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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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26 いざ!夏へ

 あっという間に、予定していたプールの日。


 連日の炎天下で喚くセミの大合唱をBGMに、俺たちは昼頃に学校の裏門前で集合した。ここに今いるメンバーは俺に雨宮さん、雷架に雲雀だ。

 肩には各々プールバッグを担いでおり、準備は万端である。


「久しぶりだな、雨宮さん」

「うん! 晴間くん忙しそうだったから……元気だった?」


 門柱横に立つ大木が陰を作ってくれている中、雨宮さんと感動の再会を果たす。


 大袈裟かもしれないが、こんなに会えない日が続くとは想定外だったのだ。ひとえにhayateとのコラボの反響が大き過ぎた故である。

 案件を受けたのは俺なので、自分で巻いた種とはいえ……撮影やらインタビューやら、引っ切り無しなスケジュールだった。


 マジで女装だけして夏が終わるかと……。


「忙しくはあったけど、まあ元気かな。雨宮さんは夏バテとかしてないか? ちょっと瘦せたんじゃないか?」

「夏バテは平気だよ。瘦せたのは……水着のために短期間プチダイエットというか……」

「ダイエット?」


 そんなもの必要ないと思うが、夏の体型管理をしたい女心は俺も理解できる。無理をしていないなら、止めろと言うのは野暮か。


 メッセージのやり取りは毎晩欠かさずしていたとはいえ、こうして顔を合わせて話すと相手のことがよくわかっていい。


 なにより生の雨宮さんは最高だ。

 存在そのものが可愛い。


 雷架チョイスだろうパンツスタイルのカジュアルな私服で、とんでもセンスじゃないのもホッとした。

 いい仕事をしたな、雷架。


「ただえっと、体調不良とかではないんだけど……」


 フッと、雨宮さんが睫毛を伏せる。

 きめ細かな肌には木漏れ日が差している。


 俺もそうだが、あまり日焼けしないタイプのようで白さが眩しい。彼女は上目遣いで攻撃を仕掛けて来た。


「……晴間くんと会えなくて、寂しかったかな」

「ぐあっ!」

「晴間くん⁉」


 威力は抜群で、俺は心臓を押さえて呻いた。


「す、すまん……生雨宮さんへの耐性が薄れていたみたいだ……ノーガードで可愛さの暴力を食らっちまった……」


 よろめく俺を、雨宮さんは「え? え?」と戸惑いながらも支えてくれる。


 こんな調子で、雨宮さんの水着姿を拝んで俺は生きて帰れるのか……?

 ここに来て危機感を抱き始める。


「……まったくバカップルしていますね」

「アチアチだねー」


 雲雀が呆れて、雷架が手を叩いて笑っているうちに、予定時刻ピッタリに会長の迎えの車がやって来た。

 THE・セレブ御用達、車体の長い白のリムジン。 

 なんという絵に描いたお嬢様ムーブ。

 

「は、ははは晴間くん! これって私が乗ってもいいの……⁉」

「……俺もさすがにビビってる」


 ビクビクする雨宮さんを筆頭に、俺たちは慄きながら乗り込んだ。

 いや、雷架だけは「あはっ! 一反木綿みたーい!」と例える肝っ玉の据わりっぷりだったが……。


「みんな揃ったわね。絶好のプール日和でよかったわ」


 車内は空調が完璧で涼しく、ローテーブルを囲むようにラウンド型にソファが配置されている。


 そのソファで悠々と足を組んで座る会長とは、俺は久しぶりでもなんでもない。hayateとしてほぼ連日会って仕事をしていた。

 そんな会長の隣には、よく見るともう一人ひっそりと座っている。


「紹介が遅れたわね、副会長の薄井くんよ。三年生で、私のクラスメイトでもあるわ」

「よ、よろしく……」


 ははっと力なく笑う薄井先輩は頬がコケた痩せ型で、失礼ながら社会に疲れたサラリーマンのような雰囲気があった。

 

 なんでも事務作業のプロフェッショナルで、その能力を見抜いた会長が生徒会に引き入れたらしいが、それも強引だったに違いない。雲雀と会長という我の強いメンツに囲まれ、さぞ胃を痛めていることだろう。


 出会って秒だが彼の幸せを祈る。


「――それじゃあ、出発といきましょう」


 会長の合図で、雷架いわく一反木綿のようなリムジンは発進した。


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書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
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