表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【4月コミカライズ発売!】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/840

33.飼育はじめます

「うわー、きれー」


 土風呂から戻って身綺麗にしたテテトカが、生け簀を覗き込む。


 確かに黄金のレインボーフィッシュは、目がくらむほど美しい。

 金ののべ棒にひれがついて泳いでいるみたいだ……。


 一応、レインボーフィッシュはレインボーフィッシュだよな。

 頭の形もひれも、どれも同じように見える。違いは色だけだな。

 黄金のやつも他のやつと同じで、鯉みたいな外見だし。


「だけど、レインボーフィッシュはこんな色合いにもなるのか……。他とは全然違うな」


 俺が呟くとブラウンも頷いた。


「これはユニーク個体かもにゃん。魔力を含んだ生き物にはたまにいますにゃん。ユニーク個体は同じ種族でもタフですにゃん」

「要は当たり、というわけだな」

「そう考えていいですにゃん」


 見ていると他のレインボーフィッシュより、元気に力強く泳いでいる。

 持ち帰るならこの黄金のレインボーフィッシュがよさそうだな。


 あ。

 さっそく黄金の鱗がぽろりと落ちた。


 生け簀に手を入れて鱗を拾う。

 ふむ……普通の鱗より魔力があるのを感じる。


 だけど鱗の色は、拾ってみるとオレンジになっている。

 この湖のレインボーフィッシュは、落とす鱗がオレンジになるのだろうか……。


 しかしとりあえず、良質な鱗はゲットできた。それだけでも良しとしよう。

 そう思っていると、俺は手元に視線を感じた。

 鱗を食べたそうにテテトカが見ている。


「じーっ……」


 せっかくここまで来たんだし、草だんごも作ったのはテテトカだしな……。

 一枚くらいなら、ご褒美にあげてもいいか。

 どうせ鱗はこれからもゲットできるんだし。


「一枚ならいいぞ」

「わーい! ありがとー!」


 俺が渡した鱗を、秒速で食べるテテトカ。


 ぽりぽり。

 ぽりぽりぽり。


 ……潔い食べっぷりだ。


「どうだ、他と何か違うか?」

「こっちの方が味が濃くておいしー!」

「やっぱりちょっと違うんだにゃん」

「ああ、魔力も強く感じられたしな。たぶん、それが味にも影響しているんだろう」


 それからしばらく様子を見てみたが、レインボーフィッシュ達は変わらず生け簀の中を泳いでいる。


 同行しているアラサー冒険者は、それらの泳ぐ様子を熱心に見ていた。


 彼は釣りや素材系に強い冒険者だ。

 自然が大好きらしい。

 しかし、大自然は厳しく冷酷だ。

 野外活動と太陽光は、彼の毛根を容赦なく痛め付けている。


 前世でも覚えがあるから、俺にはわかるんだ……。紫外線はよくないのである。

 何にとは言わないが。


「どうだ、持ち帰っても大丈夫そうか?」

「ええ、大丈夫そうですよ。この生け簀の中だと流れもあるし、水も綺麗だ。ストレスを感じないんでしょうね」

「とりあえずこの生け簀で飼うのは数匹にしておくか……。様子を見ながら飼育数を増やしていこう」

「妥当ですね。……本当にエルト様は十五歳なんですか? うちの甥や姪とは違って、びっくりするほど賢いですよ」

「まぁ、家柄だな」


 あとは前世の知識やら何やらがあるだけだが。

 しかしそれとは別にナーガシュ家は、特に知恵や経済、合理性を重視する。


「狡猾な蛇」


 それがナーガシュ家の異名だ。そして、この異名は王国中に知れ渡っている。


 だから俺が色々とやることをここの誰も不思議には思わない。

 ナーガシュ家の貴族なら、そういうこともするだろう――みんな、そう受け止めるのだ。


「よし……そろそろいいだろう。悪いが帰りは生け簀をこのまま移動させる。力仕事になってしまうな」

「いえいえ、このくらいお安いご用です。逆に温すぎるくらいだ。こき使ってくださいよ」

「ふむ……また生け簀を用意したら、その時は頼むぞ。帰ったらビールを奢ろう」

「ひゅー! みんな、聞いたか! 慎重に素早く、揺らさないで帰るぜぇ!」


 盛り上がる冒険者達。

 こうして反応してくれるのは嬉しいものだ。


 しかし、俺は知っている。

 ここでの生活は満ち足りて、稼ぎも食い物も良い。

 それは俺の理想通りだ。

 理想通りに進んでいるのだ……。


 だが、どんなものにも落とし穴はあるもの。

 思ってもみなかった罠があった……!


