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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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32 男子組だけになりました

「わ、私も晴間くんと『あーん』とか、しぇ、しぇあはぴとか……って、ああっ! どっちも同じもの食べているんだった!」


 俺より危機感を抱いたのか、雨宮さんが頑張ろうとして自爆している。

 うん、同じ一杯の酸辣湯麺を分け合っているからな。シェアハピ自体もうしているし、ラーメンの『あーん』はちょっと辛い熱い。


 まあ細かいことはいい、雨宮さんが可愛いから。


「平和だなあ……でも会長、戻り遅いね」

「ですね、食べ終わっちゃいますよ」


 クレープをちまちま齧る薄井先輩の言葉に、俺もさすがに遅すぎるなと心配になって来る。なにか不測の事態でも起きたのだろうか。


「会長さん……トラブルがあったのかな? hayateさん関係で、とか?」

「うーん、そっち関係かもな」


 会長のもうひとつの顔を知るのは、この場では俺と雨宮さんのみだ。 

 コソコソ話す雨宮さんに、俺もその可能性を考慮する。


「こんなによくしてもらっているし……もう私たちは、生徒会のメンバーだもん。手伝えることがあれば手伝えたらいいんだけどな」


 そう憂う雨宮さんの優しいことよ。

 俺のカノジョって天使なんですよ、マジで。


「とにかく早く戻って来るといいな」

「うん……」


 そんな俺たちの想いも虚しく、雷架が最後のウィンナーカレーのウィンナーを食べ切っても、会長は不在のままだった。


 暇を持て余した雷架が、雨宮さんの腕を取る。


「このまま待っていても勿体ないし、アマミンもウォータースライダー行こうよ! ヒバリンはもう付き合ってくれそうにないし!」 

「絶対にお断りです」

「い、行きたいけど、会長さんを待っていなくていいのかな?」


 ぴしゃりと断る雲雀に対し、雨宮さんは遠慮がちだ。


「俺たちはここにいるし、雨宮さんは行ってきなよ」


 俺はすかさず、雨宮さんの背を押す。


「でも……」

「そうだよ、アマミン! 早くレッツビー!」


 レッツゴーと言いたいだろう雷架が、立ち上がって雨宮さんの腕を引く。

 あれだけカレーを食べてもへそチラしているお腹に変化がないのは、全ダイエット女子の敵とも言えるな。


「じゃ、じゃあ! 行ってくるね!」


 小さく手を振って、雨宮さんは雷架と共にウォータースライダーへと向かった。

 年中お祭りみたいな奴がいなくなって、途端に場は静かになる。飲み干したクリームソーダのグラスを端に避けつつ、雲雀はふう……と嘆息した。


「雷架先輩に絡まれないと、心穏やかで助かります」

「また憎まれ口を……雲雀は雷架のこと、実はけっこう尊敬しているだろ」

「は、はあっ⁉」


 声が裏返ったのは図星か。

 あの雷架の別け隔てないコミュ力や底抜けの明るさを、雲雀は自分にないものとしてリスペクトしていそうだなと。


「馬鹿なことおっしゃらないでください。晴間先輩の脳はフナムシ以下ですか!」

「久々にそこまでの罵倒聞いたな……」


 雲雀の毒舌は初対面時が最高潮だったが、ここに来てフナムシとは。このくらいで傷付くメンタルは、世界一可愛いと称される俺にはないけどな!


「……あ、あの!」


 そこで見知らぬ女の子三人が、俺たちの席にやって来た。

 同年代くらいのその子たちは、全身を緊張で強張らせている。


 全員がピンク色のフリルやリボンがついた水着姿で、なんというか雲雀と同系統であると俺は瞬時に察した。


 案の定、真ん中の三つ編みの女の子が「積乱雲さんですよね⁉」と雲雀に熱い眼差しを向ける。『積乱雲』はロリィタ時の雲雀の活動ネームだ。


「そうですが……」

「きゃー! 本物だった!」

「私たち、『ロリィタファッション愛好会』っていうネットで集まった仲間で!」

「普段はロリィタガールの集会やっていて、積乱雲さんの大ファンなんですー!」 


 黄色い声をあげる彼女たちは、『Candy in the Candy・PINK!』の店の常連さんでもあるという。


「積乱雲さん、PINK!でバイトされているんですよね? 私たち、タイミングが悪くてなかなかお会い出来なくて……こんなところで会えるなんてラッキーです! 水着もロリィタ愛を詰め込んでいて素敵です!」

「あ、ありがとう……」


 三人分の熱量に、雲雀はたじたじだ。

 だけど口元をむずむずさせていて、満更でもなさそうである。


「お連れさんもいるところにすみませんが……よかったら、ご一緒に写真とか! オススメのロリィタファッションについても少し教えて頂けたら……!」

「……私は構わないけど」


 チラッと俺の方を伺う雲雀に、行って来い!とオーケーサインを返す。


 周囲に抑圧されてロリィタ趣味を隠して来た雲雀が、こうしてやっとオープンに同士と交流出来ているのだ。


 会長を待つ役目は俺と薄井先輩がいれば十分だし、ファンは大事にしなきゃな!


「では……場所を変えましょうか」


 照れ臭そうに立ち上がった雲雀に、女の子たち三人は嬉々としてお礼を述べる。

 別のエリアへと移る華やかな背たちを見送って、俺はふうと一息つく。


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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