表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
顔捜しの間  作者: み-ま
2/9

『1章』 はぐれた魂

◇◇◇◇


 気が付くと私は真っ暗な場所に居た。


四方八方真っ暗で、どこがどうなっているのか、ここがどこなのかさっぱり分からない。


ただ私はその漆黒の闇の中に立っていた。いや、立っているのかどうかさえよく分からなかった。


自分の姿、その手も足も何も見えないのだから。



◇◇◇◇


 「気が付かれましたか?」


突然闇の中に通る声が響き渡る。


私はその声がどこから聞こえてくるのか、声がしたと思った方向を探ってみたが、さっぱり判らなかった。


「無駄です。私を見付ける事など出来ません。私は形を成さぬ者。」


「ようこそ鏡の間へ、迷える魂よ。」


(鏡の間?)


すると突然私の周囲に、幾つもの炎が揺らめきながら浮かび上がって辺りを照らし出した。


そうして私の周囲だけが明るくなると、この漆黒の闇の中に、驚いた事に、私の周りをぐるっとまあるく取り囲むように、巨大な鏡が並べられていた。


でも何故か不思議な事に、その鏡には何も映っていなかった。


当然映っているいる筈の私の姿も・・・。


(えっ、私は?)


私が全ての鏡を何度も何度もあちこち見ていると、


「あなたは迷える魂、私と同じ実体の無き者。鏡に映る訳がありません。」


「あなたはどうしてここに居るのかご記憶にありますか?」


(私がどうしてここに居るのか?)


「あなたのお名前は?」


(名前?)


「あなたのお名前は?」


(名前・・、私の名前・・、私の・・、)


(私の名前、名前・・、分からない、思い出せない!)


(どうして?私は誰?どうして私はここに居るの?)


(何で?何で何も思い出せないの!?)


私はもう訳が分からずパニックになりそうだった。


(怖い!!!私は誰???助けて!!!)


すると再び闇の中から、抑揚の無い、男とも女とも知れない声が響いた。


「落ち着いてください。それで良いのです。」


「あなたは何らかのアクシデントにより、身体からその魂が離れてしまわれた迷える魂。記憶が無いのは、実体から突然離れてしまった事による一時的な乖離障害です、何の問題もありません。そういう方は間々居られます。」


「ここはあなたのような、はぐれてしまわれた魂を救う鏡の間。別名、顔捜しの間。」


「顔捜し?」


「そうです。」


「ご安心ください。あなたの身体も魂もまだ天寿を迎えられてはおりません。よって、あなたは再びあなたの身体に戻る事が出来ます。これから幾つかの身体をお見せ致しますので、あなたはその中からあなたの身体をお捜しください。身体を見付けられれば、その時点でご自身の記憶も取り戻せますのでご安心ください。」


「何かご質問は?」


質問と言われても、何が何やら分からないのに、質問の仕様が無かった。


「・・・」


「無いようでしたら、早速始めさせて戴きますが、宜しいですか?」


(はい。)


私はそう答えるしか無かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