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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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21 雨の中、走る女装男子

 イベントタイムは、結論から言えば大成功で終わった。

 hikariがロリータ姿でステージに立ったんだ、当然すぎるほど当然の結論である。


 審査員はバタフライ畠山さんまでスタンディングオベーションだし、配信も俺が出た途端にコメントが急増して、視聴者数も跳ね上がった。

 出番はたったの十五分程度だったんだが、SNSではトレンドにも上がっていたらしい。


 まあ、これも当然といえば当然だな。hikari(俺)だからな。


 

 後からチラッと見た、配信のコメントやSNSの書き込みはこんな感じ。


『ロリータちゃんたちのコンテスト見ていたら、なぜかhikariちゃんが出てるんだが!?』

『hikariちゃんのロリータ可愛いhikariちゃんのロリータ可愛いhikariちゃんのロリータ可愛いhikariちゃんのロリータ可愛いhikariちゃんのロリータ可愛い……』

『待ってどこから見れるのそれ!? そのコンテストの配信先教えて!』

『激レア映像! hikariのロリータ!』

『ハートモチーフのロリ服可愛い~! 私も欲しい!』


 そんな大盛り上がりの民衆の中で、俺的に気になるコメントもいくつか……。


『というか今回のファッションテーマ、「恋する女の子」って……hikariちゃん、本当に誰かに恋してるみたい。雰囲気がそんな感じ!』

『なんか前より可愛くなった???』

『恋する女の子感出てる! ステキ!』


 ……このへんはもう、鋭いとしか言いようがない。

 ファンを侮っちゃいけないな。


 ぶっちゃけステージに立っている間、俺は雨宮さんのことしか考えていなかった。



 早く会いに行って、伝えたいことは山のようにある。



 雨宮さんには笑っていて欲しいし、できればその可愛い笑顔は、俺にだけ向けられていて欲しい。

 だけどやっぱり、雨宮さんの最高の可愛いさは、世界中に発信して自慢したい気持ちもあるから、俺の女装男子心はいつだって複雑だ。


 その複雑さも含めて、この感情を世間は『恋』と呼ぶらしい。

 もう痛いほど自覚したから。



「……信号、早く変わってくれ!」

 


 ステージが終わった後。


 俺は秒でhikariの変身を解き、ココロさんへの挨拶もそこそこに、コンテスト会場から出て雨宮さんの待つ自然公園へと走った。

 距離的にバスやタクシーを使うより、徒歩が一番早いと思って。


 だけど慌てすぎた俺はスマホを楽屋にうっかり忘れ、今は渡れば公園の入り口はすぐそこという交差点の前で、信号機に捕まっているところだ。

 ここの赤信号、長いんだよな。


 焦る想いに反して足は止められ、俺は焦れったくて歯噛みする。


 しかも……。


「うわっ!? マジかよ!?」


 ポツポツ……と、空から無数の雨粒が落ちてきた。

 皮膚を伝う汗に雨が混じる。



 今日の天気は一日晴れじゃなかったのか?

 天気予報のバカ野郎め!



「くそっ、雨宮さんは濡れてないよな……!?」


 まだ小雨とはいえ、下手をしたら彼女が風邪をひいてしまう。俺はいいんだよ、健康優良児だから。 

 雨宮さんが運良く傘を持ってきているか、すぐ軒下にでも避難してくれていることを願うばかりだ。


 スマホがないの、マジ不便だな。

 おそらくココロさんが回収してくれてると思うが、己のうっかり加減を呪わざるを得ない。


 ますます早く会って、雨宮さんの安否を確認しなければ……!

 

「よし!」


 ようやく信号が変わり、俺は再び駆け出す。


 緑あふれる公園の中に入れば、突然の雨に足早になる人たちがそこそこいた。そんな人たちの間を抜けて、待ち合わせ場所である噴水を目指す。


 丸いレトロ調な噴水の前には、折り畳み式っぽい青の傘をさした雨宮さんが立っていた。


 

「ーー雨宮さん!」



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【お知らせ】
GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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