813.御する
「きゅきゅきゅいー!」
俺はアルミラージにしがみついている。
早い、早い、早い!
いつかのステラダッシュ以来じゃないか。
これがアルミラージの全速力か……!
「うぉぉぉ……!」
「ウゴー! はやいー!」
馬より断然速いぞ、これ!
短い跳躍をしながら、まさに風の様に進んでいく。
雨の降った地面も茂みも、難なく踏破している。
この速度は期待以上だが、問題はウッドのほうだ。
「大丈夫か、ウッド!?」
「ウゴ……まだ大丈夫!」
「きゅいー!」
俺はそこでやっと気が付く。
俺がアルミラージを制御しているのではない。
アルミラージが俺を乗せてくれているのだ。
明らかに俺の揺れを察知して、体をうまく合わせてくれている。
余計な動きさえせず、揺れに抵抗しなければそれでいい。
アルミラージが乗騎として優秀なのだ。
「ウゴ! 前に川あるよっ!」
俺達の前に、湖に繋がる小川が横たわる。
アルミラージの全身が一瞬、こわばり――。
「きゅーいー!」
「飛んだー!」
ぴょーんと一切の躊躇なく、アルミラージは小川をジャンプする。
「ウゴゴ……!」
うつ伏せのウッドはやばいんじゃ!?
俺は軽く振り向く。だが、あっちのアルミラージもうまく飛んだ。
ウッドもちゃんとついて来ている。
ガタガタと揺られながら、ウッドが声を上げる。
「ウゴ、瓶も問題なし! 凄い!」
「おおっ……さすがだな」
これがこの世界の軍用動物、アルミラージか。
湖のほうを見てみると、ステラが水の上を水柱に向かって走っていた。
……ナナを肩に担いでだけど。
これで俺とステラ、ナナとウッドで戦う形になるわけだ。
そしてコカトリスもステラの後から泳いでいる。
「これで戦力的には揃ったな……」
今、この場にいる全戦力が集結しつつある。
流れとしては悪くない。
そして、いよいよブルーヒドラの水柱から首が生まれてきた。
地下で戦ったやつよりも遥かに大きい。
「ウゴ、雨……強くなってる?」
ばしゃばしゃ……。
湖の反対側のほうが雨が降っている。
あっという間にずぶ濡れだ。
でもブルーヒドラも態勢は整ってなさそうだ。
「間に合うか……!」
ブルーヒドラの首がぐわんと動き始める。
まだ核の位置まで距離がある。もっと近づかないと……!
お読みいただき、ありがとうございました。







