強い者となる事が出るぞ。このド阿呆がッ!」と嘆いている。



「さて、さっきの雑魚は暇つぶしにもならぬの。じゃが、お前は儂を楽しませてくれるのか?」

「楽しくはあるまい。なにせお前はここで死ぬのだからなぁ!《天下炎(ホーリーフレア)!》」



 カッっと煌めいて、ナユの周囲が光に包まれた。

 流れた閃光の回数は25回にも及び、3kmも離れているのにもかかわらず、汗が噴き出す程熱い風が吹き荒れてゆく。


 しかも、風は俺の背後から、つまりナユに向かって流れ込むように流れたのだ。

 これはつまり、あの炎によって周囲の空気が使い尽くされ、爆心地は真空状態を引き起こしたという事だ。


 真空状態にある物体は、熱の影響を受けやすくなる。

 そんな状態で1億度を超えるであろう熱に晒されれば、防御魔法を張っていても相応にダメージを受ける。

 俺も昔、アプリの防御魔法を突破されて焦ったぜ。



「決まったっす!火星竜さんの必殺技!!相手は死ぬっす!」



 おい、フラグを追加するんじゃねえよ。

 ただでさえ勝ち目がねえってのに。


 そして、冥王竜のフラグは速攻で回収された。

 湧き立つ土煙りから、ナユが無傷で出てきたからだ。



「チープな炎じゃの。まったく芸がない。どうして火星竜はこうも工夫が無いのじゃ?」

「な、なに!?天下炎を受けて生きているだとっ!?我が生み出した必殺技であるのだぞ!?」


「ちなみにの、この技は昔に受けた事がある。その時は見事だと褒めたもんじゃが、今回のは完成度が悪い。空気を使いきってしまうと熱の温度が上がり切らぬからの」

「何を言っている?空気をなくすほどの高温だぞ!それ以上など無いのだ!」


「あるじゃの。ほら、ここに。《太陽核サンセント》」



 ナユが開いた手の中に、炎の珠が出現した。

 それは、星の母たる核。

 世界の法則として、すべての物体は、その核の中へ回帰する事を運命として刻まれている。


 ……ナユの奴、遊ぶのをやめたな。

 ここから先の戦いは、世界の理を超越する事の出来る者しか、参加することはできない。



「なんだそれは!?体が引きつけられる!?」

「密度を弄って作った炎じゃ。これは燃料たる空気を理想気体という状態にしてから……と、そんな事を説明しても意味が無いの。要は、重力を発生させている炎じゃ。触れた物は溶け込み、2度と離れる事は無い。たとえ複数の命があろうとも、転生した瞬間に焼き尽くされて再び死ぬのじゃからな」


「馬鹿な……。転生は不可思議竜様の力を借りて行う秘術である……それに介入するなど……」

「そう思うなら、喰らってみるがよい。ほれ」


「ひっ。」



 ナユは、火星竜に向かって炎の珠を投げつけた。

 当然火星竜は逃れようと離脱を試みるが、失敗。

 発せられていた重力によって動きを止められ、珠自らが光速で近づき衝突した。


 ……ぱちゅり。

 乾いた音がして、断末魔の叫びが響く。



「のうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁあああああああああああああああああああ!」

「1回、2回、3回……45回、46回、47……どうやらお前の命は48のようじゃの。《日蝕パンドラ》」



 お?ナユの奴、火星竜を助けたな。

 転生の残機が残り1回という超ギリギリのところで、魔法を止めて火星竜を弾き飛ばした。


 ドゴン!っと軽い音を響かせて岩肌に竜の卵が埋まる。

 竜は死ぬ瞬間に肉体に蓄えたエネルギーを使って単体生殖を行い、卵を残す事が出来る。

 そして、その卵に自我と記憶を移植し、再び誕生するのだとか。


 じじぃの図書館にあった本に書いてあった事だし、間違いないはず。

 そして、転生には、『残機』と呼ばれる回数制限があるらしいんだが、流石にその仕組みまでは乗っていなかった。

 いい機会だし、冥王竜に聞いてみるか?



