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【4月コミカライズ発売!】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


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50/840

50.調べに行こう

 翌朝。

 俺、ウッド、ステラの並びで寝てみたわけだが……。

 思いの外、ちゃんと睡眠は取れた。

 やはりウッドの体で物理的に見えないのは大きいな。


 もぞもぞと起きて、ディアの入った籠を見る。


「すや……ぴよー……すや……ぴよー……」


 よく眠っているな。

 ちなみに目の錯覚でなければ……うん、ちょっと大きくなっている。


 元々、ひよこの成長速度は早いらしい。

 なんと一週間で体重が倍になるのだとか。


 ウッドは寝ている最中、少しも動かない。

 太陽光がそれなりに出てくると動き出すのだ。

 木なので、俺達の睡眠とは違うのかもしれない。


「う~ん……あふ、おはようございます……」


 ステラが起き出してきた。

 彼女も目を擦りながら身を乗り出し、ディアの様子を確認する。


 小声でステラが感想を言う。


「……ちょっと大きくなってますね」

「ああ、成長が早いな」


 ステラの目にもそう見えたか。

 と、ディアがぱっと起き上がる。


「ぴよ! おはよー!」

「ああ、おはよう」

「おはようございます……!」

「ウゴ!? おはよう!」


 ウッドも起きたな。

 というか、起こされたみたいだが……。


 ディアは朝から元気いっぱいに羽を広げる。


「とうさま、かあさま、おにいちゃん……なでてー!」


 こうして俺達の新しい一日が始まったのだ。

 軽く身支度をして、リビングに降りる。


 ウッドが朝ご飯を作っている最中、俺とステラはディアに水浴びをさせていた。


 と言っても、桶にちょっとぬるま湯を張っただけだが。

 コカトリスは水浴びが好きだと言うが、どうだろうか。


「ぴよー、ふぁ……きもちいい!」


 ぱちゃぱちゃと跳ねるディア。

 ……かわいい。


「熱かったりしないか?」

「ぴよ! だいじょうぶー!」

「羽の裏まで綺麗にしましょうね……」


 ステラがこちょこちょとディアの羽を綺麗にしていく。


「じゃあ俺は背中だな」


 こちょこちょ。

 さらさら。


 ふわふわの毛も濡れてはいたが、手触りは少しも悪くない。

 上等な絹を触っているようだ。


「ぴよー! きれいになったー?」

「ええ、ばっちりですよ」

「こっちもだな」

「とうさま、かあさま、ありがとうぴよー!」


 やはりディアは水浴びも好きみたいだな。

 俺も前世の記憶からか、風呂に入らないと死にそうになる……。


 ふむ、しかしこの速度で成長すると指では追い付かなくなりそうだ。

 櫛がいるな……。

 ナールから色々と買っておかないと。


 それから朝ごはんのサラダと季節の果物を食べた俺は、冒険者ギルドに手紙を書くことにした。


 用件はコカトリスクイーンのこと。

 書こうかちょっと迷ったが、いまさらだ。

 すでに孵化計画は村中が知っているし、大きくなればそれこそ物理的に隠しておけない。


 まぁ、ザンザスの迷宮関係でもあるからな。もう俺達の家族だけれど。


 手紙に書いたのはその報告と、あとひとつ。

 情報収集の要請だ。


 村にいる冒険者達もコカトリスクイーンのことは知らなかった。

 ディアは相当レアな存在ということだ。


 コカトリスを基準に考えればいいのだろうが、もっと情報が欲しい。

 そうすると適切なのは、やはりザンザスの冒険者ギルドということになるだろう。

 なのでその要請を書いたのだ。


 さて、冒険者ギルド経由で何かわかるだろうか……。


 ◇


 その後、俺は大樹の塔へ出掛けた。

 定例会議というやつだな。

 生産計画の確認が主な議題になる。


 アナリアとナールがテテトカから聞き出した数値が、紙にまとめられている。

 もちろん生産したものの売上もまとめられている。

 ふむ、おおむね順調なようだな。


 アナリアが用紙を読み上げる。


「えー……というわけで、生産と販売は順調なのですが……」

「……これ以上の生産は無理そうか」

