表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます~前世の知識を駆使して農業したら、逆転人生始まった件~   作者: りょうと かえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/848

209.好み

「ただいまー」

「ウゴ、ただいま」


 俺とウッドが家に帰ると、ステラがリビングでミニバットを作っていた。

 ……ものすごい、何気なく。


 ディアとマルコシアスはソファーの上で、すやすやとお昼寝中か。


「おかえりなさい……!」


 ステラが作業中のミニバットを置く。

 どうやら木材を削って作っているらしい。

 まぁ、それ以外に作りようもないが。


「……どうでしたか、ミニバットは?」


 うきうき、という感じでステラが聞いてくる。


「ウゴ、良かったって。……また必要になるかも」

「それは何よりです……! ええ、もちろんまた作りますよ」


 また作るらしい。

 にしてもいつの間に、こんなミニバットを……。


 いや、ステラにとっては大した事ではないのか。

 俺にしてみるとバットの手作りは凄くハードルが高く感じる。


 木材を削り、表面をコーティングする。ちゃんとバランスをとってやるのは楽ではない。

 魔法なら馴染みがあるのですぐ生み出せるが。


 でもステラなら勘である程度、出来るだろう。

 出来てしまう才能がある。


「でも嬉しかったです。ウッドからミニバットが欲しいと聞かされて……」

「ウゴ、作ってくれてありがとう……。すぐ出来た」

「そんな……! 気にしないでくださいね、頼ってくれて嬉しかったです」


 ステラがパタパタと手を振る。

 ……なるほどな。ステラはステラでウッドに頼られたのが嬉しかったのか。


 確かにウッドはこの家族の中だとお兄ちゃん気質だ。

 しかしゆっくりとだが、確実に自立心が芽生えている。


 一人で花飾りを作り、試行錯誤する。

 そしてステラに頼んで必要な物を作ってもらう。

 どちらも大切なことだ。


「それで次はどういう風にしますか? いえ、バットはバットですが……」

「どういう風?」


 どういう風って……どういうこと?

 バットはバットじゃないか?

 大きさを変えるということかな。


「ウゴ……赤とか?」

「赤……! いいですね、情熱の赤!」


 ステラがうんうんと頷く。

 そこで俺はステラの言っている意味を理解した。


「……塗装するのか?」

「そうです、木目も美しいですが……飾るだけなら塗装もありかな、と」

「それもそうだ……。凝り始めてるな」

「ええ、やるなら色々とやってみたいですしね……」


 そう言って、ステラはすすっと俺の近くに来る。

 速く、音もなく。


「……それで、ちょっとだけなのですが……木材を」


 わきわきと手を差し出す。


「バット用の木材をください……!」


 ……とっても楽しそうだな、ステラ。

 俺も嬉しい。


 ……いや、本音を言おう。やっぱりよくわからん……。

 好きだけど、底知れない。


 まぁ、すぐに作って渡すんだけどね。

 ウッドの今後もあるしな。


 それにしてもカラフルバットの花飾りか。

 ……ごくり。

 どんな作品になるのだろうか。


 ◇


 翌日もヴィクターは大河の流れを着ぐるみの中から見つめていた。

 日はゆっくりと傾きつつある、午後である。


 決してヴィクターは暇なのではない。

 ヴィクターは四つの魔法適性を持ち、ルイーゼのように風を操り空を飛ぶこともできる。


 時間を作ってフィールドワーク研究しているだけなのだ。ちゃんと学院の先生としても働いていた。


 そのヴィクターは大河を見ながら、昨日会った水夫に声をかける。

 水夫は暇そうにしていたからだ。


「……今日は昨日に比べて、一段と船が少ないな」

「へぇ、なんでも下流でリヴァイアサンが出たとかで……。さらに船が減ってるんでさ」

「ふむ、そうなのか。そのリヴァイアサンは始末されたと聞いたが」

「よくご存知で。通りがかった貴族様が仕留めてくれたらしいですが、皆びびっちまってね。今度騎士団が来るみたいですが、どうなることやら」


 ちなみにそのリヴァイアサンを始末したのはヴィクターである。

 昨日、ぽてぽてと帰ろうとしたらそんな話があって――成り行きで一働きしたのだ。


 幸い、リヴァイアサンは幼体だったので即氷魔法で仕留めたのだが。


 もちろん着ぐるみは着たままだったので、顔は知られていない。

 ……やはりこの着ぐるみは便利だ、とヴィクターは思う。


 大貴族の長男であるヴィクターがこんな所をうろついて、顔見知りに会ったら騒ぎになる。

 しかし着ぐるみなら顔バレする心配はない。


 むろん、このコカトリス着ぐるみはチューニングしており防御機能も高い。

 刃や弓矢のみならず、魔法にも高い耐性を持たせている。とっても安心装備なのだ。


 そしてガラの悪い連中に絡まれることもない。

 巷ではよく知られている。コカトリス着ぐるみを着ているヴァンパイアに喧嘩を売るのは、馬鹿のすることだと。


 なにせヴァンパイアは個体で強く、着ぐるみ装備も強い。まず返り討ちである。

 絡む理由がない。


 中身がヴァンパイアでなかったら?

 その可能性はあるが、別の意味で絡みたくないだろう。ヴィクターとしては遺憾ではあるが。


 少しの間、ヴィクターと水夫は話をする。

 主に大河や川コカトリスのこと。


 とはいえ、やはりこの川でコカトリスはあまり見かけないらしい。

 たまにぷかぷかと浮かんでくるだけのようだ。


「学者先生はなんで、この川でコカトリス探しを? もっと別の海や川にもコカトリスはおるでしょーに」

「いい質問だ」


 ヴィクターは目線を大河から水夫に移す。


「この川は流れがかなりあるな」

「ええ……そうですねぇ。ウチラの腕の見せ所でさ」


 水夫は頷く。

 この川は近隣だとかなり流れが速いことで有名だ。


「しかし、それが……?」

「どうやってコカトリスは流れに逆らって泳いでいるのか? 不思議ではないか。もっと穏やかな水流にもコカトリスはいる。しかし同じ泳ぐ力だと、この大河では流される。つまり泳ぐ力が違うわけだが……。なぜ違う? 見た目には同じコカトリスなのに」

「……言われてみると、そうですなぁ」


 とりあえずよくわからないが、同意する水夫。

 なんとなく疑問を挟まない方が良い気がしたのだ。


「実際には見た目も違うのかも知れないが。俺は脚か尾羽に秘密があると睨んでいる」

「なるほどぉ……。目の付け所が違いますなぁ」


 水夫もこの大河で働いて長い。

 川の流れを長時間見つめるのは、大抵こういう人物なのだ。

 水のように捉えどころのない人間だけが、川を見つめるのである。


「それじゃあ、あっしはこれで。もう仕事がないんで帰って寝ますわ……」

「そうか、ご苦労だったな」


 ……悪い人ではなさそうではあるが。

 水夫は思った。

 本当に変わった学者先生だなぁ……。

お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……あぁ……うん、今このタイミングで 長兄が主人公の町を訪ねたならば……。
[一言] 水中に用が無ければ陸走った方が速いのに わざわざ流れの早い川に居んの?そいつら
[一言] 顔バレしない着ぐるみ着てるのが普通なヴァンパイアって一体どうやって個人の識別をしているんだ・・・? 人の顔を覚える感覚で魔力の感覚を覚えるとか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