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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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20 『恋』とはどんなもの?

「れ、れんあいかんじょうで、すき……?」

「なにポカンとしているんですか。先輩が雨宮先輩に抱く感情は、世間一般で言うところの『恋』というものです。わ、私も現在進行形でしておりますが……間違いありません」


 雲雀は一瞬、恥じらうような表情を見せるものの、俺は叩き付けられた言葉の数々にただただ困惑している。

 

 恋愛感情。

 それってどんなものだ?


「……まさか『恋』がわからないなんて、ポンコツロボットのようなこと言いませんよね?」

「えっ……い、いやぁ……正直、幼い頃から姉さんに女装させられて、思春期真っ只中にはhikariデビューしちまったから、そこから『俺が一番可愛い病』を発症していてさ……」


 たぶん俺って初恋もまだ、だよな?


 御影は小学校の担任の先生が初恋だったらしいけど、俺はその頃も姉さんに「コウちゃんが世界一可愛いわー!」ともてはやされていた。両親からもだ。

 そっちである意味たくさんの愛情を受けていた分、あまり恋愛方面に興味が向かなかったのだ。

 

 俺の曖昧な返答に、雲雀は眉をつり上げる。


「まったくハッキリしておりませんね、イラつきます。『恋』というのは、その人と付き合いたいだとか、行く行くは結婚したいだとか……」

「結婚!?」

「うるさい、最後まで聞いてください」


 ぴしゃりと容赦なく、俺を強制的に黙らせる雲雀。

 なんかさっきからやたらと当たりが強いな……。



「馬鹿な先輩のために、もっとわかりやすく言いましょうか? ……その人と、ずっと一緒にいたいってことですよ」



 どこか悔しげに雲雀が口にしたことは、奇しくも先ほど、ココロさんに問われた内容と重なった。

 俺はなんて答えた?


 確か俺は、雨宮さんとずっと一緒にいられたら、幸せなんじゃないかってすんなり答えたよな。



 ああ……なんだ、そうか。

 俺は雨宮さんに、『恋』をしているのか。



 一度理解してしまえば、その事実はとてもすんなり受け入れられた。

 ストンと、自分の真ん中に『雨宮さんへの恋愛感情』が、明確な輪郭を持って綺麗に収まる。


 ココロさんのアシストと、雲雀に答えを出されなきゃ気付かないなんて……ふたりにバカと罵られまくっても仕方ないな。



「……ありがとうな、雲雀。お前のおかげで、大切なことに気付けたみたいだ」

「それはどうも。……告白、とかするんですか」

「そっか……恋愛感情に気付いたなら、次はそれだよな」


 俺は今すぐにでも、雨宮さんに会いに行ってこの気持ちを伝えたい。


 どんな反応が返ってくるか……まったくわからないしかなり怖いが、言わずにはいられそうにないくらい、鼓動が逸っている。心臓がふたつもみっつもあるみたいにうるさかった。


 ただひとつ、懸念があるとすれば……。


「雨宮さんは女神のように優しいからなあ。俺がフラれる可能性も十分あるとして、そのときは変に悩んで気負わなきゃいいけど……」

「……優しいのは晴間先輩もでしょう。それにそんな可能性は……ほぼないと思いますけど」

「いや、普通にあるだろ? 今や校内ナンバーワン美少女で、性格よし頭よし運動苦手なのも可愛くてよし、あのモテて当然の雨宮さんだぞ? すでに別の奴が好きだったりして……あー! ムリだ! ツラい! 想像だけでツラすぎる!」


 かつてない感情にこれまた振り回され、俺は廊下の真ん中でしゃがんでしまう。

 それでもhikariの姿なので、しゃがみ方も豪快ではなく、あくまで可憐におしとやかに。身に付いた習慣だ。


 そんな俺に、雲雀は「さっさと立ってください」と冷ややに命じた。やっぱり当たりキツいの、勘違いじゃないよな?


 だけど立ち上がった俺に、雲雀は呆れたような仕方なさそうな、どちらにせよレアな微笑みを向けてくる。


「似合わない鬱陶しい落ち込み方は、すぐさま止めた方がいいかと。自信のない晴間先輩なんて、ただの地味な陰キャ女装男子ですよ」

「言い返せねぇけど酷いな……」

「だから自信を持って……雨宮さんに告白したらどうです? 私もケジメ、つけたいですし」


 なんで雲雀がケジメ? と思ったが、静かな笑みを前に聞くのは野暮な気がして、俺は「おう」と頷くに留めた。


 

 このイベントタイムが終わったら、速攻で雨宮さんのもとへ行く。 

 そこで、雨宮さんに告る。玉砕覚悟だ!



 決意を固めた俺は、もう一度雲雀に礼を告げ、「コンテストの結果は速報で報せろよ」とだけ念を押して別れた。

 最後に雲雀がなにか呟いたが、声が小さすぎて聞き取れず……でもさすがに時間が差し迫っていて、俺は今度こそステージへと向かった。



 待っていてくれよな、雨宮さん。

  


次回は雲雀視点です!

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書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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