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顔捜しの間  作者: み-ま
9/9

『終章』 報い

◇◇◇◇


 それから2週間ちょっとで、私(佐伯愛美)は、無事に退院する事が出来た。


お父さんとお母さんにいつ怪しまれるかとヒヤヒヤしたけれど、何かまずそうな事は、病気のせいで記憶が曖昧になったという事にして、無理やり乗り切る事に、今のところ何とか成功しているみたいだった。


これから色々大変だけど、早く佐伯さんになりきれるように、彼女がどういう人だったのか調べなきゃ。


今迄、同じクラスでも殆ど話した事も無かったし、特に私は最近あまりみんなと大勢で過ごしたりもしなかったから、彼女の事もクラスのみんなの事もあまりよく知らない。佐伯さんはクラス委員を務める程クラスに溶け込んでいたから、こんな私にうまく出来るだろうか?


そんな不安を抱えながら、私はそれから1週間後、学校に復学した。



◇◇◇◇


 登校初日、ドキドキしながら教室の扉を開けると、真っ先に私を見付けて、佐藤陽菜(ひな)ちゃんがとんで来た。陽菜ちゃんは、佐伯さんが一番仲良くしていた娘だった。


「愛美!!!おはよう!!!良かったぁ~、もう学校来て大丈夫なの?」


私はバレないように緊張しながら、笑顔を作った。


「おはよう、陽菜ちゃん。心配掛けてごめんね。手術も成功したし、学校行ってもいいって先生からも許可貰ってる。無理は出来ないんで、体育は見学だけどね。」


「うわぁ、良かった~。私、愛美が居ない間、詰まらなくって詰まらなくって、どうしようかと思ってたんだ。休み時間、ずっと一人でスマホいじってたよ。」


私は陽菜ちゃんと話しながら、いつの間にか、つい癖で、以前の自分の席の方に向かって歩いてしまっていた。


そして直ぐに気付いてしまった。自分の席の上に小さな花瓶が載せられ、花が生けてある事に・・・。


私の視線を辿って直ぐに察した陽菜ちゃんは、言い辛そうに、


「そうだ、愛美は何も知らなかったんだよね・・・。立木さん、愛美が入院する前日の学校帰りに交通事故に遭って、全然意識戻らないまま、1ケ月位前に亡くなったんだよ。みんなでお葬式に参列したんだけど、ご両親ずっと泣いてらして、お気の毒で声掛けられなかったよ。」


「・・・」


私が言葉も無く呆然としていると、


「ごめん、来た早々、そうだよねショックだよね。私達だってまだ立ち直れないもん。」


陽菜ちゃんは焦って、私に掛ける言葉を探していた。


(そうか、そうだよね、私、やっぱり死んじゃったんだ。ごめんね、お母さん、お父さん。勝手な娘で。)


だけど私は自分で・・・、


(えっ?)


私は呆然とした・・・。


ガタン!!!


クラスに居たみんなの視線が一斉に私に集まった。


でもそんな事も、落としたカバンも何も目に入らなかった。


膝がガクガクと震えだす。


(あれは何?)


私は気付いてしまった。もう一つ花が飾られた机がある事に・・・。


私が驚愕の表情で一点を見つめているのに気が付いた陽菜ちゃんが真っ青になった。


「あっ、あの、あの、愛・・美、落ち着いて・・、聞いて・・・、」


(嫌っ、聞きたくない!反射的にそう思って耳を塞いだ。)


「永井・・君・・も・・、永井君・・も・・、ね・・・、」


「あの・・、ごめん、そうだよね、愛美、永井君に振られたって言ってたけど、あんなに好きだったんだもんね・・・。やっと学校に戻って来られた日にこんな事・・・、だけど・・・、」


(えっ?振られ?)


「入院する前の日に、危険な手術するからって無理にお願いして、最後の思い出にデートして貰ったんだよね?」


(最後の思い出・・に?)


「永井君が愛美に言ってた好きな娘って、立木さんの事だったんだよ。みんなもびっくりしてた。」


「永井君・・・、立木さんが亡くなったって報せ聞いて、学校飛び出して行って、そのまま立木さんのところに行ったみたい。そしたら・・次の日・・、朝・・、屋上から・・・、」


「いつか結婚しようって約束してたんだって!」


「永井君、立木さんの為にサッカーも頑張ってたんだって!」


「舞が居ない世界に生きてる意味無いって、最期にクラスのみんなにラインくれて・・・。」


「あっ、あっ、あっ、嫌ぁ-!!!!!!!!!!」


「悠夜!悠夜!!悠夜ぁ!!!!!!!」



◇◇◇◇


 「もしあなたが偽りの申告をされた場合、あなたは神より相応の罰をお受けになられる事になります。」


「もう一度伺います。この実体があなたの身体で間違いありませんか?」





-fin-




お読み戴きまして、ありがとうございました。

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