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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
三章

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7 雲雀さんと喫茶店。

 なにはともあれお仕事優先、ということで、俺は不思議の国のアリスちゃんに変身した。


 白エプロンつきのロリータ服に、足には白と水色のしましまのニーハイ。

 アリスといえば金髪だろうが、hikariの飴色の髪色だけは変えられないのでそこはそのままに、飴色ロングヘアーにふんわりウェーブをかけ、頭には水色のドでかいリボンを装着した。



 ヤバい……まさに絵本の中から飛び出してきた美少女……さすが(雨宮さんは規格外として)可愛いを極めた俺……可愛い。



 俺の仕上がりを見たメロリンさんは、「うちの服をこんなに着こなすなんてやばーい! 男の子だなんて信じられない!」と大興奮。

 遅れてきた顔馴染みのカメラマンさんも「hikariちゃん、ロリータ界にもhikari旋風を巻き起こしちゃうねえ!」と褒めまくり、撮影は着々と進んでいった。



 唯一気になることといえば……。



(雲雀、見すぎなんだが……!)



 撮影中、雲雀が俺をずっと、穴が空くほどガン見していたことだ。


 彼女も変身した俺と対面した際は、純粋に驚いているようだった。まあ、元の俺を知っていて、そこからのhikari姿を初見ならままある反応だ。なのでそこはいい。


 だが驚きを引っ込めたあとも、雲雀から突き刺さる視線が痛い。

 しかもなんか、やけに熱が籠っているような……雲雀の考えがわからない。



 あれはどういった感情で俺を見ているんだ?



「はい、撮影終了! お疲れ様、hikariちゃん!」



 雲雀の剣山みたいな視線にも耐え切り、無事に俺は仕事を終えた。あとはちゃっちゃか着替えて退散するのみである。


 この際だ。

 俺の秘密も雲雀の秘密も、明るみにでなければもういいから、雲雀が怖すぎるのでいったん逃げることにする。  


 一度逃げてからもろもろ対処を考えよう、うん。


 メロリンさんやカメラマンさんへの挨拶もそこそこに、俺は雲雀がどこかに行っている隙を狙って、裏口から店を出ようとする。



 よし、このままいけば逃げ切れ……。


「なにを勝手に帰ろうとしているんですか、先輩? 逃げないでくださいねって言いましたよね」


 ……ませんでした。



 俺の行動を読んだように、裏口にはすでに腕を組む雲雀が待ち構えていた。


 彼女も着替えを終えていて、ふわふわあまあまなロリータ姿から一転、シンプルな黒のクラシックシャツに、グレーのタイトロングスカートを穿いた色のない非常に大人びた格好をしている。


 クール系女優のオフショット、って感じだ。


 こちらの方が雲雀のイメージには合うが、先ほどの『ピンク! ピンク! ピンク!』な姿が俺の目には焼き付いているため、脳内がバグを起こしそうである。  


 そこは俺、人のこと言えないんだけどさ!


「このあと時間はありますか? ああ、なくても作ってもらいますが。どこかゆっくり話せるところに行きましょうか」

「え、あの、雲雀……」

「なんですか? もたもたせずさっさとついてきてください。先輩はカメかカタツムリかミミズですか」

「ミミズはわりと動き早い気がするぞ! じゃなくて……!」

「いいから歩け」

「はい」


 俺って先輩だよな?


 という心の問いかけも虚しく、雲雀に付き従って訪れたのは、近くのレトロな雰囲気の喫茶店だ。


 チョビ髭のマスターがいて、淹れるコーヒーは確実に美味しいだろう店。そこの窓際の席に、雲雀と向かい合わせに座る。

 近くの席でPCを打つサラリーマンが、雲雀を一目見て「うわ、めちゃめちゃ可愛い」と呟いたのが聞こえた。



 見目はさすが、我が校の四大美少女だもんなあ……。

 雨宮さんが一番だけどさ。



「先輩、これメニューです。なにか好きなものを頼んでください。お会計は付き合わせた私が持ちます」

「えっ、いやいや悪いって! むしろ俺が払うから!」


 メニューを差し出して雲雀がそんなことを言うので、俺は首をブンブン横に振った。


 雲雀は冷めた目を俺に向ける。


「なんですか? 女性の前だからとカッコつけたいだけなら、私はそういった考えは鬱陶しいとしか思わないので。こちらだって無理やりここに付き合わせたことくらい、わきまえていますよ。侘びに支払いくらいします。変な男のプライドを見せられる方が迷惑です」

「いや、女性の前だからとか、男のプライドとかじゃなくて! 強いて言うなら先輩のプライドだ! 俺は後輩に奢らせたりしないぞ!」

「先輩のこと『先輩』って便宜上は呼んでいますが、別に先輩を先輩として敬ってはいないのでその気遣いも不要です」

「ああ言えばこう言うなあ、お前!」


 結局、口論の末に自分の支払いは自分ですることに落ち着いた。


 雲雀は怖いだけじゃなく、なかなかに面倒なやつだ。


 俺にはアイスコーヒー、雲雀にはメロンソーダ(これまた意外なチョイスで驚けば睨まれた)が来たところで、ようやく本題に入る。


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[一言] 珈琲の美味しい喫茶店とかで落ち着くの、憧れはすれども紅茶党なのです。美味しい紅茶の喫茶店ください。パンケーキかアップルパイをセットでお願いします。
[良い点] 逃げたらむしろ光輝さんの秘密が危ないんですよね。 [一言] 見てはいけない秘密を見て、女の子は何を思うのか。
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