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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第6章「宿命の戦略破綻」

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第6章余談「たぬきにっき!!」

「……ホロビノ、本気出して良い。源竜意識ドラゴアイデンティー竜滅咆哮ドラゴカタスフィーも完全解禁!」



 天空にて戦っている主人から、真っ白いドラゴン『ホロビノ』へ向けて、制限解除の指令が飛んだ。

 その声を聞いたホロビノは、自らの体内に貯めているエネルギーを沸騰させ、解き放ち、叫ぶ。



「……《源竜意識の覚醒キュアラ・アイデンティー》!」



 迸る閃光を凝視する、200匹の瞳。

 この場に居合わせた全てのタヌキ将軍が、その光へ視線を飛ばし、それぞれが、自らの記憶と照らし合わせ、事態の判別を行っている。

 起こりうる可能性を吟味し、戦況を優位にするために思考を巡らせているのだ。


 タヌキ将軍は、ものすごく考えた。

 ……しかし、有効的な手段を誰も思いつかなかった。

 集結した200匹のタヌキ将軍の全ての経験を遡っても、思い当たる節が存在しないのだから、答えが出るはずもない。


 これは決して、タヌキ将軍の経験が足りないという事では無い。

 目の前のドラゴンが起こしている事象が、特別すぎるのだ。


 タヌキ将軍が思考を巡らせている間に、ホロビノの背後には、4つの魔方陣が形成。

 それは、自然界では決して見る事の出来ない特殊な魔法陣。

『最高位竜』のみが扱う事の許されるこの魔法陣は、通常の魔法陣とは異なる性質を持つ『不可思議なる事象』から生ずるものだった。


 通常の魔法陣は、魔法次元に格納されている魔法を、呪文という『鍵』を使って呼び出す為の装置。

 魔方陣の完成度によって魔法の効果に差が出るものの、一種類の魔方陣からは一種類の魔法しか出すことが出来ない。


 しかし、この魔法陣はまったくの別物であり、たとえ同じ魔法陣でも、術者個人によって効果が異なる。

 この魔法陣によって呼び出されるのは、発動者自身に蓄えられている記憶を、具現化させたものだからだ。



『命とは一つである。過去の自分とは、現在の自分よりも未熟であるがゆえ、呼び起こす意味は無いに等しい』



 無限を支配すると云われた偉大なる『蟲』が発したとされる、世界の真理。

 しかし、この言葉は、最高位竜には当て嵌らない。


 最高位竜は、『不可思議竜』が持つ、『生命の秘宝』を下賜され、扱う事が出来る。

 すなわち、死する瞬間、蓄えていた力と肉体を代償に、新しい命として転生する事が出来るのだ。


 そして、最高位竜の一匹であるホロビノにとって、過去の記憶とは、己を纏う鎧であり、武器。


 今ここに顕現しようとしているのは、ホロビノがもっとも長く生きた時代の記憶。

 ホロビノは、膨大すぎる体を4つの魔法陣を通して、擬似的に再現しようとしているのだ。



「お?本気を出すのか?ホープ。これでちっとは面白くなるってもんだ」



 ソドムの呟きを置き去りに、青い閃光が周囲を支配した。

 ホロビノの背後の、4つの魔法陣が完成したのだ。


 上下左右、ひし形に配置された魔法陣。

 数奇な魔法陣を立体的に重ね合わせた幾何学魔法陣は、蠢き組み合わされ、やがて、解錠する。


 ガチャリと音をさせて展開された魔法陣。その内部に灯っていたのは、命の灯たる”青炎”だった。

 竜の魂とも呼べるその炎は、古き記憶を元に再燃し、やがて、意味のある形へ形成されてゆく。


 揺らめく炎から最初に生み出されたのは、偉大なるアギトが口開く、炎光の頭部。

 轟々と燃える火を顎から漏らす竜の頭部は、ひし形に設置された魔法陣の頂点から伸びて、獲物を睥睨している。


 さらに、ホロビノの左右には、強靭なる爪を生やした、炎光の腕が聳え立った。

 磨き抜かれた陶磁器のような爪同士の間では、魔法陣が連続して並び、放たれ続けている光が怪しい輝きを放つ。


 そして最下部からは、太く逞しい、炎光の尾が流れている。

 ホロビノ自身の姿を覆い隠すように何重にもめぐり張られ、鉄壁の防御と化した尾。

 その中でホロビノは、倒すべきタヌキを見定める。



「「ヴィギロアッ!ヴィギルッ!!」」



 顕現した恐ろしき竜を見て、タヌキ将軍達の意識は統一された。


『あの竜が動き出せば、我等は死ぬ。今ここで最強の技を繰り出し、勝負を決するしか、生きる道はない』


 目の前の事象の説明ができなくても、歴戦の経験をこなしてきたタヌキ将軍は、その竜が果てしない力を持っている事を瞬時に見抜いた。

