293.コカトニア・ハウス
それは見事なドールハウスであった。
大樹の家――木製の家の模型。扉もちゃんと付いている。ちなみに全体に保護剤を塗っているので、触っても木片が剥がれ落ちることはない。
ちゃんと葉っぱも作って接着されている。
「ちいさーい……かわいい」
そこにぴよっとした、コカトリスのぬいぐるみが置かれている。これもコカトニア・ハウスのために調整された特別サイズであった。
「家にあるのと比べると小さいけど……お家にはぴったり!」
「そうだね、よく似合ってる……!」
それでもぬいぐるみのサイズ的には、苦心の後がうかがえる。家の大きさからすると、コカトリスは通常の二倍以上大きなことになってしまう。
「ぴよ。おうちがいいかんじぴよねー!」
ディアが資材置き場から、大樹の家の模型を取り出す。
「これはさわっても、だいじょーぶなやつぴよ! どうぞぴよ!」
「手に取って質感をお確かめください、だったんだぞ」
マルコシアスが暗記した案内の内容を語った。
これから芸術祭の本番にはお客さんも来る。その案内も大切なお仕事である。
「じゃあ、ちょっと借りてもいいかな……?」
「どうぞぴよよー!」
オードリーが屈んで、ディアから大樹の家の模型を受け取る。
「どう? どんな感じ?」
「うん……よく出来てるね」
木製のおもちゃは一般的だ。よくあるモチーフは動物や植物、魔物などだが。
これは絵ではわからない、立体的な知識の獲得をしてもらう意味もある。
「クラリッサも見てみて!」
「ありがとう! へぇ……こんな感じなんだ」
オードリーからクラリッサへと家の模型が渡される。
「ぴよ。ぬいぐるみもあるぴよ」
「こ、こっちもいいの?」
「おためしひん、ぴよ」
コカトリスのぬいぐるみ大好きなオードリーはるんるん気分でそれも受け取る。
ふにっとした触り心地……。一瞬でオードリーは確信する。これは間違いなくザンザス製の高ランク品であった。
「そう言えばあともうちょっと、このコーナーのパーツがあったんだぞ」
マルコシアスがごそごそとそのパーツを取り出す。
「……それがありましたね」
「あったねぇ……」
ステラとナナがやや遠い目をする。
「じゃじゃーん! だぞ」
マルコシアスが取り出したのは、ドリアードの頭と盛り土のセットにした模型だった。
ちょこんとしたドリアードの頭が、土色をした木製の土台に乗っている。
土風呂を楽しむドリアードの模型である。
「わぁ……! ……ん?」
「こ、これは……」
何かを取り出したマルコシアスにオードリーが喜び――首を傾げる。ちなみにクラリッサもだ。
「こっちもあるぴよよ。ぴよ……ぴよ……」
ディアも資材置き場からもうひとつ、最後のひとつを取り出す。
「あっ、こっちもあるんだ……!」
「よ、よかったね」
それは普通に立っているドリアードのかわいらしいぬいぐるみだった。
両方のぬいぐるみがないと埋まっているだけにしか見えないので、レイアが急ぎ作ったのだ。
すすっとディアとマルコシアスがそのパーツをコカトニア・ハウスの土台へと並べていく。
「このへんぴよね」
「わふ。ヒールベリーの村らしさがアップしたんだぞ」
「ほんとうぴよねー!」
セットされた最後のパーツを見て、オードリーとクラリッサは一緒に頷く。
「……うん、そうだね。あの村らしいよ……!」
「ふわもっこカワイイだね!」
ドリアードもきちんと花が頭に乗り、可愛く出来ている。その辺りは外していない。
「ほぅ……これ、欲しいなぁ」
「うん、欲しい……」
大樹の家をひっくり返したり、コカトリスのぬいぐるみをふにふにしてみたり……。
「こっちはレイアの作品でもありますからね。きっと近々発売になるかと!」
「本当ですか!? やったぁ!」
「あとは野ボールの服とかも欲しいね……」
クラリッサの呟きにステラが答える。
「今はまだ大人用だけですけど、すぐに子ども用も作りますので……! それぞれの種族や年齢にあったラインナップが要りますからね」
にこーとステラが答えた。
ニャフ族なら耳と尻尾部分に工夫がいる。ドワーフやモール族なら背丈の関係もある。
しかしそれらもステラはクリアできる気でいた。服飾関係ならザンザスも得意(着ぐるみの製作等)なのだ。
「そうしたら、私もぜひ欲しいです……!」
ぐっと見上げるクラリッサに、ステラはうんうんと頷く。
「野ボールの良さが浸透してきたみたいで良かったです……!」
「はい!」
そんなこんなでヒールベリーの村の展示物、そのお披露目は終わった。
目の肥えたホールド家の皆にも好評なようで、ステラとしては一安心だ。
「さて、あとは本番ですね!」
ステラが改めて気合を入れる。
それにマルコシアス、ナナも続く。
「これからが大事だからね。要点をわかりやすく、魅力を伝えなくちゃ」
「頑張るんだぞ!」
そして、ぴょんとディアがとびはねる。
「がんばるぴよよー!」
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