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 人って、多い人でも手は2本までしか持ってない。


 背中も、大体の人はひとつしかないと思う。


 そもそも体自体、1人につき1体までだし。


 目だって多い人で2個。

 たぶんほとんどの人は前方にしかついてない。


 攻殻機動隊の世界だったら、能力次第で複数の自分を同時に操作できるかもしれないけど……やっぱり根本的に本体の脳みそのスペックが1人分しかないから、実際にできることってたかが知れてると思う。

 だから草薙素子は本当にすごいと思う。というか規格外なんだと思う。



 つまり何が言いたいかっていうと、

 自分が人生で選択できるものには限りがあるっていうこと。



 持てる荷物には限りがある。


 抱えるにしても、背負うにしても限界がある。


 あとは体力かな。


 どうしょうもなく重いものだったら、持ち上げられない。


 捨てて進むのか、捨てずにそこに留まるか。

 是が非でも持って進む術を見つけるのか。

 そういう選択をすることになる。



 選択。


 人生って選択の連続なんだよね。


 どっちかを選ばなくちゃいけない。



 ギターやベースを弾きながらボーカルする人もいるし、ドラム叩きながらボーカルする人もいるけど、弦を弾きながらドラム叩ける人はいない。


 スティービー・ワンダーもハーモニカを吹いてるときは歌えない。


(ごめん、前言撤回。そういえば昔、雅くんが足でパーカッション操りながらアコギとハーモニカしつつ歌ってたわ。器用過ぎ)


 映画を見ながら小説の執筆しつつ漫画を読んだりもできない。


 職場で仕事をしながら体調不良の家族の看病はできない。


 筋トレしながら睡眠時間の確保はできない。


 給料は高いけど休日がない。


 好きなことだけして生きてていいけど金がない。


 とかとか。




 欲しいものを全部手に入れるのってたぶん無理なんだと思う。


 あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しいは、若いときは言っててもギリセーフだと思うよ。


 夢や欲望は生きるためのエネルギーだと思うし、若さの象徴だと思う。


 だけど今の自分の年齢で、そんなことを本気で考えてる様を想像してみると……そんな自分は見苦しくて、浅ましくて、ちょっと嫌だなって思うんだ。だってカッコ悪いもん。



 なんていうかさ、弟が小さかったときに、合体ロボと変身ベルトが両方欲しいって駄々をこねて、道でひっくり返ってジタバタしてた光景を思い出すんだよね。


 子どもがやってるのを見るのはほほえましい。


 でももし、いい大人がやってるのを見たら……見てるこっちが恥ずかしいし、なんかいろんな意味で哀しくなってこない?



・・・



 なんとなくいつの頃からか、研ぎ澄ますという言葉が気になるようになったんだ。


 そんなふうに時を経過していきたい。


 使い込まれた刃物のような生き方がしたいなって思ってたりするんだ。


 刃物を研ぐと当然削られるわけだから、刃は薄く、刀身は縮んでいく。


 だけど切り続けるためには身を削るしかない。


 前にね、肉屋の肉切り包丁がとっても小さなサイズになるまで使い込まれているのを目にしたことがあるんだ。


 その時に感じた思いは、言葉にするのがすごく難しいんだけど……。

 でもたぶん私はその包丁の姿を見て、すごく感動したんだ。



・・・



 年末か正月にNHKで、日本のゲームクリエイターのドキュメントがあってさ、時間もあったし、久しぶりにゆっくりテレビを見てたんだ。


 メタルギアってゲームを作った小島監督の話が聞いてみたかったんだよね。


 ゲームなんてほとんどしないんだけど、メタルギアはシナリオが素晴らしいから小説を見つけて読んだんだ。


 伊藤計劃っていう小説家に出会えたのもメタルギアの小説だった。伊藤計劃は、いなくなってしまうのが本当に早すぎたと思う。

 世界って、どうして貴重な人ばかり奪い取ってしまうんだろうね。



 番組では他にもダークソウルというゲームも取り上げていた。

 私は全然知らなかったんだけど、死にゲーといえばダークソウルというくらい有名らしい。


 基本、敵が強くてすぐに死んじゃうゲームだから、大体どのプレイヤーも装備を強化して攻略していくらしい。


 だけど装備を強化すると防御力が上がる分、重くなってスピードが落ちるのだそうだ。


 だから脱ぐ。


 素っ裸で武器だけ装備する。


 そう、生まれたままの姿で。



 全裸で戦闘という戦略を選択するプレイヤーがいるのだそうだ。

 てか、全裸というカテゴリーが選択できることが驚きなんだけどさ……。


 もちろん一撃でも攻撃を食らったら即死だ。


 だがしかし速い。

 通常の重装備プレイヤーとの比較を見たけど、笑えるくらい身軽だし強い。


 その映像を見たとき、感動した。


 これだ! って思ったんだ。


 さすがにちょっと笑ったけど。

 だって全裸なんだよ、笑うじゃん。



 だけどさ、こういうのが理想なんだ。

 私も全裸戦士でありたい。



 みんなにハダカンボーと呼ばれ

 褒められもせず

 苦にもされず


 そういうものに

 私はなりたい。



 なんちゃって。




 極限まで余分なものを捨てても、最後は自分の芯だけが残ればいい。


 というより、何もかもを捨てたときに、自分の根源となる芯が残せる人間でありたい。



 そしていついかなるときでも必要時に躊躇なく全裸になれる人間でありたい。


 というか脱いだ方が強いとかのほうが断然面白いと思う。


 ドラゴン紫龍とかみたいに。


 基本脱ぐ、みたいな。


 こいつ脱ぐの好きだなー、みたいな。




 あれ? 今日は結局何の話をしてたんだっけ?


 脱いでも恥ずかしくないボディの話だったっけ?



 ん? あ、そうだね。


 ケンシロウも脱ぐよね。



 やっぱ強いやつって脱ぐんだね。


 やっぱ脱ぐしかないよね。

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