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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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12 雷架さんは勘がいい

 ここにいるはずのない雷架の姿に、俺は大いに動揺した。


「んん? このお部屋でいいのかなっ?」


 扉の前でキョロキョロしている雷架は、そこの部屋に入っていいのか悩んでいるようだ。胸元にはよく見たらスタッフ証をつけていて、さすがに勝手に潜り込んで来たような事態ではないことがわかる。


 相変わらず、古着っぽいロンTにハーフパンツと、スポーティーな格好がよく似合っていた。


 剥き出しの健康的な足はあらゆるシーンに映えそうで、清涼飲料水の宣伝とかやれば売れそうだな。スタッフというより撮られる側の方がしっくりくる。



 まあ、そんな話はおいといて。

 ……さて、どうしたものか。



 なぜ雷架がいるのかは定かではないが、コイツはhikariの正体が陰キャ系男子高校生の晴間光輝だという、世間に隠している残念な事実を知らない。


 もちろん、わざわざ教える必要はないと思っている。


 意外にもカメラ女子だった雷架とは、雨宮さんを被写体に撮影会をした縁で、それなりに仲良くはしているものの……秘密を明かして俺が得する要素がこれといってなかった。

 hikariの正体が実はクラスメイトだなんて、青天の霹靂的真相を知ったところで、雷架側もどうこうする気はないだろうし。 



 よってこの局面は、正体バレを避けて無難に乗り越えたい。

 ただそうなると、危惧すべきはコイツの動物並みの直感力だ。



 かつて美少女に変身した雨宮さんを、的確に見抜いたその勘のよさは伊達じゃない。


 お馬鹿娘だからって侮れない、いやマジで。


 でもその部屋には、さっさと俺も入らなきゃいけないため、雷架に声を掛けて退いてもらう必要がある。

 くそっ、虹色にさえ絡まれなければ、雷架がどっか行くまで待ったものを!



「あ……あー……ごめんなさい、そこの部屋に入りたいから、少し通してくれないかしら?」



 コホンッと咳払いをして、再び女声を作る。

 一日に二回もこの技を使うことになろうとは……。


「わわっ! ごめんなさい、すぐ退きます……って、えー!? うそうそ、まさかhikari!? あの美少女モデルの!?」


 雷架はドングリのような瞳をキラッキラにさせて、俺の存在に食いついた。


「わー! 生hikariヤバッ! 可愛い過ぎじゃん、人間ですか!?」

「に、人間ですけど……」

「同じジンルイとは思えなーい! 浴衣サイコーです! 運良く会えたとか、明日お友達に自慢できちゃうよっ! あ、握手はOK?」

「そ、それくらいなら……」

「感激ー! ネイルも可愛い!」 


 反応が、ザ・陽キャのそれだ。


 きゅっとノリで握手を交わせば、俺の爪に施された、黒い蝶が舞うネイルに目敏く気付いた雷架。

 すぐ剥がせるようにネイルチップだが、なかなか目のつけどころがいい。


「えへへっ、握手までしてもらっちゃった! 雷架ちゃんついてる! 世界的美少女は中身も完璧でシンセツなんですね!」

「ま、まあね?」


 テンション高く俺を絶賛する雷架に、正直悪い気はしない。


 時間と心に余裕があれば、もっとファンサをしてやりたいくらいだ。(女装した)俺の浴衣姿は最高だよな、わかる。



 しかし、これ以上騒がれても収拾がつかないため、俺は再び退くよう催促しようとしたのだが……。




「んんんんん? というかhikariさん、誰かに似ている?」



 いつかのデジャブ。

 雷架が俺の顔を覗き込みながら、首を大きく傾げ始めたため、俺はギクリと体を強張らせる。


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【お知らせ】
GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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