28 雨宮さんの水着
エントリーナンバー一番!
お嬢様で女王様な巨乳美女、嵐ヶ丘小百合!
真っ赤なホルターネックの水着は、大きなバストを支えながらもしっかり谷間まで強調している。くびれのある腰や高身長も全面的に活かした、人目を着実に奪うセクシーなスタイルだ。
肌に纏わりつく長い亜麻色の髪は、ウィッグと思えないほど自然な艶を放ち、お高そうなサングラスも絶妙にマッチしている。
これで男装したら宝石級の美少年なんて世の中おかしい。
「ねぇねぇ、みんなでビーチボールしようよ!」
小脇にスイカ模様のボールを抱えて、雷架が弾ける笑顔を見せる。
エントリーナンバー二番!
お馬鹿系アイドル、雷架小夏!
セパレートタイプのタンキニで、レモンイエローのボーダー柄が元気いっぱいだ。タンキニとは『タンクトップビキニ』の略であり、その名の通り上がタンクトップになっていてデザインとしても着やすい。
ほんのり日焼けした肌にスラリと伸びた足、チラリと覗くへそ出し加減が活発な印象である。
しかしコイツとビーチボールなんてしたら、運動神経の差で負け確定だ。
本気を出されたら命を失い兼ねん。
「私はあまり日焼けしたくありませんので……」
すまし顔をしている雲雀だが、水着には趣味が多分に反映されている。
エントリーナンバー三番!
毒舌鋭いお人形さんガール、雲雀鏡花!
ライトピンクのチェック柄の水着はワンピースタイプで、お腹あたりがレースアップデザインになっている。ひらひらの裾も可憐で、甘めのロリィタ服を水着にアレンジしたみたいな一着だ。
色白の小顔に影を落とす、大きめのストローハットにもピンクのリボン付き。流れるストレートな黒髪が、ピンク一色な姿と上手く調和している。
毒舌さえ飛ばさなければ、本当に愛らしいお人形さんのようだ。
そして……。
「き、着替えたばかりだけど、着替えたいよぉ……」
堂々としている他三人と違って、太腿をもじもじと擦り合わせる雨宮さん。
エントリーナンバー……なんて、実況している場合じゃない!
「な、なんてことだ……」
「晴間くん? 震えているけど大丈夫かい?」
「大丈夫じゃないです!」
衝撃に打ち震える俺を薄井先輩が心配してくれたが、正直卒倒しそうだ。
恥ずかしがり屋で、まだ自分に自信を持ち切れない雨宮さんのこと……。
てっきり選ぶ水着は、雲雀のより肌を隠したワンピースタイプか、いっそラッシュガード、なんならスク水かと予想していた。
その予想に反して、彼女が選んだ水着はバンドゥビキニ。
『バンドゥ』とは確かフランス語で『細めのリボン』という意味で、肩紐などのストラップがなく胸に巻きつける形のビキニである。
剥き出しの肩や鎖骨は大人っぽくありながら、ベビーブルーに薄っすら小花柄が入ったデザインは幼げな愛らしさもある。ボトムにフリルがついているのは清楚さをプラスし、絶妙なバランスだ。
いつも前髪につけてくれている雫型のピンも、水着の雰囲気にマッチしている。
ちなみにバンドゥビキニはバストを底上げする効果があって、胸の小さい人向けらしいがそこは置いておこう。
なにが言いたいかというと、可愛い。
可愛いし可愛いんだが、意外に攻めた水着の大胆さに直視できない。
「は、晴間くんが、思い切り顔を逸らして……! わ、私がこんなの早まったよね⁉ 着替えて来る……!」
「ち、違うんだ! 待ってくれ!」
パッと身を翻して更衣室に戻ろうとする雨宮さんの腕を、かろうじて掴まえる。
刺激の強さに負けて、頑張って水着姿になってくれただろうカノジョを不安にさせるなど言語道断。カレシの名折れだ。
俺はしかと雨宮さんを見据えて息を吸う。