「おい、冥王竜。俺の質問に答えてくれたら、その体、なんとかしてやってもいいぞ?」

「えっ!?これ治るっすか!?何度やっても魔法で再構築できないっすよ!?無理っす!」


「今の状態じゃ無理だ。なにせ、次元を貫通した事によって、お前の手足という概念は上と下の次元に散らばっているからな。だから、因果を断ち切る事によってその概念と決別し、新たに手足という概念を想像してやれば魔法で再生する事が出来るようになる」

「そんな事が出来るっすか!?だったら何でも話すっす!ナメクジみたいな余生とか絶対に嫌っすから!」


「よし。転生には回数があるよな?なんでだ?」

「転生は、肉体のエネルギーを使うっす。だから、転生した後は転生前よりも弱体化することになるっすよ。当然、成長すれば元に戻るらしいっすが時間が掛るっすから、何度も転生すればエネルギーは少なくなっていって最後は転生そのものに使用するエネルギーすら足りなくなるっす」


「ほう?つまり、高位ドラゴンを攻略しようとすると、消耗戦を強いられるって事か」



 いい事を聞いたな。


 昔勝てなかった理由の一つに、水星竜が使う回復魔法があった。

 転生した金星竜に水星竜が回復魔法を掛けていたのは、消費した体力を少しでも元に戻す為だったのだろう。

 今度惑星竜と戦う事があったら、回復する隙を与えずに連撃をしよう。


 今のところないドラゴン退治の予定を立てていると、ナユが残りの稚魚たちを指差し始めた。

 店頭に並ぶ菓子を選んでいる子供のような、愛らしさだ。



「火星竜は喰い飽きているから喰わんが、お前らは別じゃ。残りの3匹よ。好きな順で儂の腹に収まるがよい」

「今の現状を見て、あなた様に挑めと?火星竜は短絡的だが弱者では無い。それなのにあのザマ。いや、あなた様が強すぎるのか……?」


「お前は水星竜じゃな?じゃあ、お前が一番。地星竜が2番。金星竜が3番でどうじゃの?」

「「「どうっていわれても……」」」



 稚魚たちが困惑しているんだけど。

 というか、ナユ以外は全員困惑している。俺も含めて。



「ならば、儂に一撃を入れられたら、いや、儂に触れられたらお前達の願いを何でも一つ叶えてやろう」



 なんか、ランプの魔人みたいな事を言い出しやがった……。

 ナユは脳筋だけど、どんな願いでも大抵は叶えてくれるはず。

 なお、ナユは金を持っていないので、巨万の富とかは無理だ。



「ならば、特別サービスじゃ。全員でかかってきても良い。これならどうじゃの?」

「その場合、誰か一人があなたに触れたら、全員の願いが叶えて貰えるのか?」


「もちろんじゃの」

「「「うむ!では、胸を借りようではないか」」」



 コイツらって、こんな調子の良い性格だったのかよ!

 誇り高き惑星竜達が、3対1なら戦いますって、さっきまでの威厳はどうした!?



「よし、どこからでもかかって来るがよい」

「《水刃裂ソドアクア!》」

「《吊るす年輪(ハングリング)》」

「《金塊槌ゴルディオンブレイク》」


「ふむ。そういえば、儂はまだ名乗って無かったの」

「「「死ねええええ!」」」


「ただ名乗るのもつまらんから、技を以て名乗りとするかの。……神に認められし『永劫の欲求』。この世はすべて、我が、那由他なる舌の上にあり。食礼晩餐、《悪喰あくじき=イーター》」



 これはやべぇ!!

 ナユの奴、本気を出すつもりだッ!!


 ナユの頭の上に出現した、赤黒い球体。

 あれは、ナユが本気の戦闘を行う際に出現させる、”知識の具現”。


 ありとあらゆる知識があの中に詰め込まれていると言われ、3m程度の大きさのあの球体さえあれば、この世界の複成物が作れるとすらされる。

 しかも、サポート系と見せかけて、あの球体自体がとてつもない攻撃力を持っているという何ともチートな代物だ。


 ほら、球体がグパァって口を開いた。



「儂はな、何よりも食事の時間を重視している。何人たりとも、この那由他の食事を止める事は出来ないのじゃ。故に、この瞬間も食事の時間は続いている」



 ゴリゴリと音を立てて、ナユは惑星竜達が放った必殺の一撃を全て口に収め、咀嚼し始めた。

 出現させた悪喰イーターを口の代わりにして、全ての攻撃をかみ砕き、咀嚼し、飲み下してゆく。


 悪喰イーターに喰われた物質・現象は、新たなる知識としてナユに還元される。

 神から与えられた知識と、ナユ自らが喰らい集めた知識。

 その小さき体には、数千年の時を経て膨大な知識()が、蓄えられている。

 そしてまた3つ、新しい知識が加わった。



「不味くは無いが、よくある味じゃの。面白くもなんともない」



 惑星竜達の必殺技を喰らい尽くした悪喰イーターは、その牙を、惑星竜そのものへ向けた。

 ごじゅり。と体が噛みちぎられ、バキバキと音を立てて溜飲されてゆく。


 そして、その場には小さい卵が3つだけ残った。

 山より大きいかもしれないと思った巨体も、個性豊かだと思った体も、もう、どこにも残っていない。


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