2 ラブラブ?ですか。
長らくお待たせして申し訳ございません……!
「ココロちゃんに聞いたのよぉ? コウちゃんったら、カ・ノ・ジョ! できたかもしれないってー!」
「あー……」
「なになに、おねえちゃんに黙って水臭いじゃない! はあ、昔はなんでも私に一番に報告してくれたのになー。ねっ、教えてよ! どんな子がコウちゃんの彼女なの? コウちゃんの病気を治してくれた子、おねえちゃんも見たいなー?」
くそ……ココロさんめ!
面倒だから美空姉さんには言わないでって口止めした約束、アッサリ破りやがったな……!
あのロリータコンテストの後、すげぇしつこく俺と彼女のことを聞いてくるから、約束つきで白状したのに……!
昔から美空姉さんは、上機嫌で俺をからかう時、自分のことを『おねえちゃん』と呼ぶ。
こうなった美空姉さんは厄介だ。ひたすら酔っ払いみたいなウザ絡みしてくる。
「姉さん、その話はまた今度で……。ほら、待ち人が来るからって」
「えー? ちょっとくらいいいじゃない!」
「よくない、よくないから! ……あっ!」
と、そこで本当に俺の待ち人がこちらにやってくるのが見えた。
俺は「それじゃあっ!」と短く別れを告げて、通話を強制シャットダウンする。
向こうで美空姉さんが「ねえ、その子ならもしかしたら……」となにか言いかけていたが、優先すべきは目の前の『彼女』だ。
『廊下は走るな』を真面目な性格故にキッチリ守って、早歩きで俺の前まできた雨宮さんは、ミディアムボブの髪を揺らして申し訳なさそうに微笑む。
「ごめんね、ちょっと先生に呼び止められて……ま、待たせちゃったよね……?」
「いいや、俺も電話して待っていたから……!」
「えっと……」
「うん……」
会話に一瞬のぎこちない間。
あれ? こういうやり取りって……と俺が考えていた矢先、雨宮さんが恥ずかしそうに、形のいい唇を綻ばせて囁いた。
「な、なんかこういうやり取り……彼氏と彼女っぽい、よね!」
言った後に羞恥に耐え兼ねたのか、えへへとはにかむ雨宮さんが可愛すぎる。
今なら致死量の血が吐けるぞ。尊さで人は死ぬ。
俺の彼女マジ可愛い。
そう、こんな最高な女の子が、俺の彼女なんですよっ!
今からもう約一ヶ月前――俺と雨宮さんは雨の中で大告白大会を互いに開催し、晴れて正式なお付き合いを始めた。
そこからはもう、世界が虹色だ。
空は曇天でも明るく、草木は枯れていても瑞々しく、うるさい騒音も天使たちの戯れに聞こえるニューワールド。
ありがとう、世界は美しい。
もっと美しく可愛いのは雨宮さんだけどな。
御影はそんな俺のことを、「今世紀最大に浮かれている」と称したがなにも間違えではない。
俺、浮かれています。
「あー……っと、えっと、とりあえず帰ろうか。今日は雨宮さん家に寄っていけばいいんだよな」
「う、うん、弟も妹も、晴間くんが来てくれるのを楽しみに待っているから……」
「じゃあ行こうか」
ふたりとも手探りな初々しい空気で、俺たちは靴を履き替えて学校を出た。
閑静な住宅街を並んで歩く。
道中、スクールバックを持つ手とは逆の、雨宮さんの空いた指先を、見つめてみたり視線を外してみたり……。
俺がなにをしたいかなんて、たぶん端から見たらバレバレだろう。
だけどいいのか? まだ早いんじゃないか?
恋愛スキル初心者どころか赤ちゃんの俺には、サッパリわからない。
「晴間くん……」
すると意気地無しな俺に代わって、雨宮さんがそっと俺の同じく空いた手に触れてきたため、心臓が口から飛び出しかける。
「あ、ああああ雨宮さんっ!?」
「ご、ごめんね、私が晴間くんと手を繋ぎたいなって思ったから……ダ、ダメ?」
「大いにアリです!」
不安そうに小首を貸して尋ねられたら、俺は首を縦に振りまくるしかない。
勇気を出してこちらからも指を絡めてみたら、雨宮さんは肩をビクッと揺らして、交わる温度がじんわり熱くなった。
はあー……幸せすぎて怖い。
ふたりで手を繋いだまま、雨宮さん宅にお邪魔すれば、それを見咎めたブラコン弟くんに音速パンチ食らわされかけたり、うるさい双子にボードゲーム勝負吹っ掛けられたりしたが、俺は確実に人生の絶頂期を味わっていた。
第10回ネット小説大賞を受賞し、書籍版が発売になりました!
こちらのWEB版とはわりと大事なシーンが変わっていたり、雨宮さんのあれそれが追加になっていたりしますので、もしご興味ありましたらよろしくお願い致します><
(詳細は活動報告にて! ⇩に表紙イラストもあるので、超美少女?なhikariを見てやってください)





