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【書籍化・コミカライズ】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


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244/848

244.旅立ちの前に

 それからまた時間が経ち――いよいよ芸術祭へと向かう日が近付いてきた。


 そんな日の夜。

 リビングで本を読んでいるとディアがてくてくと歩いてくる。


「ぴよ。とおさまー……」


 そのままディアがぴょんと俺のふとももに乗ってきた。

 そして俺の体にぐりぐりと、ふわもこな体を押し付ける。


「……どうした?」


 本を置いて、ディアを両手で撫でる。

 それを気持ち良さそうに、震えて受け止めるディア。

 ディアは両手でもみもみされるのが好きだからな。


「ぴよ。とおさまと、はなれるぴよ」

「大丈夫だよ。一週間くらいのことだ。マルコシアスやかあさんと離れていても、大丈夫だったろう?」

「……たしかにぴよ」


 しかし納得しきらないのか、目を細めるディア。


「とおさまは、さびしくないぴよ?」

「また会えるから大丈夫だよ」


 優しく言って、ディアを抱き上げる。

 ふわもっこして、温かい。

 その体を俺の胸に抱き寄せる。


 ディアにとっては試練かもしれない。

 でも必要な試練だ。


 ウッドはザンザスへ行って、俺との別れを経験した。その後、東に行ったステラを見送った。

 彼は両親と一度は離れている。


 ディアもステラとは別れたんだ。

 俺とも少し離れる経験が必要――あくまで少しずつだけれど。


 でもこの方針に対しては、ステラも賛成である。

 リビングの向こうでは、そのステラが寝っ転がって子犬姿のマルコシアスに乗られている。


 ちょうど肩の辺りにマルコシアスが乗って遊んでいるのだ。

 でもぴくぴくわずかに動くステラとマルコシアスの耳……こちらの話を聞いているのだろう。

 二人とも五感が鋭いしな……。


 ステラは故郷を飛び出した冒険者なので、独立することに何の抵抗もない。

 かくいう俺も実家との関係はアレで、依存させすぎるのがいいとも思えないしな。


「とおさま、あったかいぴよ」


 抱き寄せたディアが俺の胸の中でもぞもぞする。

 かわいい。


 ……本当は少し考える。

 まだいいんじゃないかとか、早すぎるとか。


 でももう一方で、一週間くらいの小旅行なら……とも思う。


 ディアは早熟だし、村の外に出れば多くを学ぶだろう。少なくともステラがいないときは、そうだったのだから。


「俺にとっても温かいよ、ディア」

「ぴよ。あったかぴよ?」

「ああ、とっても」


 確かに繋がっていると実感する。

 それゆえに、多少は離れなければならない。


「ぴよー。ないちゃだめぴよよ?」

「……ふふ、そうだな」


 そう言って、ディアを膝へと降ろす。

 ディアの瞳には力強い輝きが宿っている。

 ……そんな気がした。


 ◇


 それから寝る時間になった。

 最近のステラのお気に入り、背後から抱きつきスタイルである。


 俺の頭の後ろにステラの気配を感じる。

 何か言いたそうな……だな。

 目を閉じたまま、ステラに小さく問いかける。


「どうかしたのか……?」

「……私もけっこう、寂しいですよ」

「うっ」


 ぐっとステラが俺の背中に抱きついてくる。

 普段よりもちょっと力が強い。

 全然痛くはないけど、主張を感じる。


「……ごめん」

「すみません、困らせるつもりはないのですけど……」


 ステラの小声が首元にかかった。

 それでも竪琴のように澄んだ声は、俺の耳にはよく届いている。


「ただ言いたかっただけです。私にとっても、この村はかけがえのないものですから」

「うん……」


 それはよく伝わっている。

 ステラは能力は高いけれど、どこか自分自身でもその力を持て余し気味だったと思う。

 最初の頃は、多分そうだった。


「……戻ってきたら、二人きりでデートでもするか。ご褒美、というわけじゃないが……」

「あら、珍しい」


 ふにっ。

 ステラの手が俺の頬に優しく触れる。


 ふにふに。

 そのまま俺の頬を、むにむにとステラが弄る。


「わかりました、約束です」


 少しだけ熱を帯びたステラの声。


「ぴよー……なにか、はなしてるぴよ……?」


 あっ、ディアがもぞもぞとしてる。

 と、ディアに抱きついているマルコシアスがむにゃむにゃと言う。

 すごく眠そうな声である。


「母上も寂しい、という話なんだぞ……。気にしちゃ駄目なんだぞ」

「マルちゃん……!?」

「ぴよ……。かあさまもぴよか……」


 ふにふにとディアがマルコシアスを抱きしめる。


「おとなになっても、さびしいものぴよ?」

「年齢にあんまり関係なく、ちょっとは寂しいんだぞ」

「なるぴよ……まなんだぴよ……。すやー……ぴよー……」


 そこでディアは寝息を立て始めた。


「……我も寝るんだぞ……わうー……すやぁ……」


 ……マルコシアスもけっこう、お姉ちゃんになってきたような気がする。

 これが本来の性格かもしれないが。


 むにむに。


 まだステラの手が俺の頬に触れている。

 そのステラの手に、俺は自分の手を重ねた。


「ありがとう」


 ふっと出た言葉だが、ステラには効果抜群だったようだ。


 ステラの手から力が抜けて、軽く息を吐いた気配がした。


「……おやすみなさい、エルト様」

「おやすみ、ステラ」


 そう言って、ステラの寝息が聞こえる。

 俺もまもなく、眠りに落ちるのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごく、色々。 子離れしようとする親、 確かにある繋り、 それ故にと思う親、 ステラとの睦言、 気づくディアに大人も寂しいと、年齢関係なく少しは座間着きます教える“おねぇちゃん”マル…
[一言] 家族回だからいいのだ ウッドが空気だったけどいいのだ 彼にはララトマがいるからいいのだ
[一言] マルちゃんの存在は偉大(ウルフのお尻を触ったアッパースイングのあの方とは関係ありません
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