 ソドムに従っているタヌキ将軍達は、各々が『武の才能』を認められここに居る。

 だからこそ、意思の統一が成された今、何の打ち合わせも無しに、連携を行う事が出来た。


 タヌキ将軍が狙ったのは、大規模戦略タヌキ魔法『文武駆茶釜ぶんぶくちゃがま』の発動。

 タヌキの集落が、抗えない外敵の襲来に直面した時、命を賭して発動するランク9の魔法だった。


 この魔法ならば、勝機はある。

 そうタヌキ将軍は判断し、動きを止めているホロビノへ向かって、一糸乱れず向かった。



「ヴィギロア!」



 まず始めに、50匹のタヌキ将軍が宙を駆け始めた。

 魔法によって足場を構築し、後続が続く道を作るためだ。


 そこへ、第二陣となるタヌキ将軍50匹が、出来た足場を踏み荒らしながら、土砂や石を撒き散らしてゆく。

 合計100匹のタヌキ将軍が入り乱れる異常な空間。

 爆ぜる空気は瞬く間にホロビノを覆いつくし、土石流で出来たドームとなる。


 それはまるで、黒褐色の茶釜。

 その内部に捕らわれた生物は、視覚と聴覚、嗅覚を奪われるのだ。


 見渡す限りの砂嵐。

 耳をつんざく炸裂音。

 鼻を突く砂の匂い。


 今ここに、『文武駆茶釜ぶんぶくちゃがま』は完成した。

 そして、残り100匹のタヌキ将軍は、最後の仕上げをするべく、次々にドームに突撃していった。


 蠢く200匹のタヌキの群れ。

 360度、隙間なく、絶え間なく、終わりなく続く、爪と牙の連撃。



 ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!ヴィギロアッ!



 この技を受けて、生き残った奴はいない。

 200匹のタヌキ将軍は、己の勝利を確信し、雄叫びをあげ始めた。


 しかし、その光景を見ていたタヌキ帝王ソドムは、リンゴチップスをガリガリと噛み砕きながら「ホープ相手にそれは、悪手なんだよなぁー」と呟いた。




「……《竜滅咆哮ドラゴ・カタスフィー》」



 白く打ち付けられる光の波動。

 一筋の光が黒褐色の茶釜の内部から漏れだした次の瞬間には、その光は数百を超えていた。

 360度、全方向へと差別に放たれたその光は、炎光の顎から放たれた『破滅の光』。


 この『破滅の光』は、周囲の元素に作用し、結合を揺るがせて、あらがえぬ崩壊を呼ぶ。


 ホロビノは、タヌキ同士の間にある空気に狙いを定めて、竜滅咆哮ドラゴ・カタスフィーを放っている。

 瞬く間に膨張した空気は、縦横無尽に駆け巡るタヌキ将軍を全てを吹き飛ばし、形成されていた『文武駆茶釜ぶんぶくちゃがま』は木端微塵に消し飛んだ。


 たったの一撃で、タヌキ将軍達がそれぞれ纏っていた防御魔法は砕け散り、余った余波が、周囲を蹂躙してゆく。

 地面や樹木に叩きつけられた200匹のタヌキ将軍は、半数が気絶し、半数が手痛い傷を負って戦闘不能となった。



「ヴィギルア……」



 そんな壮絶な光景を、アルカディアは絶句しながら見ていた。

 その驚きのあまり、走り書きで「白いの、やばい!」と日記帳に書いたほどだ。


 うわぁ……ソドム様と同じ位、やばい!

 思考を停止しかけているアルカディアは、それでも、冷静さを失わずに、どうやって生き残ろうかと、思考を巡らせる。


 日記帳を使って、作戦を練るアルカディア。

 そしてソドムは、静かにアルカディアの背後に移動し、前足を上げた。



「そんな事してねぇで、戦ってこい。おらっ!」

「ヴィギルアッ!?」



 ゲシッ!っと尻を蹴られ、ホロビノの前に出るアルカディア。

 なにすんのっ!?と思わず声を漏らしたアルカディアは、ソドムに対して殺意が湧きあがる。


 しかし、その殺意を向けるべき存在は、目の前の真っ白いドラゴンだと思いなおしたアルカディアは、「スパルタだなぁ……」と思いつつも、真正面にガントレットを構えて、臨戦態勢を取った。


 そして再び、連撃合戦が始まったのだ。



「ヴィギヴィギヴィギヴィギヴィギヴィギヴィギヴィギヴィギッ……ヴィギルアッ!!」

「キュアキュアキュアキュアキュアキュアキュアキュアキュアッ……キュグアラッ!!」



 ホロビノは、4つの魔法陣を後ろに下がらせると、自らが前に出てアルカディアの拳を拳で迎え撃った。


 今のホロビノの拳に乗るエネルギーは、先ほどまでとは比べ物にならないほど高い。

 背後の魔法陣を開放しているこの姿は、過去の肉体と同等のポテンシャルを得るからだ。


 あくまでも背後の竜は、小さい体では行えない大規模な攻撃の補助をするためのものでしかなく、2mにも満たない、か弱きタヌキ将軍をひねり潰すのに、咆哮も魔法も必要ないと、ホロビノは判断したのだ。



