離れていく
少しずつ離れていく。
ずっと手の届く距離にいたのにね。
いつまでも、ずっと一緒にはいられない。
ずっと一緒にいて、困ったらすぐに支えてあげたいと思っていても、いつか、それはできなくなる。
でも、それでいい。
あなたが離れていくのが、さみしいと思う気持ちと一緒に、とても頼もしいとも思う。
生き物は、一人で狩りができるようになれば、親から離れて新しい家族を作る。
老いて狩りができなくなれば、あとは去るのみだ。
それが生き物として、自然なこと。
そうやって世界は循環していく。
あなたが親から離れていくということは、生き物としてあるがままの成長をしている証なんだと思う。
悲しいことでもなんでもない。
離れても繋がりは続くから。
あなたがこの世界で生き残れるように。
生き延びるための知恵と技術を、託せるだけ託す。
そうやって過去から託された繋がりで、私たちは生きて、そして循環している。
私が生き延びてきた方法をあなたに託す。
私にできることは、それくらい。
そんなことしかできない。
いつかあなたが一人前になったときに、ひとりの力でも生きていけるように。
いつかあなたに大切に思える誰かができたときに、支え合える強さを持てるように。
いつかあなたが親になったときに、大切な我が子を守れる親になれるように。
まだあなたが近くにいるうちに、少しでもたくさんのことを伝えられたらいいのに。
当たり前の毎日がずっと続くなんて、そんな幻想に惑わされて、また貴重な一日を無駄にしてしまう。
また今日も、何も託せず一日が終わる。
そんな何もない日も、振り返ってみれば、大切な日になることもあるのかな。
あとどれくらい、一緒にいられるんだろうね。




