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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第208話「愛情の戦略破綻⑦」

「アンジュ、次の国の特産は?」

「ノウリ国の主食は麦、おおよそ食卓の八割をパンが占めている。そこから連想される食品流通を推測せよ」


「んー、8割がパンなら……、食卓に並ぶのはパン+スープ、もしくは飲み物。栄養バランス的にパンの上に具材を乗せて焼くピザが主流かな。逆に、惣菜パンみたいなのは少ないかも?」

「なぜだ?」


「惣菜パンって具材単品でも成立するから、パン+おかず+スープとなって、8割って条件に合わなくなる。焼く段階で生地に練り込まれているのは、調理前の食材……、どう?」

「80点だ。ノウリの国民食はフルーツが練り込まれた甘みの強いパンであり、塩味の強いピザは流行していない」


「……えー。トマトは果実だよ。僕的には!」



 2年の時を経て、基本五教科+世界経済を学び終えたワルトナは、金鳳花の秘書官として世界を飛び回っている。

 指導聖母・悪才アンジニアス、そして、国家経済連の会長であるゴルディニアスの顔も持つ彼女は多忙を極める。

 転移屋というビジネスを行っているのも、移動時間を限りなく削減するための仕込みだ。



「果樹と果菜と果実の混同は褒められた事ではない。ノウリ国滞在中の課題としよう。ちょうど、今から向かう先は大規模な豪農貴族だしな」

「ユニやユルドおじさんが立ち寄った果物屋さんかぁ。よし、昔話を聞き出さないと」



 ワルトナが首からぶら下げているブック型のペンダントアクセサリ。

 そこに収納されているものこそ、ワルトナの想い人への唯一の手掛かり、ユニクラブカードだ。


『ワルトナ、このユニクラブカードには、とある記憶が封印されている』

『とある記憶って?』


『ユニクルフィンは記憶喪失になっている。では、喪失した記憶とやらはどこに行ったのか?その答えがそれだ』

『……。無くした記憶が手に取れる形になっているって、どんな魔法?』


『くすくす、神の思し召し、もしくは狐に化かされたか。どちらにせよ、人知を超えた力だよ』


 金鳳花からユニクラブカードを手渡された時に聞いた由来には、大した情報がなかった。

 幼いワルトナであっても、記憶という不定形な情報が目に見える形で存在すること自体が異常の極みであると分かっているからだ。

 だからこそ、その理由に神や狐というよく分からないものを出されたとしても、『魔法とは違う超常の何か』という上辺だけの正解で満足してしまう。



「このお姉さんの名前は、ソウ……さんだっけ?」

「あぁ、彼女の名は ソウ・クワットスキー。ノウリ国・伯爵位を持つ豪商の娘だ」


「そして、ユニを狙う、僕のライバル……。今回も相手の得意分野で勝負だよね。クワットスキー伯爵はかなり強い柑橘系果実の利権を持っていたはず。んーじゃあ、僕が狙うのは……、瓶の生産拠点だね」



 突然出てきたユニクラブカードを見たリリンサに、衝撃が走る。

 ワルトナ、テトラフィーア、ミナチル、アカムに続く第5の女。

 美味しい野菜・果実の生産拠点であるノウリ国の豪農の娘ともなれば、リリンサ的に強敵認定されるべきステイタスなのだ。


 だが、リリンサが驚いたのはそこだけではない。

 今、ワルトナが見ているユニクラブカード、そこに記載されているのはユニクルフィンの情報ではない。

 カードの四隅を同時に押した後、3秒以内に表のユニクルフィンの顔写真を横にスワイプすることで、別の人間の情報に切り替わる。

 それをワルトナが目の前で実演したことにより、合計10名のユニクラブカードの所持者の情報が明らかになった。


 ブラック3名

 リリンサ 

 ワルトナ 

 ノウィン


 ゴールド4名

 セフィナ

 テトラフィーア

 ユルドルード

 プロジア


 レッド5名

 ミナチル

 アカム

 パレット

 カタルーナ

 ソウ


 その中で、レッドの5名はリリンサと関わりが薄い。

 特に、パレット、ソウの二人は全く知らず、カタルーナはそういう人物がいるという噂しか知らない。

 そして、唐突に判明したライバル、ソウ。

 その姿を目を付ける為、ワルトナの記憶に没頭していく。



 **********



「やぁ、クワットスキー卿、ごきげんよう」

「こ、これはこれは指導聖母・天才ゲニウス様っ!?ご機嫌麗しゅう……、などと軽々しく口に出してよいものでしょうか。御身みずからご降臨なされるなど、私には心当たりが……」



