第13章幕間 「リリンサの手記③」
ラボラトリー・ムーから帰って来た私はユニクたちと合流するべく温泉郷に向かうも、何故か入れなくなっていた。
慌てて連絡を取ると、白銀比様が往来禁止結界を張ったと判明。
ワルトナに言われた『結界の冒険者を蹴散らせ』を実行すると、なぜか忌むべきロリコン共が出てきた。
怪しい眼鏡が光っているエアリフェード。
隆起した筋肉が光っているアストロズ。
かっこいい刀が光っているシーライン。
いつ見ても暑苦しい。
目に毒なので一刻も早く排除したい。
「おや?リリンサではありませんか。しばらく見ない内に美しい妙齢の女性になりましたね。残念です」
……先制口撃された。
セフィナの前で煽って来るとか、絶対に許さない。
復讐を心に決めつつ、こんな所にいる理由を問いただす。
「蛇峰戦役についての会合があるとミオに呼び出されまして。ふむ……、その様子だとリリンサは別の目的で来たようですね?」
本当にミオに呼ばれたのなら、ブルファム戦争の前ということになる。
ミオは鏡銀騎士団の実権を私に預けたことで、アマタノ討伐から手を引いた。
じゃあ、ロリコン共がここに来たのは偶然?
それとも、嘘の供述?
タダでさえ怪しい変態共が真っ黒に見える。
セフィナに近づかないように……、用意していた切り札を使って牽制を試みた。
「まさか……、次代のクマの皇は、ロリ……、なのですか……?」
「ちなみに、この子」
「FOOOOOOOOO!!」
1枚1億エドロで売りつけようと思っていたサチナ達のアイドルブロマイド(19枚)を使い、真の目的を探る。
狂喜乱舞するロリコン共、すごくうるさい。
結果的に、暗躍しているのはエアリフェードのみで、アストロズとシーラインは白だと判明した。
エアリフェードはお母さんの部下で、一緒の学校にも通っていた後輩でもあるらしい。
不安定機構・超常安定化という、ワルトナやお母さんと一緒のグループに属する英雄。
実力を隠しているとは思っていたけど……、こんな変態が英雄とか信じられない。
辞めて欲しい。
しょうがないので、誠に不本意ながらセフィナを紹介していると……、ベアトリクスの雄叫びが聞こえた。
緊急事態だと判断し、ロリコン共と一時休戦。
一気に森を駆け抜けるとそこに居たのは、ベアトリクスと2体の皇種だった。
『皇鹿蹄死・エイワズニール』
『幻世皇兎・アルミラユエト』
エイワズニールは全身を骨で覆っている、見るからに硬そうな鹿の化物。
やっかいなことに、エイワズニーㇽの本体は環境に擬態していて通常の視覚では認識できない。
悪食=イーターのサポートが無ければ、戦いのステージにすら上がれなかったと思う。
だけど、ソドムと契約したことで魔王シリーズの真の性能を理解した私にはちょうど良い相手。
『皇種』
遥か上にいる存在でしかなかった相手を真っすぐに見つめる。
油断をする余裕も、増長できるほどの慢心もない。
全身全霊を掛けた戦い、一手間違えばそこで終わりになる、そんな緊張と共に魔王の脊椎尾を振るった。
いくつかの攻防の果てに放った『魔帝の焦熱獄・天滅す勝利の剣』で一刀両断。
事切れる瞬間まで闘志を燃やしていたエイワズニールには、確かな皇の威厳が備わっていた。
「木星竜はダルダロシア大冥林そのもの。つーか、奴の背中の上が森なんだわ」
「えっ……」
ベアトリクスも勝利し、アルミラユエトを捕虜に。
高麗人参酒を使って尋問した結果、無色の悪意の発生源が判明。
ダルダロシア大冥林――、いや、それに擬態している輪廻を抱く木星竜が全ての元凶。
セフィロトトアルテの空に根付いた天命根樹……、それも木星竜の偽りの姿だった。
私には、『あの子』に関する記憶がない。
だけど、あの子とお父さんが天命根樹によって傷を負ったこと、毒によって命を脅かされたこと。
ユルドルードやユニクが解毒薬を求めて旅をしたこと、その途中でワルトナと出会ったこと。
結果的に、あの子とお父さんは命を落としたこと。
お母さんやセフィナにも寂しい思いをさせたこと。
そんな家族の仇が生きている。
それを知って愕然としたし、同時に怒りや悲しみが溢れた。
指摘されるまで魔王シリーズの恐怖波動が漏れていることに気が付かない程の激情、もしもセフィナ達が居なかったら無謀な突撃をしていたかもしれない。
「私とセフィナ、ベアトリクスはユニクやワルトナと合流する。敵がダルダロシア大冥林そのものという情報は、絶対に共有するべき」
この事実は私一人で抱えるには大きすぎる。
ユニクたちと情報共有するために温泉郷に戻ることを選択し、ロリコン共と別れた。
関所で見たユニクの顔は、とても疲れていた。
肉体的ではない、精神的な焦燥。
仲間の誰かが人狼狐だと確定したのだと、すぐに分かった。
でも、ユニクは具体的な話を教えてくれなかった。
ワルトナに口止めされていると判断した私は、それ以上の追及をやめた。
友達が敵だと知ってしまえば、パフォーマンスに支障が出る。
心理的な足枷なんて、ユニクに頼って貰えなかった悲しさと口惜しさだけで十分だ。
『ソドムとゴモラに協力を依頼し、帝王枢機でダルダロシア大冥林を撃滅しろ』
ゴモラに協力を要請した結果、アップルルーンを使って運んでくれることになった。
移動+セフィナの身の安全が確保できただけでも上等。
無色の悪意には関わらないと決めているゴモラにとって、これは最大の譲歩。
そして私たちは、再び仰ぎ見る存在に出会う。
その名は、『金不朽麒・チィーランピン』。




