793.図鑑のアルミラージ
その後、歓談を終らせて俺達は家へと戻った。
きらっとした夕陽が木々の間からまぶしく光る。村は平静なようだな。
家に着くと、ディアが今日の話をせがんでくる。それからは質問されっぱなしだった。
「ウサギさんって……どんな形ぴよ?」
「どれくらいの大きさぴよよ?」
「もふっとしてるぴよ?」
「にんじんが大好きなのぴよ?」
ひとつひとつ、丁寧に答える。
「ああ、にんじんはずっとぽりぽり食べていたな」
「ウゴ、でもおとなしい魔物でよかったね」
「そうだな、この辺りではあまり見かけない魔物だが……」
俺の手元には書斎から持ってきた魔物図鑑がある。
A四サイズくらいで挿絵もフルカラーだ。
前世の価値に換算すると、これ一冊で100万円くらいする。
「わふ、図鑑のどのあたりに載ってるんだぞ?」
「目次には……ふむ、最初のほうだな」
テーブルの上で見やすいよう、アルミラージのページを開く。
そこには大きな角付きウサギの絵が載っていたが――。
「ウゴ、こんな感じなんだ……」
「なんか、こわぴよね……」
「凶悪な顔つきなんだぞ……」
ディア達がドン引きしていた。
挿絵のアルミラージは特徴を良く捉えてはいる。
白い体毛、大きな角、人間とのサイズ比較……間違っていない。
でも挿絵の中のアルミラージは吊り目で、倒れた人間に飛び掛かろうとしていた。
毛も固そうで愛嬌は欠片もない。挿絵の中のアルミラージは恐ろしい魔物だった。
図鑑の絵を見たステラが苦言を呈する。
「……これは絵が正確ではないかと」
「主な生息地はここより東、か。もしかして想像で描いたからか……?」
前世では写真があるが、この世界にはない。
アルミラージを聞きかじりで描けばこうなる、のか?
まぁ、にんじん欲しさでカイをどついたりもしていたが……。
「アルミラージちゃんは人を襲うことはありませんからね……。畑のお野菜は食べちゃいますが」
それって害獣では?
俺はちょっと思ったが、口には出さなかった。
「ぴよ、本物はこうじゃないぴよ?」
「ええ、可愛らしい動物ちゃんです……!」
「ウゴ、見てみたいなー」
「滅多にない機会なんだぞ」
そうだな、教育のいい機会かもしれない。
動画や写真のないこの世界では、実物を見ることが教養を培う。
「アルミラージは毎日散歩させると言っていたからな。カイに頼んでみよう」
「ぴよ! 楽しみぴよー!」
ディアがぴょんと跳ねる。かわいい。
やはりディアは好奇心旺盛だな。親として尊重していきたいところだ。
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