 金鳳花の前に傅く壮年の男性。

 気軽に農園を歩いてきた姿からは想像できない程に敬われる、この光景を何度見ただろう。

 始めて見たのは、もう2年近く前。

 秘書官として世界を旅する生活に足を踏み入れて2日目のことだったと、ワルトナは覚えている。



「叱責ではないさ。私の機嫌を損ねる程の不祥事を貴殿が起こしたのなら、国を使って連行させるからね」

「さ、左様でございますか……、では、本日は」


「子守りという名のビジネスだ。ノウィン様が保護しているワルトナという子なんだが、中々に聡い子でね、実地訓練をさせているという訳さ」



 なんだってっ!?という心の悲鳴を上げたのは2名。

 クワットスキー伯爵、そして、紹介されたワルトナだ。


 金鳳花が言外に含ませた意味、『実地訓練としてワルトナにこの領地を経済侵略させる、さぁ、防衛して見せろ』。

 それはまさしく宣戦布告。

 そして、奇襲作戦が使えなくなったワルトナは、セカンドプラン『詐欺』へと移行する。



「ほほう……、実地訓練ですか」

「くだもの、売ってるって聞きました。それで、すっごくあまいって!!」



 目をキラキラさせた、美少女の笑顔。

 素顔を隠していたフードを取って見せた可愛らしい顔に、クワットスキー伯爵の警戒が僅かに緩む。



「勿論だよ。おじさんの果物は世界一だからね」

「隣の国に持っていったら高く売れるって聞きました。それで、上手にできたらアンジュがご褒美をくれるんです!!」



 それでも訝しむクワットスキー伯爵の値踏みする目が捕らえたのは、11歳の少女の微笑ましい咆哮。

 自己紹介よりも早く目的を告げてしまう浅慮、そして、指導聖母・天才ゲニウスの実名を漏らすという特大の失態。

 更に、目の前の少女が掲げている内容は隣の国……ギョウフ国との貿易を成功させるという、無理難題だ。


『礼儀も常識もまるでない子供』

 内心で「甘い。本当に、脇がすっごく甘いねぇ」とほくそ笑むワルトナの演技を、クワットスキー伯爵は見抜けなかった。



「ははは、天才ゲニウス様も人が悪い。いくら優秀と言えど、このような少女に貿易は荷が重いでしょう」

「だろうか?」


「……!!いや、しかし」



 金鳳花の不敵な笑みを見たクワットスキー伯爵は、そこに含んでいる意味について考え始める。


 ①失敗する子供を制御して見せろ

 ②隠れている勝算に気づいて見せろ


 どちらにせよ、これが『試練』であると理解し、真剣な表情でワルトナに向き合う。

 風の噂で聞いた指導聖母・天才ゲニウスが与える『試練』、それをクリアした者は目が眩むほどの資産を築き、世界経済連の上層部に名を連ねるという話。

 それはノウリ国王家にすら強気で出られるという、垂涎の餌に他ならない。



「伯爵さま!!くだものを大量に運搬できて、さらに日持ちさせる方法ってありますか!?」

「シロップ漬けだろう。それ以外では少量ならまだしも、遠く離れた地には運び込めない」


「どうしてですか?」

「大量に積み込まれた果実は、自重で傷んでしまうからだ。馬車の振動で尻が痛くなることは無いか?」


「あります、すっごく!!」

「人は休憩すれば治るが、果実は悪くなる一方だ。運べる距離は精々72時間、3日の距離が限界だ。だが、シロップ漬けならば自重は瓶に掛かり果実も保護される。だがな」


「だがな?」

「わが国では砂糖の輸出を禁じている。ギョウフ国の塩の供給とのバランスを取る為にだ」



 ノウリ国とギョウフ国は、かつては一つの国だった。

 だが、王位継承問題で争った末に、山岳と沿岸で別の王を掲げて分裂。

 そういった歴史的背景から、二国間は非常に仲が悪いのだ。



「フランベルジュを経由するなら、最低でも1か月は掛かる。果実の痛みが速く、フランベルジュ国でも生産されていない柑橘類が高く売れるのはその為だ」

「へー、じゃあじゃあ、ジュース漬けならどうですか!?」


「ジュース、漬けだと……?」

「ミカン果汁にミカンを一杯浮かべて運ぶんです!!」



 腐るだろ。

 そうツッコミを入れようと思ったクワットスキー伯爵だが、ここで指導聖母・天才の言葉を思い出す。

『中々に聡い子でね』

 恐らく、この子の計画を聞いた指導聖母・天才ゲニウスは何らかの勝機を見出している。

 何か、何かあるはずだ……、そうして思考を回したクワットスキー伯爵に、天啓が舞い降りる。



「……酒。そうだ、果実酒に漬け込んだなら、あるいは……?」



 ノウリ国にとって、ウィスキーの貿易は一般的に行われていることだ。

 果実酒の取引もそれなりにある。

 だが、果実の酒漬けは聞いたことがない。なら、あるいは……。


 誰もが思いつくアイデアだ。

 それこそ、こんな子供が考える事だ、試した先人がいない筈がない。

 何らかの事情で失敗しているだろう、だが、伯爵家として力を持っている私なら。

 そうか!これが指導聖母・天才ゲニウス様が見出した勝機!!

 誰もが思いつき、そして、実現できなかった利権の開発、これが、王家を超えるパワーを得るという事か!!



「ワルトナと言ったかね?君の発案は大変面白い。試してみる価値がある」

「それじゃあ!!」


「あぁ、やろう。そして、年が近い我が娘にも意見を出させよう。メイドよ、ソウを呼んでくるのだ」



 クワットスキー伯爵が娘を呼んだのは、今後の家督を考えてのこと。

 子宝に恵まれなかったクワットスキー伯爵の実子はソウだけであり、必ず婿を取る必要がある。

 有力な家から婿を取る為にソウに高い実績を積ませようと思ったのだ。


 そうして、クワットスキー伯爵は大規模な酒造に手を出した。

 ワルトナと打ち解けたソウと一緒に果実の研究を行い、最適果実品種を選別。

 クワットスキー伯爵は果実そのものの取引量を限界まで削減して果実酒を作れと命令を出し、着実に成果を出していく。


 そして3か月後。

 作った酒を入れる瓶が手に入らず、無駄に腐らせていくという地獄のような問題に直面し、ワルトナに全面降伏した。


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