「ええ、色々な生産に使う薬草類がこれ以上、増やせません。ザンザスからの買い付けも限界に近づいています」

「ヒールベリーの村の生産は特殊ですからにゃ」


 その通りなのだ。

 草だんごや肥料、ポーション類、ドリアードへのおやつ……薬草類の消費は多い。


 そして薬草類は需要が増えても、供給はなかなか増えない。

 必要な薬草のほとんどが栽培できず、採集するしかないからだ。


 もちろん俺の植物魔法で薬草も生み出せるが、魔力がある薬草類は大量に用意は出来ない。

 というか、それって根本的に解決してないしな……。


「ぼくたちのいた森の奥はどうですー?」


 鉢植えに埋まったテテトカが言う。

 テテトカは会議でもこのスタイルだ。

 仕方ない。人間社会のささやかな慣習よりもドリアードの士気の方が大切だからな。


「あそこか……。冒険者達も旧ドリアードの住み処より奥へは行ってないんだよな」

「はい、採集はその手前までですね」

「んにゃ……あの奥にも薬草はいっぱいあるのかにゃ?」

「ありますよー。でもぼくたちも、あそこから日帰りできるところまでしか行かないですけど」

「ふむ……」


 採集に長けた冒険者はリスクを嫌う。

 彼らにとって採集は日常生活であり、怪我などもっての外だからな。


 そのため行くのは、一度踏み込んだ旧ドリアードの家まで。その奥へは行かないのだろう。

 現状、採集は出来ているわけだしな。


「よし、今度探検隊を作って森の奥へ行こう。休憩所もいくつか作り、冒険者の採集活動の幅を広げる」

「それはかなり大がかりですね……」

「俺の【大樹の家】を森で使えばいいだけだ。それこそ森の中でも、すぐに家が作れるぞ」

「ああ! そうでした! なんて素晴らしい……!」

「んにゃ、エルト様ならではの方法ですにゃ」

「ただしこの村と違って、地盤の問題は気を付けないとな。あとは変なところに【大樹の家】を作ると、生態系の破壊に繋がるし……」


【大樹の家】はかなりの重量がある。そもそもの地盤が軟弱だと崩れてしまう。

 この村は調べ終わって安全だが、新しく作るには調べてくれる人がいる。

 あと【大樹の家】は今ある生態系を押し退けてしまうからな。

 考えなしに作りまくると、悪影響が出る。


「探検隊へそういうことに強い人を入れましょう。早急に取りかかります」

「資材ならお任せくださいにゃ。すぐに準備できますにゃ」

「ああ、よろしく頼む。準備ができたら出発だ」


 さてこれで話し合いは終わりかな?

 ディアはどうだろう……。

 昼寝しているだろうか。


 そんなことを考えていると、アナリアとナールがこちらを見ている。

 どうかしたのだろうか?


「何かまだあったか?」

「あ、いえ……! ディア、かわいかったな……と思いまして」

「高貴な毛でしたにゃ」

「そうか、そう思うよな」

「ええ、一日経ちましたけどどうですか?」

「ちょっと大きくなったぞ。あと水浴びも好きみたいだな。今朝のことなんだが……」


 それからしばらく、ディアの話で盛り上がった。

 ふむ、もしかして俺ってかなりの親馬鹿かもな。

 でも悪い気はしないのだった。


 ◇


 一方、ザンザスの冒険者ギルドでは大騒動が起きていた。

 原因はエルトの送った手紙である。


 コカトリスクイーン。

 それは冒険者ギルドの上層部でさえ伝説の存在だったのだ。

 それが誕生していた。


 この事態を受けて、冒険者ギルドのマスターレイアは素早く決断を下す。

 早急に調査しなければならない、と。


 もふもふの加減。

 成長速度。


 あとなんかそう、気が向けば脅威度とか何とか……。


 コカトリス検定一級所持者、通称ぴよ博士のレイアは信頼できる冒険者を呼び寄せる。


 Aランク冒険者、百諸島の魔女、水の神に愛された者――。


「……Sランクの緊急クエストですか。ごくり……」


 ザンザスの迷宮でステラと一緒だった水色の魔術師ジェシカ。

 彼女のコカトリス遭遇、第二幕が始まろうとしていた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえばこの作品のコカトリスって尻尾 蛇じゃない?
[一言] ギルマスー!?優先順位がおかしくないけどおかしいよ!?www
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