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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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12 雲雀さんと雨宮さん

 美少女に

 ハグされ固まる

 いとをかし


 こうき

 


 ……思わず心の一句を詠んでしまった。


 俺は相当混乱している。

 だがそろそろ正気に戻らなければ!



「た、頼む雲雀! とりあえずいったん、いったん離れてくれ!」

「……え? あっ!」


 俺の懇願に雲雀もやっと我に返ったのか、目を極限まで真ん丸にしている。そして物凄い素早さで俺から距離を取った。警戒している黒猫感がある。


 最初は本人も「わ、私は、なんて不埒なことを……!」と慌てふためいている様子だったが、そこはさすがのクールを通り越してツンドラ系美少女。すぐに冷静さを取り繕ってスン……と真顔になる。


「……上級生のクラスまで来ておいて、みっともなくも取り乱しました。お騒がせして申し訳ありません」

「い、いや、俺はいいけどさ、結局なんだったんだ? いったいお前になにがあったんだよ?」

「ここでは少し話しづらい……例のことですので、出来れば場所を変えたいです」



 雲雀が声を潜めて言う『例のこと』といえば、ひとつしかない。

 ロリータコンテストのことだろうが、なんかスパイみたいな言い方だ。



 そういえばちょっと前に、写真やミニ作文といった一次審査用の書類を送ったな。その選考の結果がそろそろ出る頃だった気もする。俺も結果は気になるところだ。


「そういうことならいいぜ、行こう! 旧校舎の方にでも移動するか。ごめんな雨宮さん、少しだけ待っていてくれるか?」

「えっと、その……そ、それって、私もついていっちゃダメかな……?」


 雨宮さんのことだから、申し訳ないが快く待っていてくれるだろうと思いきや、意外な申し出に俺は少々驚く。彼女は「このままじゃ、晴間くんが取られちゃう……」と小さく呟いていて、なにやら必死な様子だ。


 その呟きを拾った雲雀が、ピクリと微かに反応する。


 取られるって、まさか……命か?

 さすがに雲雀も、俺の命までは取らないと思うから心配しないでいいのだが……。



「違う、そういうことじゃないぞ、光輝」

「なんだよ、御影。俺の思考でも読んだのかよ」

「恋愛回路が死んでるお前の思考なんて、親友の俺には丸わかりだ。罪な女装男子だな、お前は。はあ……もういいから、雨宮さんに聞かれてもいい話なら、連れていってやれよ」


 そう耳打ちされても、こればかりは雲雀の許可がないといけない。俺個人としては、いつも控え目な雨宮さんのお願いだ、なんでも叶えてやりたいところだけどな。


 雲雀はしばし、考える素振りを見せる。



「……雨宮先輩だけなら、いいですよ。私の秘密を言いふらすような人ではないことは、インタビューを受けてもらった時点でわかっています。知ったからといって秘密を笑う……そんな人でもないでしょう」

「あ、ありがとう、雲雀さん! 無理言ってごめんね……」

「いえ……」


 澄んだ瞳でお礼と謝罪を口にする雨宮さんに対し、雲雀はなんとなく複雑な表情だ。

 そうか、このふたりは面識があるんだったな。


 美少女ふたりが対面して会話する様子に、クラスメイトはホッコリした空気だ。まあ、確かに目の保養だし癒されるよな。

 ここに「今日は新作カメラの発売日なのー!」と勇んで、すでに爆速で帰ってしまった雷架が加われば、まさに花園だっただろう。



 むしろ俺がhikariになって加わりたいくらいだ。



「じゃあ、場所を移すぞ」



 そうして俺と雲雀、それから雨宮さんは、御影に見送られて旧校舎の空き教室へと移動した。ここは机も椅子もなにもなくて、本当にまっさらな空間だ。


 どことなく緊張した面持ちの雲雀と俺が向かい合い、俺のすぐ後ろでは雨宮さんがそわそわしている。


 そわそわ雨宮さんも可愛い。

 行動のひとつひとつが愛らしいんだよなあ、うんうん。



「本題から手短に言うと……『集まれ! ロリータガール! 一番可愛いのはあなた★ コーディネートコンテスト』の一次審査、どうにか通過致しました」

「おおっ!」



 雲雀が見せてくれたスマホには、通過のお知らせメールが表示されていた。

 俺が歓声をあげて「すごいじゃないか! やったな!」と純粋に喜べば、雲雀も心なしか照れたようにはにかむ。


「ロ、ロリータ……? ごめんなさい、私ったら無知でわからなくて……」


 おおう、雨宮さんはまさかのロリータ自体をご存知ないのか。


 まあ雨宮さんは、なんでも着こなすだろう可愛さを持ちながらも、本人自体はファッションに疎い方だもんな。かつてのとんでもファッションを思い出し、俺は納得する。

 

 どう説明したもんかと悩んでいると、雲雀が雨宮さんのもとに進み出た。



「ロリータとは……こういう服です」




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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
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書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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