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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
二章

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6 撮影当日。

 写真モデルOKの件を、交換した雷架の連絡先にさっそく送れば、返事は速攻できた。



『マジマジ?

 やったー!

 これで勝ったよ! コンテスト勝った! 完全勝利!

 ハレくんやっるねー! 最高!

 撮影は次の日曜日とかどう???

 お知り合いちゃんにもよろしくー!』



 テンション高めの文面に苦笑しつつ、雨宮さんとの予定調整も行い、無事に撮影日は今週末の日曜日に決定。



 だがここで、ひとつ大きな問題が浮上する。



 それは『スイーツ店にいたあの子』の正体が、実はクラスメイトの雨宮さんであることを雷架に明かすかどうかだ。


 ここは雨宮さん次第かなと思うのだが、本人もお悩みだった。


 クラスメイトという身近な存在に、できれば正体を知られたくないという気持ちもわかる。だが下手に別人を装っても、雷架を騙すことにならないかと葛藤していた。


 騙す騙さないで言ったら、俺なんて日本どころか世界規模で人を騙しているので(hikariは外国人ファンも多いのだ)、そう気にすることでもないのだが、雨宮さんは真面目だからな。



 ふたりでメッセージであれこれ協議した結果……ひとまずは『別人』として雷架と対面し、そのあとで明かすか明かさないか判断する、という行き当たりばったりな方向性になった。


 なった、のだが……。





「あれ? あれあれあれあれれ~?」


 日曜日のロケ地は、いつぞやの自然公園。

 空模様はあいにくの雨だが、それは雷架があえて『雨の日』を指定したそうなのでいいとして。


 前回と同様、雨宮さんを変身させて連れていき、公園の入り口前でいざご対面……といったところで、雷架が「はじめまして」の挨拶の前に、雨宮さんに首を傾げながらジリジリと迫った。



「スイーツ店で見たときはわからなかったけど、クラスメイトの子にめっちゃ似てる? というか本人? 『雨宮さん』だよね?」

「う、うえっ!?」



 傘を差していなかったら、確実に体がくっついていただろう至近距離で雨宮さんの顔を覗き込み、まさかの初対面一発で見抜いてきた雷架。

 雨宮さんも奇声を挙げているが、俺も「マジかよ」と驚きを隠せない。


 俺は別に、雨宮さんの変身に手を抜いたわけでは一切ない。



 髪型やメイク、眼鏡は前と同じ、ゆるふわ系の三つ編みに、素材を活かしたナチュラルメイク。ボストン型の伊達眼鏡。

 さすがに多忙なココロさんの手は今回加わっていないが、それでも出来映えは悪くないと自負している。  


 前髪の雫型のピンは、前の黒ピンと違うところかな?


 服はまたワンピースだと面白味がないし、雷架のためにスイーツ店のときとイメージは変えないよう気を付けながらも、別のアイテムでコーデを組んだ。


 トップスはシンプルな白ニット。

 下は水色のフィッシュテールスカートにした。水溜まりで濡れないよう考慮して、丈はロングではなくミディ。


 フィッシュテールスカートとは、前側よりも後ろ側の丈が長くなっているスカートで、魚の尾のようなシルエットから『フィッシュ』なんて名前が付いている。アシンメトリーなデザインが、全体のシルエットを可愛らしく見せるアイテムだ。

 くるりと回ると、まさしく魚の尾ヒレように翻る。

 その可憐さたるや……。



 もとから可愛い雨宮さんが今日も可愛い。



 そんな現実逃避をしかけていたが、雷架に「雨宮さんだよね? ねえねえねえ?」としつこく聞かれ、雨宮さんが目線で『どうしよう、晴間くん……!』とSOSを飛ばしてきた。


 ……バレたものは仕方ないな。



「雷架、お前はとりあえず離れろ。その通りで、その子は俺らのクラスメイトの雨宮さんだ」

「やっぱり!」


 パッと、赤い傘を揺らして離れる雷架。


 彼女の私服姿も初めてみたが、英字入りのTシャツにショートパンツというラフな出立ちながら、明るくスポーティーな雰囲気の彼女にはよく似合っている。

 ショートパンツから惜しみなく晒される足は、スラリと伸びていてしなやかで、美空姉さんなら「我が社の新作ミニスカートをぜひ穿かせたい!」と鼻息を荒くしそうだ。


 さすが、うちの学校の三大美少女のひとりだな。


「それで、雷架はなんで雨宮さんだってわかったんだ? クラスにいるときの雨宮さんとは、けっこう違うと思うんだが……」

「言ったじゃん? クラスメイトの顔は間違えないって! スイーツ店の時はパッと見てビビビッー! だったから判別できなかったけど、これだけ近くで見たらわかるよ!」


 雷架は本当に、アホの子であることは確かなのに侮れない奴だ。


 まだ戸惑っている雨宮さんに、雷架は今度はちゃんと距離を開けて、それでも遠慮のない熱視線を送る。


「雨宮さん、こんなに可愛いなら、学校でもこの感じで登校してくればいいのに! あの分厚い眼鏡外すだけで相当変わるよー? というかこの伊達眼鏡も、私は外した方がいいと思う!」

「ご、ごめんなさい、眼鏡は、あのっ」

「雷架、人にはいろいろ事情があるんだ。詮索はなしな」


 俺が間に入って窘めれば、雷架は「それもそうだね! ごめんね!」と秒で引き下がる。

 言動はデリカシーなどあまりなさそうなのに、他人の踏み込んで欲しくないところはちゃんと守るから、雷架はたくさんの人から好かれるのだろう。



 だが……かくいう俺も、雨宮さんが顔を晒すのを厭う、明確な理由は知らないんだよな。



 単に恥ずかしいとか、自分の顔に自信がないとかだと考えていたんだが、根深いなにかがありそうで……もちろん、本人に聞くなんてことはしないけども。


 メイクするときに、俺もココロさんも普通に素顔は見ているが、普通に世界一可愛かったぞ。


 おそらく雨宮さん的に、信頼できる個人に見せるならまだ大丈夫。 

 対して、不特定多数に見せるのは怖い……といったところか。



 いつか雨宮さんが、そんな憂いをぶっ飛ばしてくれたら俺は喜ばしい。



「細かいことはもういいや! モデルになってくれるだけで私はハッピー! ということで、そろそろ撮影を開始しまーす!」



 しとしと振る雨音にも負けない、雷架の元気な宣言で、雨宮さんの撮影は始まったのだった。


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【お知らせ】
GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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