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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
二章

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7.5 雨宮さんの自覚②

 


 ーー恋。



 そのたった一文字の単語は、私の中にストンと綺麗に落ちた。


 そっか、そうなんだ。

 私は晴間くんに恋をしているのか。


 だから晴間くんとお友達になれたとき、とってもとっても嬉しかったのに、同時にちょっと物足りなく感じちゃったのか。



 無意識に、雫型のピンに触れる。

 いつから私は晴間くんに恋をしていたのだろう。



 このピンをくれたときから?

 私なんかのことを『可愛い』って言ってくれたときから?

 公園で助けてくれた憧れのhikariさんが、晴間くんだってわかったときから?

 それとも、いつも掃除を手伝ってくれている人が、晴間くんだってどこかで気付いていたときから?



 わからないけど……。

 私はきっと、たぶん、絶対に、晴間くんが恋愛的な意味で、好き。



「う、ううううう」



 自覚した途端、耳から手足の先まで赤くなって、唸り声をあげながら私はベンチの上で縮こまった。

 このままもっともっと小さくなって、泡みたいに消えちゃいたい。


 そんな私に雷架さんは「ありゃ、茹でダコみたい。タコ焼きたべたいね」なんて呑気なコメントをしている。



「ーーあっ、ハレくん!」

「えっ!」



 心臓がドキン! と痛いくらいに脈打つ。

 もう晴間くんが戻ってきたのか。


 いま彼に会ったら、どんな顔をすればいいかわからないよ……!


 だけどいっこうに晴間くんは現れなくて、私は「あれ?」と首を傾げる。


「えへっ、嘘でしたー!」

「う、嘘?」

「ごめんね、アマミンの反応があんまり可愛かったから、イタズラ心でついつい」

「も、もうっ、雷架さんっ!」

「ごめんってー!」


 私が熱の引かない顔で抗議すれば、雷架さんは一房結んだ髪をピョンッと跳ねさせ、手の平を合わせて謝ってくる。


 心臓に悪すぎるよ!


「でもなあ、さっきの瞬間惜しかったなあ! シャッター切っとけばよかった!」

「さっきの瞬間? というと……」

「ハレくんが来たって聞いたときの、アマミンの一瞬の表情とか仕草! まさに私の理想通り! 最高のシャッターチャンスだったのにぃ」


 なでなでと、ピカリさんを撫でる雷架さん。


 さっきの私がシャッターチャンスだったなら、撮られるときに晴間くんのことを考えていれば、上手くいくってことかな……。

 それってスッゴく恥ずかしいけど、ちょっとだけ撮影成功の希望が見えてくる。


「まあ、それよりも」


 雷架さんはニヤリと口角を上げる。


「アマミンはあ、ハレくんに告白とかしないの?」

「こっ……! し、しないし、出来ないよっ! そんなの!」

「えー、なんでなんで? お付き合いしたいとかないのー?」 

「なんでって……晴間くんは優しいから私のことを構ってくれているだけで、別になんとも思ってないだろうし……フラれちゃって、気まずくなったらイヤ、だから」


 自分で喋りながらどんどん落ち込んでしまう。

 でも晴間くんの優しさを、私が勘違いしちゃダメだと思うんだ、うん。


 あんな優しくてカッコよくて、hikariさんになったら可愛い晴間くんに、自分が並べるとは思わない。


 それに今みたいに……友達として一緒にいられるだけでも、私は嬉しいから。


 だけど私の回答に、雷架さんは不満そうだ。


「ううーん? そんなことないと思うけどなあ。ハレくんだってアマミンのこと、きっと好きなのに」

「それは、えっと、それこそ友達として想ってくれているっていう、友愛の範囲で……」

「じゃあもっとハレくんが好きになってくれるように、アマミンからアピールしようよ! アマミンだって、ハレくんにもっともっともっと、好きになって欲しいでしょ?」


 しばし悩んだが、それに私は小さくコクンと頷いた。



 『私をもっと好きになって欲しい』

 それは本心だったから。



 告白なんて到底出来ないし、お、お付き合いなんて夢のまた夢だけど……今より少し、距離を縮めたいって思うくらいなら、許されるよね?


「ごめんなさい、雷架さん……私、恋なんて初めてで……。こういうときどうやってアピール? すればいいかもわからないんです……。お、教えて、くれる?」

「アマミン……!」

「わっ!」


 恥を忍んで頼んでみれば、雷架さんがいきなり『むぎゅっ!』と抱き着いてきた。

 椅子に立てかけてあった傘が、地面にポトリと転がる。水滴はもうだいぶ乾いたようだ。


「なになになに、初恋なの? しかもなにその頼み、超可愛いね! アマミン可愛い! もちろん教えるし、いくらでも協力するよ! 私とアマミンはもうお友達だもん!」

「お、お友達……」



 クラスで目立たない地味な私が、学校中から人気者な雷架さんの友達になってもいいのかな。

 でも、嬉しい。



「ありがとう、雷架さん」

「今さら思ったんだけど、友達なのにその呼び方は寂しいかも! 小夏って呼んでよ、アマミン!」

「こ、小夏ちゃん……?」

「うん!」


 おそるおそる呼んでみたら、小夏ちゃんは私なんかよりも、余程可愛らしく笑ってくれた。


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[良い点] あー雷架さん可愛いくて良い子だね [一言] シャッターチャンスだ! って何だったかな。フォトカノ?
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