 みんな、ちょっと太ってきている。


 ◇


 村に戻ってきた。

 冒険者達はやはりプロだな。しっかりと揺らさず村に生け簀を持ち帰ってきた。


 生け簀を見ると、やや傾いた太陽が水をオレンジ色に染めている。

 そしてレインボーフィッシュは元気なまま。

 よしよし、目標は達成だ。


 生け簀は事前に考えていた通り、ニャフ族に預けることにした。

 まめで手先が器用なニャフ族なら安心だ。


 あとは魚に詳しい住民の意見を聞きながら、じっくりと飼育していこう。


 まだ日が落ちるまでには少し時間がある。

 俺はスイング練習をしているだろう、広場に行くことにした。


 麻痺治しのポーションが約一週間で揃う。

 そうしたらポーションの消費期限が来る前に、攻略に行かないといけない。

 意外と時間は残されていないのだ。


 広場ではステラとウッド、冒険者達がスイング練習をしていた。


 ステラのスイングは安定してパワフルだ。

 冒険者の投げたボールを打ち返している。


 紐がなかったら、あのボールは村の外まで飛んでいるな……。

 そのくらい、ちゃんとしたバッターだ。


 ウッドのスイングもかなり整ってきた。

 最初の腕力で力任せだった振り方から、全身でひねるような振り方になっている。


 俺はそんなウッドに声を掛けた。


「頑張っているな、ウッド」

「ウゴウゴ! これをふるの、たのしい!」

「そうか……それはなによりだな」


 見ているとウッドは本当に楽しそうにこん棒を振っている。

 ステラが汗を拭いながら、


「上達速度も凄いです……。棒のコントロールも上手くなって、ボールの中心に当たるようになってきています。動く雷も中心が弱点ですから、うまく対処できます」

「ボールは役立っているみたいだな」

「はい……とても役に立っています。ありがとうございます」

「なに、気にするな。実際に攻略するのは君達なんだから」

「……攻略の名誉は、私達に。本当にありがたく思います。この恩には……必ず報いますから」


 他の冒険者達も感動した様子で、俺を見つめていた。

 そんなに感動することか……。

 まぁ、冒険者にはそうなのかもしれないな。


 後で知ったのだが、未踏エリアの攻略は冒険者達にとっては最大級の栄誉らしい。

 歴史に名前が残る偉業なのだ。


 そしてそれに協力した人間も、称賛の対象になる。

 つまりはポーションを生産している俺やアナリアだが……。


 俺はこのとき、意識はしていなかった。

 まさか本当に、ザンザスの歴史に俺の名前が残ることになろうとは。

 そしてその名誉は、俺の領地にとても良い影響を与えてくれたのだった。



 領地情報

 地名:ヒールベリーの村

 特別施設:大樹の塔(土風呂付き)

 総人口:143

 観光レベル:D(名物、土風呂)

 漁業レベル:E(レインボーフィッシュの飼育開始)

お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] のんびりしているところ。 [気になる点] 生け簀、水入れたまま運ぶの厳しくないですかね。1立方メートルで水1トンと考えると、台車か何か必要な気がしますが。
[一言] 知恵やら経済性を重視する家系でこの対応ということは反骨精神を刺激しつつ自然あふれる領地を渡して主人公が見返そうと魔法で開拓する所まで全て掌の上かも?!と予想してみたり(まぁ記憶を思い出す前は…
[気になる点] 強めのポーションで毛根回復しないんだろうか? [一言] サウナは蒸し風呂なわけで水蒸気が充満してるわけだ その水にハーブとか漬け込んでから水蒸気にする ハーブサウナなんてものが有ったり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