表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/108

15 雨宮さんは変わりたい。

「『こんなことくらいで傷ついた自分が情けない』とか、そんなふうに思わなくていいんだ。辛かったことは辛かったことでいいんだよ。大事なのはきっと、雨宮さんがこれからどうしたいかだと、俺は思う」

「私がどうしたいか……?」

「おう。俺はそれに友達としていくらでも手を貸すよ。雨宮さんに無体を働いたヤツらに報復したいっていうなら、全力でするし」

「そ、それはいいって! もう、晴間くんたら」


 わりと本気八割だったのだが、二回目の報復発言で冗談だと思われたのか、雨宮さんはちょっとだけ涙を引っ込めて笑ってくれた。


 その笑顔はとっても可愛い。



 結果オーライだ。 

 報復は本当、わりと本気だったんだけど。



「それなら、雨宮さんはどうしたい?」

「私、私は……」



 雨宮さんが迷うように、天然物であるパッチリ上向きな睫毛を揺らす。


 もともとの控え目な性格に、我慢しがちな長女気質。

 加えてたった今聞かされた過去のトラウマから、自信を失くしている彼女が『どうしたいか』なんて自ら意思表示をするのは、けっこう難しいことなんじゃないかな。


 そう簡単にきっと、口にできることではない。


 でも俺はだからこそ、雨宮さんの意思をここでハッキリ聞いてみたかった。



 やがて意を決したように、雨宮さんは俺の手をぎゅっと握り返す。



「私はーー変わりたい」



 震え声ながらもはっきりと告げられた意思に、可愛いけど強い眼差し。

 握る手に力が込められる。


「もう、見えないものに怯えたくない。しっかり顔を上げて歩きたい。過去にも怖がりたくないの。……晴間くんの隣に、自信を持って立てる私になりたい」


 まさか俺の名前が出てくるとは思わなかったが、それも相まって俺の心臓はぎゅうううと絞られた。

 熱い血潮が体内を巡る。

 オマケに「晴間くんは、こんな願望でも後押ししてくれる……?」と、おずおず聞いてくるので、そろそろ心臓が弾け飛びそうだ。



 問いの答えはイエスに決まっている。



「もちろん! 全面的に応援させてくれ! 大丈夫だ、雨宮さんはこの元世界一可愛いhikariが認めた子なんだから、いくらだって変われる! 変わらなくても可愛いのにもっともっともっと可愛くなれる! 俺の代わりに世界どころか宇宙も獲れる! ミスユニバースどころかミススペース! そうだな、まずは手始めに……」

「あ、あの、晴間くん! ちょっと近い、かも……」

「ん?」


 変わりたいと宣言したときと、打って変わって蚊の鳴くような弱々しい声。


 そこで俺は、興奮して雨宮さんにぐいぐいと迫り、無意識に顔と顔の距離を縮めていることに気付いた。

 ふたりきりの室内。

 しかも手は固く握り合ったまま。



 ーーこれはマズイ。

 だけど俺も雨宮さんも、自覚したその至近距離に、お互い顔を赤らめて硬直してしまっている。



 一ミリも動けない。下手に動いたら、本当に雨宮さんと……な、なんかいろいろ、くっついてしまいかねない。



「う、あ、えっと」

「あ、あのね、晴間くん……」



 それでもどうにかこうにか口だけ動かし、二人同時になにかを言おうとしたときだった。



 ピーヒョロロロロと、高らかに鳴り響く間抜けな音。



「な、なんだ、敵襲か!?」



 次いでバンッとドアが勢いよく開いたかと思ったら、ホイッスル代わりなのかリコーダーに口を当てた澪ちゃんと、即席で作ったらしいレッドカード(というかあれだ、英単語とかを覚えるときに赤字を消せるあの赤シートだ)を掲げた霞ちゃんが、ポニーテール&ツインテールを靡かせて仁王立ちしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【お知らせ】
GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[一言] 冷静に考えてみたんだけどさ、これもしや長編ではない……?いつくっついてゴールインしてもおかしくないふいんき()が漂ってあるのじゃが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