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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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23 ジンクスと告白

「ジンクス?」

「今日がね、この公園の噴水が建てられた日で、この日のうちに噴水の前で好きな人に告白すると、恋が叶うんだって。ネットでも調べたら出てきたんだ。噴水の中に妖精の像があって、その妖精が『恋の妖精』で、応援してくれるとかなんとか……」


 『恋』、というワードに変に動揺しかけたことは、ひとまず置いといて。


 言われてみればここの公園自体、デートスポットとして有名だ。そんなジンクスがあったからなんだろうか。


 しかし、像なんてあったか? と思って、横目でチラッと確認する。


 公園の名物でもある噴水は、池の真ん中に三段ケーキのようなオブジェがあって、その天辺からから水が噴き出している仕様だ。


 その三段ケーキの二段目にポツンと、白い石作りの妖精が確かにいた。

 ふんわりしたドレスを纏った髪の長い女性が、その髪を水で洗っているような像だ。背中には広げた四枚の羽。

 どことなく、さっきまでの白いロリータ服を着た雲雀を彷彿とさせる……あれも『森の妖精さん』がテーマだしな。


 なんか、アイツに背中を押されているみたいだと思うのは、勝手な妄想だろうか?

 告白するならさっさとしろって。


 いや、雲雀が言うなら「怖気づいたんですか? もたもたしていてみっともないですね、先輩」くらいの毒を飛ばしそうだ。

 俺をここに送り出してくれたアイツは、今頃コンテストの結果発表中かな。いい結果が出ているといいな。


 雲雀に嘲笑われないように、俺も腹を括る時が来たようだ。



 よし……と、強く拳を握る。

 言うぞ、俺は、雨宮さんに。『好きです』って、手始めにシンプルに。



 妖精が応援してくれているなんて最高のシチュエーションだ、今しかない。


「あっ! あのさ、雨宮さん……!」

「さっきまでいろんな人たちが、ここで告白して本当に成功していて……みんな幸せそうでね。羨ましいな、いいな、私も頑張らなきゃって、思った」

「え……」


 俺が言い切る前に、雨宮さんが先に動いた。

 意味ありげな言葉と共に、俺の方をくるっと向き直る。揺れるミディアムボブの髪は艶やかで、雨宮さんが俺のアドバイスを守って、しっかり手入れしていることが伝わってくる。


 そしてバランスの取れた可愛い顔には、なにか決意のような感情が浮かんでいた。

 自然と、俺は緊張で喉が上下する。


「えっとね……本当は今日、晴間くんとお洋服やアクセサリーを見るショッピングとかして、どら焼きの美味しいお店に行って、あちこち回った後に、最後にもう一度ここに来てもらうつもりだったの。その間に私のこと、少しでもたくさん……す、す、す、好きになってもらって、勝算を上げてから告白したいなって」

「勝算……告白って……」



 脳の処理が追い付かない。

 雨宮さんはなにを言っている? 俺はなにを言われている?



「私が前に『変わりたい』って願ったこと……きっと晴間くんなら覚えているよね」

「あ、ああ……うん」

「相変わらず私は地味で、後ろ向きで、たいした自信もないけど、それでも『前の私』より、私は『今の私』が好き。それは間違いなく、いつも眩しい晴間くんのおかげだよ。そう思ったら、じっとしていられなくなって……だから小夏ちゃんからこの噴水の話を聞いた時、絶対に今日伝えようって、決めました」


 雨宮さんは緊張すると敬語が入る。彼女らしい可愛い癖だ。


 そうか、雨宮さんも俺と同じで緊張しているんだな。

 雨音さえ遠退くほど、自分の心臓の音がうるさい。馬鹿野郎、雨宮さんの言葉を聞き逃すだろうが。いったん止まってろ……って、それだと死ぬな。俺もたいがい混乱している。



 震える声で、雨宮さんが「晴間くん」と改まったように名前を呼んだ。



「前にも言ったけどね、この先も私だけを見ていてください……」



 言われなくても、俺は雨宮さんから目が離せないんだよ。

 あの日、放課後の誰もいない教室の汚いロッカーの中で、その素の笑顔を初めて見た日から、俺は雨宮さんだけを目で追っているんだ。


 そして彼女は、俺の言いたかったことを先に言ってしまう。



「私は晴間くんのことが……好きです」




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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[一言] ここで噴水から飛び出すマイケル!鳴り響くEDM!からのポゥ!
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