表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1303/1346

第206話「愛情の戦略破綻⑤」

 

「んっ……」



 ワルトナの横に出現したクリスタルの閃光を、リリンサは無抵抗で眺め待つ。

 色取り取りな光景が移り変わっていく光景は、彼女の人生を映した走馬灯。

 それ自体は殺傷能力を持たないと判断したリリンサが抱いているのは、高い興味と少しの恐怖。



「そうだね、では私もワルトナと呼ぼう。その代わり、私のことはアンジェと呼ぶんだ。いいね?」

「……アンジニアスだから、アンジュ?」



 最後の走馬灯が消えた瞬間、眩い閃光が世界を包み込んだ。

 やがてリリンサの目に飛び込んできたのは、何の変哲もない普通の書斎の中にいる白い髪の幼女と黒い髪の麗人。

 互いに名を呼ぶ紹介から見せるなんてワルトナらしい。

 そんな感想を抱きつつ、目の前にあった本に手を伸ばす。



「触れる……?」



 返って来たのは、確かな本の重さと手触り。

 シェキナで作った本物の本でありながら、その表紙は開かない。

 ここに存在している物質はワルトナの記憶にあるものだけだからだ。



「むぅ、どうやら私は無視されるらしい」



 平均的な微笑みでワルトナに近づき、柔らかそうな頬をつつく。

 そして、完全無反応で会話を続ける光景を見て、リリンサの頬が膨らんだ。



「アンジュという名は有り触れているからね、プライベートで使うのに都合がいいんだ」

「そうなんだ。アンジュ、アンジュ……、おぼえた」


「ふむ、利発でよろしい。さて」



 二人の会話を聞きつつ、リリンサは部屋を物色。

 窓から見える光景から、ここは不安定機構の深部の一室と判断。

 内装が異なるものの、柱の位置や家具などから、現在のワルトナが使っている個人ルームだと当たりを付ける。



「ワルトナ、これから暫くは君の教育を行う」

「おべんきょう……。教えてくれるの?」


「私は生粋のビジネスマンだからね、契約は守るとも」

「びじ、ねす……?」


「教育費として、ノウィン様が持つ現時点での総資産の4分1を代金として受け取っている」



 大聖母が持つ個人資産の4分の1。

 もしも、この話を聞いているのがレジェリクエだった場合、反射的に鳴いてしまう(ぐるぐるげっげーする)程の途方もない金額だ。

 大聖母ノウィンは表立って行動を起こしておらず、各国の上層部からは『お飾りの役人』と思われている場合も多い。

 だが、大陸を牛耳る指導聖母の管理権限を持つ――、それはつまり、世界の政治経済は大聖母の意図で動く事を意味する。



「これだけあれば教材にする国をいくつか買い上げられるが……、まずは、基礎五教科からだ」

「さんすう、すき。……こくご、きらい」


「では、語学からにしよう。教材はこれだ」



 テーブルの上に召喚された絵本の山、それらはリリンサも持っていた児童文学の金字塔。

 まずは文字を読んで、意味を正しく理解することから。

 そう言いながら本を開くアンジニアス――、金鳳花は優しい笑みを浮かべている。



「ん……。ちゃんを教えている。意外と子供好き?」



 金鳳花が振りまいた悪意と絶望を聞いてきたリリンサは、想像していなかった一面に驚いた。

 人を騙すのを商売にしている以上、善意の取り扱いに長けているのは当然。

 そう理解はしていても、ワルトナの真剣な顔とテストに合格した時の嬉しそうな笑顔に、リリンサの表情も柔らかいものとなる。



「……アンジュ、質問していい?」



 光景が移り変わり、内装も変化。

 至る所にワルトナの私物が増え、リリンサに時間の経過を伝える。



「……なんで4分の1だったの?」



 答案用紙に『4分の1』と記入したワルトナは、横に居る金鳳花に上目遣いを送った。

 一度しか教えていない計算式も完璧、なるほど、根本的に自頭が良い子だ。

 そう評しているからこそ、ワルトナの質問がテストについてではないと察している。



「教育費の件だな?」

「そう。ユニやユルドおじさんに会う為に勉強に励むのですよ。ノウィン様はそう言っていた。でも、なんで4分の1だったのかなって」



 飲み込みが早いワルトナは、2週間程度の基礎学習で語学が急上昇し、自発的に本を読むまで成長。

 休憩時間――、金鳳花の留守中の暇つぶしを兼ねて読んでいるのは、世間一般の様子が描かれた大衆雑誌。

 そこで得た知識から、総資産の4分の1を教育費にするのは不適切だと思ったのだ。



「たまたま偶然、アンジュが提示した教育費が総資産の4分の1だった……、は違うよね?」

「無論、教育費としてはあり得ない金額が支払われている。それは何故だと思う?」


「分からない」

「ノウィン様の子供が4人だからだ」



 文脈から、自分が子供扱いされていることは分かった。

 だが、この時点では大聖母の養子になる価値までは理解できていない。



「4人、僕と……?」

「ワルトナ、リリンサ、セフィナ……、そして」



 ゆっくり、何かを確かめるように。

 一人ずつ名前を並べた金鳳花は、最後の一人の名を呼ぶまでに僅かな時間を要した。



「……ユニクルフィン」

「っ!?ユニも!?!?」


「自らの子と婚姻した者は義理の子として扱われる。そんな理由から、ユニクルフィンは将来、ノウィン様の息子となるだろう」

「僕と、けっこんする、から……!!」



 む”ぅ”。

 思わず呻いたリリンサ、だが、金鳳花の言葉の含みに気が付いた。

 ノウィンの子供と結婚した場合、ユニクルフィンは義理の息子になる。

 そのノウィンの子にはリリンサが含まれている――、ただし、現時点でのワルトナにとっては『誰それ?』状態。

 どう考えても詐欺にしか見えない誘導、だが、あからさまにやる気を出したワルトナを見てしまっては、平均的な苦笑いしかできない。



「素晴らしい、虚無魔法の適性が一番高いとは流石の結果だ」

「虚無魔法?それがあるとユニに早く会える?」



 ワルトナの白い頭髪を撫でながら、金鳳花が満足げな言葉を漏らす。

 それに釣られて見上げた先にあるのは、テストに使った黒板だ。


 そこに書き出された魔法の適性テスト結果、ワルトナは高い魔法適性を示している。

 全ての項目が上位冒険者の得意属性並、更に、扱いが難しい虚無魔法が一番高いという想定以上の好成績。

 白天竜の血を引いている者は適性が高くなりやすい、だが、それを差し引いても『当たり』だと、金鳳花は微笑んだ。



「褒美を兼ねて、プロセスを大幅にショートカットしよう」

「これ……!ユニの写真が載ってる!!」



 金鳳花がワルトナに手渡ししたのは、光沢のある黒いプレート。

 表に『ゆにクラブ』と書かれたそれは、ユニクルフィンがいる場所の光景が写される魔法のカードだ。



「これはノウィン様から預かったユニクラブカードと言ってね。この管理を君に……」

「アンジュ、この女の人、誰?」



 従順なワルトナは、金鳳花の言葉を最後まで聞いてから行動する。

 だからこそ、説明を遮ってまで写真に写り込んだ女を指さしている光景を面白いと感じ――、現在創作中の物語のジャンルを『恋愛』に設定した。



「彼女はローレライ、ユニクルフィンの世話や教育を行っている」

「アンジュと一緒?」


「あらゆる意味で同じではないな。彼女は経済活動に嫌悪感を抱いているし、なにより運動が得意だ」

「ユニと遊んでる。……いいなぁ」



 金鳳花の説明を片手間に聞きながらも、ワルトナの興味の大半はユニクラブカードに向かっている。

 注意深く聞いていればローレライの正体にも気が付ける、そんな重要な情報も、大好きな家族の笑顔の前には霞む些事でしかない。



「羨ましいか?」

「僕も一緒に遊びたい。アンジュ、教えて。どうすれば会えるの?ううん、会いに行っても良くなるの?」


「条件は2つだ。一つは私の教育課程を卒業し、経済的に自立する。具体的には教育費用の全額をノウィン様に返す、としよう」

「……。もう一つは?」


「私のささやかな願いを10回、叶えてくれたら。という訳で、最初の1回目だが……」



 私のビジネスの手伝いをしてくれるかい?

 そんな言葉と共に取り出された魔導師のローブ、それをワルトナが着ている所をリリンサは見たことがない。

 だが、そのローブ自体は、辛い過去の記憶に焼き付いたもので。



「じゃあ、私とワルトナの出会いは馬車の中ではなく……、お母さんとセフィナがいなくなった、あの日」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