「はぁ、はぁ……ヴィギルア……」

「キュア」



 異種同士の、短いやり取り。

 全力の攻撃が通用せず、疲弊し始めたアルカディアと、余裕を残しつつ戦況を優位なものに傾けてゆくホロビノ。


 戦況は火を見るよりも明らか。

 ホロビノの力を知りつくしているソドムは、このままではアルカディアに勝ち目はないと判断し、言葉で介入を開始した。



「なぁ、ホープ。本気出せば、お前は相当に強いよな。でだ、空で戦っているお前の主人(三色団子)とお前、どっちが強いんだ?」

「キュア。キュアラー」


「まぁ、今のあいつらじゃ、そうなるよな。……んじゃもう一つ聞くぞ?さっきから空を覗き見てるお前の元下僕と、あいつらが戦ったら、どうなるんだろうな?」

「……きゅあら!?」



 ソドムの言葉を聞いて、ホロビノは視界を天空に向けた。

 一見して、そこに居るのは、リリンサとユニクルフィン、ワルトナとドラゴンジョーカーのみだ。


 しかし、ホロビノの目は誤魔化せない。

 空間に空いている小さな綻びから、漏れだす存在感。


 その波動に心当たりがあったホロビノは、主人の身に危険が迫っている事を把握し、この場を離脱しようとした。



「今だアルカ、やれ!」

「ヴィーギルア“ー!!」



 一瞬の油断を見逃すほど、タヌキ帝王は甘くない。

 アルカディアは持ち前の反射神経をフルに使い、海千山千に力を注ぐ。


 バッファを起動し、3歩半で間合いを詰めきったアルカディアは、ガントレットの機能を発動し音速で拳を打ち付ける。

 ちっ。っと舌打ちしながらも、ホロビノはその拳を受け流し、下げていた魔法陣を呼び戻した。


 再び、ホロビノは巨竜を纏い、アルカディアを睨みつける。

 主人の危機を察し、一刻も早く勝負を付ける為だ。



「おっと、このままじゃ、ワンサイドゲームになるな。そうだな……このくらいのバッファはあっても良いだろ。《極限なる覚醒者サウザンド・ハンドレッド》」

「ヴィ?ヴィッギルアアアアアアア!?!?」



 ピカ―。とアルカディアの毛皮が黄金に輝き始めた。

 それは、生物の限界を超えた証。

 神の定めた理を超越し、真なる強者への覚醒を行う禁断のバッファ。


 アルカディアは、『タヌキ将軍』を卒業し、『タヌキ帝王見習い』となった。



「……《己を支配する獣(ヴィ・ビースト)》」



 ソドムの強すぎるバッファのせいで、正気を失っているアルカディアは、目の前のドラゴンの事が怖いと思わなくなった。

 怖く無ければ、なんて事は無い。


 殴って勝てばいいのだ!とアルカディアは真っ直ぐに行動に移す。



「ヴィギルッッッアッツ!」



 ドゴッ!っと鈍い音が鳴る。

 アルカディアの放った拳が、防御の構えを取った尾を殴りつけた音だった。


 確かは手ごたえと、ホロビノに防御をさせたという高揚感に酔いしれたアルカディアは、調子にのって連撃を繰り出した。



「ヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッヴィギルッアァ!!」



 ……小賢しい!!


 ホロビノは、心底そう思っている。

 事態は一刻を争う。


 自分の弟子の中でも、短気な性格の冥王竜がリリンサ達を見ている。

 リリンサ達と戦っているピエロドラゴンとは直接的な面識が無かったがゆえに介入はしなかったが、冥王竜が出てくるとなれば話は別。


 すぐにでもあの場に戻り、事態の終息を計らなければいけないと、ホロビノは焦り始めた。

 しかし、それをやすやすと許すソドムでは無い。


 ソドムは、食べ終わったリンゴチップスの袋を投げ捨てると、おもむろに立ち上がりにこやかに笑った。



「アルカ、コイツを足止めしろ。30分足止め出来たら、その毛を元に戻して貰えるように、ナユタ様に書状を書いてやる」

「ヴィ!?ヴィギルア!?」



 え!?ホントにっ!?

 アルカディアは目を輝かせ、ソドムに視線を送った。

 そしてソドムは、親指を立てて、良い笑顔を返す。


 なんとしてでも、このドラゴンを食い止めて、サラサラヘアーを取り戻す!


