13 あっさりバレました
めっちゃお待たせしてすみません……!
マイペースに進めていきますので、のんびりお楽しみくだされば!
「んー?」
「ええっと……」
「んんん?」
「私、急いでいるので……」
「んんんんん?」
「人違いでは……」
それこそキスくらい出来そうな至近距離で、hikariを舐め回す雷架にどうしたものかと苦悩する。
いやはや、キスなんて特大イベントはぜひ雨宮さんとお願いしたい。恥じらって頬を染め、こちらをおずおずと伺う雨宮さんは、想像しただけでリーサルウェポン……じゃない!
止めろ、現実逃避。
今は現実に向き合って、どうやってダイナマイトアホの子を躱すかだが……時すでに遅し。
「あー! わかった! ハレくん、ハレくんでしょっ! というかハレくんじゃん! ハレ……むぐむぐ」
「ちょっ、静かにしろ! 理由は後で説明してやるから!」
人生に肝心なのは諦めと切り替えだ。
人の本名(あだ名だが)を連呼する雷架の口を無理やり塞ぎ、地声で「いいから俺の正体は広めるな」と耳打ちする。
アホで天然ではあるが、意外と人の機微に聡くて察しは悪くない雷架は、コクコク頷いた。
「えー……でも、ハレくんがhikariさんとかヤバッ。セーベツをチョーエツしているじゃん」
「まあな。hikariの輝きの前では人類皆ひれ伏すからな」
「あ、ハレくんってその格好だとそんな性格なんだね。ウケる! やっぱりおじいちゃんにお願いして来てよかったなー!」
雷架がここにいる理由は、どうやら見学目的らしい。
彼女のお爺さんは元プロのカメラマンなのだが、お爺さんの現役時代の友人がこのスタジオの経営者で、その繋がりで入れてもらえたようだ。
雷架はお爺さんと同じカメラマン志望だから、プロの仕事ぶりを勉強しに来たのだろう。
学校の勉強もこのくらい熱量高くやれたらいいのにな……。
「とにかく見学っていうなら、大人しくしていろよ。俺はこれから撮影だから」
「この部屋で? それなら雷架ちゃんも撮影風景見ていてもいい!?」
「……もう好きにしてくれ」
虹色に続いて雷架の相手は多大なるカロリーを消費するので、俺は投げやりに言った。
正体がバレた時点で投げやりも投げやりである。
雷架は「やった! hikariが撮られているところ見られる!」と飛び跳ねている。
しかしコイツも、hikari=俺の受け入れ早いな。
世間だと大スクープなのに、それより俺に許可をもらえてはしゃいでいるなんて、本当に天然でどこかズレている。
俺は床の袖をヒラリと持ち上げ、ピッと人差し指を立てた。
「いいか? 見学中は『おかし』を守れよ」
「『押さない』『駆けない』『喋らない』だっけ?」
「珍しく合っているが今回は違う。『俺の正体を言わない』『勝手なことはしない』『喋らない』だ」
「最後だけ同じだね、オーケーオーケー! わかったよん!」
本当にわかったのか?
……果てしなく不安だが、俺はようやく扉を開けられた。俺の後ろから、雷架も「失礼します」と小声で呟いて続く。
パシャっと響くカメラのシャッターを切る音。
中では俺以外のモデルがまだ撮影中で、度重なる妨害で撮影時間に遅れていないか不安だったが、むしろ入れ替えには些か早かったらしい。
そして俺は、ココロさんの言う『大物モデル』の正体が誰なのかわかった。
そして書籍版も二巻発売決定しました!
活動報告に詳細載せましたので、そちら気になる方は一巻と合わせてよろしくお願い致します。
(内容的には雲雀回で、書き下ろし八割くらいです)





