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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
二章

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7.5 雨宮さんの自覚①

「アマミン、こっちこっち! ここで座って、ハレくんを待っていよ!」


 晴間くんが飲み物を買いに行ってくれたあと、私と雷架さんは、さっきまで晴間くんが座っていた屋根付きのベンチに移動した。

 ここなら晴間くんが戻ってきたらすぐわかる。


 濡れた傘をたたんで、雷架さんと並んで腰掛けた。傘から雨粒がポツリと落ちる。



 染みの出来たアスファルトを見つめながら……私の頭の中は、自己嫌悪でいっぱいだ。



 カメラを向けられると、どうしても体が強張ってしまう。笑顔だって上手く作れないし、動きだってぎこちなくなっちゃう。

 私のせいで何度撮り直しになったんだろう。


 雷架さんは部活を守るために、シチュエーションまですごく考えて頑張っているし、こんな私を見限らずに励ましてくれている。

 だけど肝心の私がダメダメだ。

 このままずっといい写真が撮れなくて、雷架さんの部が潰れたらどうしよう。



 晴間くんも、私にせっかく期待してくれたのに……。


 じわっと、目に涙が浮かぶ。


 すぐネガティブになるのは悪い癖だとはわかっていても、鬱々としてきて俯いていたら、雷架さんが「アマミーン! そんな暗い顔していたら、せっかくの可愛さが台無しだよ!」と、隙間を埋めるように体をくっつけてきた。



「アマミンはやっぱりもっと自分に自信を持つべき! まずは笑おうよ! ほら、『笑う犬には福来る』って言うじゃん? スマイル、スマイル!」

「えっと、もしかして『笑う門には福来る』かな……?」

「あれ? そうだっけ? 犬は笑わないか! 棒にぶつかる方? ポメラニアンは可愛いよね!」


 ど、どこから犬が出てきたんだろう……。

 他のことわざと混ざったのかな?


 『雷架の思考回路は時々ぶっ飛ぶ』って晴間くんも言っていたけど、いきなりのポメラニアン発言には私も驚いた。


 底抜けに明るい雷架さんは、じめじめした空気なんてかき消すような、カラッとした笑顔を向けてくる。


「ハレくんも言っていたみたいに、気分転換が大事だよん! 今みたいにさ、なんか楽しい話をしようよ!」

「楽しい話……」


 こ、ここは私が、話題提供をすべきだよねっ?

 楽しい話、楽しい話、楽しい話……。


「ス、スーパーのお野菜売り場で、新鮮な野菜を見極める方法とか……!」

「えっ! アマミンの『楽しい話』って、『スーパーの野菜売り場で新鮮な野菜を見極める方法』なの? ヤバい、アマミンめっちゃ面白いね!」

「そ、そうかな……?」

「うん!」


 ほ、褒められたんだよね……。

 同級生の女の子とこんなふうに自然に話すことなんて、ほぼなかったから焦っていたけど、雷架さんは話しやすいから安心する。



 だけどその安心も、次の瞬間に吹っ飛んでしまった。



「お野菜の選び方はまた今度聞くとしてさ! ズバリーーアマミンって、ハレくんのこと好きなの?」

「へあっ!?」



 なんだかバカみたいな声が出てしまった。


 スキ?

 スキってえっと、『好き』ってことだよね?

 好きはあの好きだから、つまり好きが好きで……。


「ちなみに私は、ハレくんのこと好きだよー」

「えっ」

「いいヤツだよね、ハレくん。私が写真部って言うとさ、だいたいみんな『今からでも運動部に集中した方が……』みたいなこと、友達ですらぼかして伝えてくるのに、ハレくんはそんなことは一切なくって。好きならやれば? みたいな感じで。人に対しての『きょよーはんい』? 広い感じ」


『きょよーはんい』は『許容範囲』かな。

 それはわかる気がする。

 晴間くんは自分が女装とか自信を持ってしているからかな、人への受け入れ方の度量が大きいよね。そこは晴間くんのたくさんある人間的魅力のひとつだと思う。



 でも……なんでだろう。

 雷架さんが晴間くんのいいところをわかっていてくれて、それが嬉しい気持ち半分、なんだかモヤモヤする気持ちが半分だ。



「だから、私はハレくんが好き! お友だちになれてよかったよ!」

「友達……」


 今度は『友達』と聞いてホッとする。

 そんな自分に首を傾げてしまう。


「アマミンは? アマミンはハレくんのこと好きだよね。というか、ぶっちゃけ友達以上の好きでしょう?」

「友達以上……?」

「あれ? もしかして『むじかく』ってやつ?」



 パチッと、雷架さんは瞬きをひとつ。



「私は見ていてすぐわかったけどなあ、アマミンのハレくんに向ける気持ちってさ、要はラブの方の好きでしょ?」

「ラブ……ラブっていうと、ええっと」

「もう、アマミンたら私より賢いのに、こういうのはダメダメなんだね! 仕方ないから雷架さんが教えてあげる! こう言った方がわかりやすいかな? アマミンは……ハレくんに『恋』、しちゃっているんじゃない?」    


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[一言] こーいーしちゃったんだーたぶんー気付いてなーいけどー。
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