 アルカディアは、自分のタヌキ生の中で一番、気合いを入れた。

 そして、その意気込みに味方するように、空から、大岩が降り注ぎ始めた。



「ヴィギルア?」

「きゅあら!?」



 突如降り始めた大質量の岩は、当然、接触するだけで致命傷となる。

 そんな特級の危険物を見て、アルカディアと真っ白いドラゴンは別の感情を抱いた。


 真っ白いドラゴンは、「面倒」だと思った。

 そして、アルカディアは……「勝機」だと思った。



「ヴィッ!ギルアー!」



 アルカディアは跳躍し、飛来していた大岩に拳を打ち付ける。

 そして、海千山千の第二の機能を解放させたのだ。


 ガントレット『海千山千』第二形態・『森羅流転しんらるてん』。


 触れた非生命体を吸収、ガントレット内の魔法次元に隔離し、内部で分解。

 ガントレットを高めるエネルギーとして使用する。


 この第二形態を使用するためには、高エネルギーを含む無機物を取り込む必要があった。

 この機能は、本来なら、質の高い魔道具などを取り込みエネルギーとする為のものであり、自然界にはそんな物体は都合よく存在しない。


 しかし、空から降ってきた大岩は、ドラジョーカーの魔力を受けて変質し、高エネルギーを宿していた。

 アルカディアは直感を信じ、見事に成功。

 大岩を吸収したガントレットは、姿を変え、鋭い爪を生み出した。


 どこからどう見ても、『デーモン』になったアルカディアと、背後に強大な竜を従えているホロビノ。

 最終決戦が始まろうとしている。



「ヴィ……《タヌキ裂爪(タヌキリッパ―)》」




 直接的な殴打しかなかったアルカディアの攻撃手段に、新たな戦略が加わった。

 鋭い爪での爪撃。


 爪の表面に絶え間なくエネルギーを循環させ、触れた瞬間、絡め斬る。

 高速回転するノコギリのようになった爪を振りまわし、アルカディアはホロビノに襲いかかった。


 勝てなくても、いい。

 30分耐えたら、すぐに逃げよう。


 アルカディアは意識を集中し、必死になって時間稼ぎを行う。



「きゅ、キュアラ!」



 そして、運ですら、アルカディアの味方だった。

 今まで傍観していた冥王竜が、リリンサの前に姿を現してしまったのだ。


 事態は刻一刻と悪化し、ホロビノを焦らせた。

 当然、岩の上でくつろいでいるソドムからは、注意を削ぐ為の野次が投げつけられている。


 実質、1対3の戦いを強いられることになったホロビノは、チラリと空に視線を向けて、「冥王竜。絶対、ボコる」と心に決めた。




 **********



 そして、30分の時が過ぎようとしていた。

 目標の時間まで残り、3分。


 アルカディアは条件の達成を感じ始めつつ、油断なく堅実な戦いをしていた。

 防御、防御、攻撃。


 自分の得意とする戦術を忠実に守り、確実に時間を浪費させてゆく。

 だが、ここで事態に異変が起こった。


 冥王竜から発せられていた覇気が突如、膨れ上がったのだ。

 冥王竜を良く知るホロビノは、取り返しのつかない事態が起こる事を予知し、本気を見せた。

 4つあるうちの魔法陣の3つを壊し、全ての力を”顎”に注ぐ。


 そして、危険を予知したアルカディアも腕を突き出し、意識をガントレットに集中させた。

 火薬のような空気の焦げる匂い。


 ガントレットから放出された熱によって周囲の酸素が発火。

 尾を引く炎の道筋を残しながら、アルカディアはホロビノを穿つ。



「《慟哭する獣の怒り(レイジ・オブ・タヌキ)!》」



 それと同時に、ホロビノが迎撃の咆哮を放った。



「《天王の環(ウラヌス・インパクト)!》」



 二つの炎の塊はお互いに相殺し合い、融合。

 行き場を失ったエネルギーが周囲を蹂躙し、周囲の木々の幹をすべてなぎ倒した。



「……あーあ。あと30秒って所なのに。残念だったな。ん?アルカ?」



 爆風が過ぎ去ったその場には、タヌキ帝王ソドムだけが残されていた。


 ホロビノはリリンサと冥王竜の間に割って入るべく、急いで離脱。

 その時にアルカディアと衝突しそうになり、面倒なので抱えて飛んだが故の結果だった。


 そして、天空に拉致され困ったアルカディアは、手頃な"盾"を発見し、その盾の背中にひっそり張り付いた。



息抜きの為に書いたのに、時間ギリギリ……。

さすがタヌキ、手強い。


次回から第七章ですよ~。


それと、リリンとワルトナの前日譚『悪辣聖女見習いと行く、リリンサの冒険』も連載しています。

リンクは下に張ってありますので、気になった方は是非どうぞ!

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