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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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18 無自覚ですか?

「わかった……雨宮さんがそこまで言うなら、代役を引き受けるよ」


 俺の承諾に、雨宮さんより先に反応したのはココロさんだ。

 「よっしゃー!」と雄叫びをあげて、金髪のサイド三つ編みを跳ねさせる。


「ありがとう、ありがとうね、雫ちゃん! hikariの出番が終わったら、秒で光輝くんに戻してそっちに行かせるから! あ、また今度雫ちゃんも変身させてね! お姉さんがんばっちゃう!」

『は……はい! お忙しくなければまた……!』

「忙しくても、無償でメイクもヘアアレンジもするから! hikariに負けないくらい可愛くなろうね!」


 バカだなあ、ココロさん。

 すでに雨宮さんは、俺を可愛さで超越しているというのに。


 一頻り喜び終えたココロさんは、関係各所にか連絡をスマホで始める。俺も切る前に、雨宮さんにもう一度「必ずこっちが終わったら行くな」と念を押しておいた。



『うん、待っているね。晴間くんに……どうしても、伝えたいことがあるの』



 そこで通話は終わった。

 

 俺が雨宮さんに想いを馳せる間もなく、ココロさんにガシッと腕を取られる。


「さあさあ、お着替えの時間だよ光輝くん! 出番はすぐそこ、君をとびっきり最高のロリータガールにしてあげる!」

「やっぱりロリータ着るんスね……」


 あれよあれよという間に、本来は虹色ハナコが使うはずだった楽屋へと連行された。

 目の前に突き出された服は、雲雀が着た白を基調としたロリータ服に似ていたけど、真っ赤なハートが山ほどあしらわれている。頭に乗っけるミニハットにも、巨大なハートを持ったウサギちゃんのぬいぐるみが縫い付けられていた。



 つまりはコテコテのラブリー路線。

 これは……確かに着こなすには、少々覚悟がいるな。



「なんかねー、虹色ハナコったらこういう路線、もう卒業したいんだって。もっとカッコいい女子に転換したいって希望、前から話していたみたいで」

「へえ……真逆ですね、今のあざカワ路線と」


 ハナコ本人は最初からそっちでやりたかったのに、事務所が無理に今のイメージ戦略を強いたパターンかな。業界ではよくあることだ。

 だからって、仕事のボイコットは絶対にダメだけど……ハナコも苦労してんのかな。


「今はハナコのことは置いといて! とりあえず秒で着替えちゃって! その後にヘアアレンジとメイクするから! あ、hikariの飴色髪のウィッグも、今アシスタントに持って来させているし!」

 

 いつも以上にテキパキ動くココロさんに、俺も急かされつつもhikariへと変身していく。



 程なくして壁にかかった全身鏡の前には、長い飴色髪をふんわり靡かせた、世紀の美少女が立っていた。ハートだらけのロリータ衣装も難なく着こなしているし、珍しく真っ赤な口紅にグロスを乗せた唇は、ちょっぴり色気のある小悪魔的な魅力も醸し出している。



「相変わらず……可愛すぎるだろう……俺」



 うっとりする俺に、ココロさんはもはや御影のようにツッコむこともなく、「やっぱり今の歴史を作る、最高のモデルはhikariしかいないわ! そして私も会心の出来!」と胸を張っている。



「ステージに立ったら、パフォーマンスとかは特にしなくていいから。イベントタイムはモデルさんのお披露目がメインだからね。でもだからこそ、存在だけで魅せて欲しいっていうか……」

「得意技です」

「うん、さすがの自信だね! ちなみにコーデ全体のテーマって教えたっけ?」


 そんなものあったのかと初耳のため、俺は首を横に振る。だがどんなテーマだろうと、俺に体現できないはずがない。


 そう、自負していたんだけど……。



「テーマはねぇ、『恋する女の子』だよ!」

「……恋する?」


 

 ドクリと、心臓が大きく跳ねる。

 その単語ひとつがやけに引っ掛かる。

 そしてなぜか、唐突に過ったのは雨宮さんの可愛い顔で、んん? と首を傾げてしまう。


「まあ、『恋する男の子』な光輝くんには問題ないよね!」

「俺……恋なんて生まれてこの方、したことありませんけど」

「ちょっとぉ、おねえさんにそんな誤魔化しはもういいって! 鈍い通り越して恋愛回路が死んでるさすがの光輝くんも、自分の気持ちにいい加減向き合ったでしょ? むしろもう付き合ってるから、この後デートに行くんじゃないの?」

「えっ? いやいやいや、マジでわかんないッス。なんの話ですか」

「へ……」

  

 俺の本気のキョトン顔に、からかいモードだったココロさんは一瞬、真顔になる。 

 次いで楽屋に響き渡るビックボイスで、「ウソでしょっ!? まだ無自覚なの!?」と叫んだ。


 耳がキンキンします、ココロさん!


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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