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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第13章幕間 「リリンサの手記⑦」

 一目見て、分かった。

 ワルトナは諦めようとしている。


 少しだけ下げた困り眉で薄く笑い、饒舌に言葉を並べて炊きつける。

 好みのケーキが私と被った時、行きたい旅先が違った時、敵だったテトラフィーアを仲間に誘った時。

 ワルトナは本音を隠す時、強く否定も肯定もしない。

 曖昧な笑顔で事態に身を任せ、そして、好ましくない結果になっても文句も言わない。

 静かに叶えたい願いを諦め、そして、他の誰かに譲る。



「ワルトナ、決着を付けよう。あなたの思い通りにはさせない」



 だから、私は負けない。

 貴女が譲るというのなら、徹底的に譲って貰う。

 絶対に私の思い通りの未来を手に入れて、そんな顔を二度とさせない為に。



 魔神の脊椎尾に魔神の大焦熱(デモン・シクス)を装填し、ワルトナに向かってブチ放つ。

 この攻撃は囮。

 ワルトナが仕掛けている罠をあぶり出す為に、適当に放ったブラフでしかない。


 ワルトナが持っている神栄虚空・シェキナについては、お父さんから聞いている。

『ある意味で、シェキナは神殺しの中で最速です。戦闘が始まる前にどれだけの準備をしたか=戦闘力という、武器というよりも戦略兵器と呼ぶ方が相応しいものですからね』

 こんな言葉があったように、シェキナは事前準備の時点で決着を付けるワルトナと相性が良い神殺し。


 既に先手を取られた状態からのスタート。

 どうにかして主導権を奪いたい……、そう思いつつ、ワルトナの本体を探し出す。



「本物のワルトナは、東のあなた」

「おや?バレるもんだねぇ。今使ってる分身はシェキナの能力で作った渾身の力作だって言うのに」



 ワルトナの基本戦術、三位一体(トリニティ)

 三つ仕掛けの杖ステックトリックトリニティという魔導杖を元に開発した、多対一を効果的に行う戦術。

 ワルトナと私の偽物を作り前線で戦わせることで、安全に敵を消耗させるというもの。

 レジェ達には詳しく見せない様にしていたみたいだけど、一緒に開発した私は熟知している。

 たとえ神殺しを用いて作られた偽物だとしても、配置の癖や細微な違和感までは隠せない。


 雷光槍を雑に降らせ、目くらましと牽制を兼ねる。

 その隙に、ゴモラとソドムにちょっとしたお願い。

 光速以上を発揮できるワルトナに対応するには、私も光速を出すしかない。


 ボディフェチでした実験を思い浮かべて伝え、原初に統べし雷人王をバッファ魔法として使えるように魔神シリーズにインストールして貰う。

 ソドムも理解しているようで、その強化は難なく終わった。

 力を込めた足が大地にめり込みそうなほど、エネルギー伝達が桁違いに強化。

 スピードやパワーはもちろん、魔神シリーズと接続している感覚器官の伝達が速くなり、まるで光の中を走っているような気分になる。



「これが三本勝負だというのなら、私も回避する気はない」

「へぇ、えらく物分かりが良いじゃないか」


「その代わりルールの追加を要求する。⓵ 勝負は二人のみで行うこと。戦闘に他者を巻き込むことは許さない」

「妥当だ。優しいキミじゃ人質を取った僕には絶対に勝てないからね」


「② 戦いが終わったら、全部、話すこと。勝っても負けても」

「誰に。という指定が無いのは意図的かい?」



 ワルトナを発見し、戦いの是非を問う。

 ユニクを手に入れる為の3本勝負、それを持ち出して逃げ道を塞いだ。


 言葉を交わしたことで、疑いが確信に変わった。

 万が一の可能性として、ワルトナが金鳳花に操られているパターンや、無色の悪意のコントロールに失敗して暴走しているパターン。

 ワルトナの表情と受け答えを観察し、これらの最悪のケースを想定から削除。

『ワルトナの意思の行動』であると結論付ける。


 そして、戦闘終了後にも逃げられない様に言質も取った。

 後は戦って勝つだけ。

 そう思う私の余裕を塗りつぶすように、ワルトナの攻撃が始まった。



「あるんだよ、リリン。この世には、どうしようもないことってのが」



 私の興味を引く語り口。

 真剣な時も冗談の時にも使うそれ、だからこそ真っすぐ受け止めるしかない。

 今回の勝利条件、それは、『ワルトナ』を完全に理解することだから。



「ワルトナ。キミに何度も呼ばれた僕の呼称。でもね、それは僕の……、本当の名前じゃないんだ」


「……ワールドトナー。これが僕の本当の名前さ」



 まさか、『ワルトナ』が愛称だなんて想像すらしていなかった。

 友達の名前すら知らない、それは、ショックというには大きすぎて。



「あなたの母親はクロアのはず。ノウィンもそうだって言っていた」

「名付ける間もなく攫われた、いや、攫ったんだろ。だから、ワールドトナーって名前を考えたのはクロアじゃないよ」


「まさか……」

「トナーとは粒子状の顔料、まぁ、インクみたいなものだけど、転写装置そのものを指す時があってね」


「……だめ。それは言っちゃだめ……!!」

「人の心を、無色の悪意を、染め上げる者。物語を世界に広げる印刷機。それこそが金鳳花が名付けた、僕の名前さ」



 金鳳花。

 私やセフィナ、お父さん、お母さん、ユニク。そしてあの子

 そして、そんな私達の敵がワルトナの人生までも歪めていた。


 それを聞いて怒りが沸き上がって来た。

 ワルトナに対してではない。

 朧気だった金鳳花に向ける感情が露になり――、ますます、負ける訳にはいかないと思った。

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