756.マツノタケと活用法
料理はコース式で提供される。食べ切ってしまったコカトリスたちも安心だ。レイアはむしろそこを見越していた気もするが……。
運ばれてきたスープボウルをレイアが解説する。
「香味野菜のスープになります。マツノタケも少し入っていますよ」
鼻をくすぐる匂い、そしてタマネギ色のスープ。薄くスライスしたマツノタケの食感と上品な生姜とタマネギの味わい……。
濃厚なマツノタケステーキの合間にはぴったりだ。
「ぴよ! さっぱりぴよね!」
「わふふ。これは交互に頂くんだぞ」
ディアとマルコシアスもすぐに食べ方に気が付いたようだ。ウッドも堪能している。
「ウゴ、マツノタケって焼くのと煮るので結構変わるんだね」
「そうだな……食べ方でかなり変わるかもしれん」
それについてはステラも頷いてくれる。
「淡白なスープにはよく合いますね。ああ、染みます……」
「味付けは薄めだが、そのほうが活きるからな」
前世での松茸のお吸い物なら、醤油やみりんを使うところだろう。それらがないので、薄めのコンソメに合わせている。
「……あとは米があれば完璧でしたが」
「炊き込みご飯か……」
うぅ、それだけは残念だな。レイアが俺とステラを見て首を傾げる。
「炊き込みご飯……というのは?」
「米と一緒にマツノタケを調理するんだ。本場ではポピュラーだが……」
「こちらでは珍しい食べ方ですからね。仕方ありません」
「……少し余っていた気がするのですが」
「なんだって……!」
「そ、それを貰いたいのですが!」
俺とステラが身を乗り出すと、レイアが気前良く応じてくれる。
「元々エルト様とステラ様のお土産用ですから、お気になさらず」
「おおっ、やった……!」
「お家で作れますね!」
「にしても、そこまでマツノタケが好評とは……東洋の珍しいキノコ程度に思っていましたが」
「マツノタケは食卓の主菜や副菜もこなしますからね。やはり思い入れが違います」
「そうだな……。こほん、ナーガシュ家でも珍重されていた」
危ない危ない。前世がバレないようにしないとな。スープを飲んでいたナナが天井を見ながら考えている
「お米とマツノタケね……。パンにトマトを塗って焼くようなものか」
「いや……そう、なのか?」
「近いような……遠いような……」
「巷ではチーズも塗って焼くらしいけど」
「それはピザじゃないか」
「だからピザじゃないんだって。うちらはチーズを乗せないから」
なるほどな。パンにトマトだけ塗りたくって焼くからか。松茸の炊き込みご飯と……うーん、近いのかなぁ。
「まぁ、メインとの組み合わせでいえばそんな感じかもな」
わからん。異世界の食事情はいまだに謎ばかりだ。
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