839.魚の養殖も
「もぐもぐー。やっぱり土も必要みたいもぐ」
「ふむふむ、土壌の匂いが影響するみたいですわ……」
「色んな条件を詰めないといけないもぐね~」
話がちょっと途切れたところでお邪魔する。
「おはよう、ふたりとも」
「にゃーん。お邪魔しますにゃーん」
「もっぐー、おはようございますもぐー」
「おはようございますですわ、エルト様」
生け簀の中のレインボーフィッシュは元気に泳ぎ回っているな。
「レインボーフィッシュの飼育はどうだ?」
「やはり不思議な魚ですわ。鱗についても未解明な部分も多いですし」
「鱗は環境に左右されやすいもぐ。生命力は強いから、飼育はできるけどもぐ」
「最適化はまだ遠いということか。いや、しかし充分成果は出ているぞ」
「ですにゃん! しっかりと目標は達成してますにゃん」
生け簀や水道設備は高価であまり増やせない。
同じスペースで鱗の数や質が向上するなら、お手柄だろう。
「ありがとうございますですわ。でもまだ、目標となる繁殖まではいきませんわね……」
「ううむ、そこなんだよな……」
現状、レインボーフィッシュの繁殖条件は不明だ。
そこが最大の謎だった。
「冬に卵を産むのは確かにゃん?」
「ええ、故郷ではそこまではわかっているんですけれど……」
「でもここで卵を産む気配は全くないにゃんね」
「そうなんだよな……」
飼育状態だと増えない可能性があるので、適度に湖へ戻さなければならない。
でないと湖の個体数に悪影響があるかもだしな。
「湖で釣れるのも一定サイズ以上、大人だけにゃん」
「私の故郷でもそうですわ。なぜか稚魚は全然、見当たりませんの」
「もぐ。生態の不思議もぐねー」
「やはりまだまだ調べなければいけない魚だな……」
ウナギみたいに大きく回遊する魚かもしれない。
完全に人工環境で増やせれば、ベストなんだがな。
まぁ、中長期の課題としてなんとかしたいところではある。
というところで、そろそろ本題に入ろう。
「ああ、それと昨日の夜にステラから話があったんだが――」
俺は豆腐とにがりについて簡単に説明した。
話を聞いて、ジェシカが目を見開いた。
「にがり……その言葉を、まさかここでお聞きするとはですわ」
お読みいただき、ありがとうございます。







