第21話「人狼狐・昼の配役②」
「じゃあ次は僕の番だ。もちろん無色の悪意の影響なんて受けちゃいないよ」
「ワルトナさんの言葉にも嘘はありませんわね。後は記憶の封印があるかどうかですわ」
テトラフィーアとサチナによるリリンの判定は無罪だった。
無色の悪意の影響を受けていないと分かって一安心。
このままワルトの無罪も確定するといいんだが……?
「毎日してる習慣や癖か。自分で言いだしといてちょっと恥ずかしいんだが、仕方がない。白状するよ」
「むぅ?そんなのあったっけ?」
「君の前じゃしてないよ。なにせ、僕の寝る前の習慣はユニクラブカードを眺めることだからさ!」
「むぅ!?!?」
……。
…………。
…………………ひっさしぶりに見たなぁ、それ。
ワルトがこれ見よがしに取り出したのは、ゆにクラブカード(黒)。
まぁ、持ってて当然というか、どう考えてもワルトがカード管理をしていた訳だが、リリン的にはショックだったらしい。
「むぅ、そういえばそうだった。むぅ、むぅ。というか、持ってるなら私が見せた時に驚かないで欲しい!!」
「いや、マジであれば度肝を抜かれたけどね。ユニクラブカード(にせ金)とか何それ!?!?って感じだし」
「むぅ?そうなんだ。ちなみに正体は分かったの?」
「那由他がユルドおじさんへの嫌がらせの為に作ったってさ。マジ害獣が過ぎる」
さらっと気になる情報が追加された。
というか、大切なカードだったって話だったよな?
そんなもん複製すんなよ、カミジャナイ?タヌキィ。
「そういえば、ゆにクラブカードについて話したっけ?」
「いや、聞いてないな」
「せっかくだから教えておくよ。このカードはあの子に関する記憶が封印されている記録媒体。アプリコット様が時の権能を用いて作ったものだよ」
「ちょっと待て。確かに、あの子の存在を時の権能で世界から切り離したって話は聞いていた。だが、今聞くと意味が違ってくるぞ」
「時の権能……、そうだね。無色の悪意を持つ金鳳花も同じ力を持ってる」
「だよな?アプリコットさんが使ったのはギンが与えたもんだろうが……、そもそも、あの子を蝕んだ『存在を蝕む毒』ってのはどういうことだ?」
あの子が受けた毒は、存在と記憶を破壊してしまう毒だった。
それを聞いたときは天命根樹の権能ってそんな能力なのかって感想だったが、今は、とてもじゃないが納得できない。
「……ご明察なんだろうねぇ。セフィロトアルテに降臨した天命根樹、その種子弾丸を受けたあの子は記憶と存在を失っていった。おそらく無関係じゃないんだよ。金鳳花の悪意はずっと昔から僕らの近くに潜んでいたんだ」
世界から切り離されたあの子の存在は、文字通りの意味で禁忌だ。
無理矢理に取り戻そうとすれば、再び、アプリコットさんとギンが作った時魔法が発動し、世界にどんな影響が出るか分からない。
親父から聞いていた説明をワルトの口から改めて聞き、そして、その裏側には金鳳花の影がちらついている事も理解した。
そんな知りたくなかった現実に、俺もリリンも息を飲むしかできない。
「僕がこのメンバーの中に人狼狐は居ないと思っている理由はそれさ」
「ん、だとすると、サチナだけじゃなく私も狙われている?」
「いや、物語はもっと壮大なのかも。全容はまだ分からないけど……、神が求めている劇的の演出。その為に敵と味方の陣営を分けていると思うんだ」
なるほど……、確かにサチナを殺すだけならば他にやりようがある。
だが、一方的な戦いほど見ていてつまらないものは無い。
思い出してみれば、村長の奉納際もヴィクトリアを取り戻せる可能性は残っていた。
もちろん、簡単な道じゃないのは分かっているが……。
「人狼って見て楽しむゲームでもあるからね。僕らが何処まで正しい推理ができるのか、それを唯一神は見て笑っているのさ」
「うわぁ、ホント性格悪いな。神」
「と、こんな所でどうかなサチナ?僕の記憶の中に封印はあったかい?」
これだけ金鳳花の話題を話している以上、封印されている記憶があるならば上がってきているはず。
そして、サチナはワルトの顔をしっかりと確認し、その反応は『無罪』。
「牧師さまの記憶にもあやしい封印はないのです。ただ……」
「ただ?」
「さっきの話題で気が付いたです。主さまも、帝主さまも、牧師さまにも、古い記憶を切り取られた痕跡があるです」
その記憶がゆにクラブカードになってるってことか。
って、ちょっと待てよ?
その仕組みを使えば、記憶封印とは違う方法で欺けるんじゃないか?
「サチナ、それって悪用が出来そうか?例えば、ワルトのカードに細工して記憶を取り戻すみたいな」
「牧師さま、カード見せて貰っても良いです?」
「はいよ。あ、丁寧に扱ってね」
ワルトから受け取ったサチナは、全神経を集中させてカードを確認。
じっと静かに眺め、ふるふると可愛らしく頭を振った。
「これに知識の情報が封印されてる、です?」
「何か変なのか?」
「そんな感じしない、です。神の情報端末で作られているですが……、これは解くこと前提で作られていないと思うです」
解くこと前提で作られていない?
いや、それはおかしい。
封印が解けないのならば、あの子を取り戻せなくなる。
「そんなはずはないんだがねぇ?だが、ある意味で納得ではある」
「どういうことだ?」
「解くことを前提に作られていない。なら、金鳳花にも手出しができない様に白銀比様がそういう風にしたのかも」
「そうか。ギンは天命根樹に金鳳花の関与を疑ったのか」
それからサチナ達と議論をした結論は、『外部に切り離した記憶は簡単には戻せない』。
体の中に記憶が封印されている状態とは違い、失った記憶があった場所は別の記憶で埋まっていく。
そこに記憶を戻そうとしても、ほとんどが上手く繋がらないそうだ。
だからこそ、金鳳花は全く新しい記憶を植え付けるのではなく、それぞれが持っている記憶を利用して認識を書き換えている。
サーティーズさんの洗脳にセブンジードが抗えたのも、ありもしない記憶を植え付けたからだそうだ。
「なら、無色の悪意の影響にあるかどうかは、①言論に嘘があるか ②記憶の封印があるかどうか で判別できるって事で間違いないな?」
「そうなるはずだねぇ。サチナ、後で白銀比様に確認をしておいて貰えるかい?」
「分かったです!」
ワルトの言動と記憶も問題なし。
次はメルテッサの番だ。
「おっと、順番が来たようだ。だが、悪辣。先にぼくの容疑は晴れていないって言った理由を教えてくれるかい?」
「あぁ、それはね……、カミナ、レジェ、メナファス。この三人の中に、人狼狐がいるからさ」




