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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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31 フードコートで皆でご飯

 少し2人でプールで遊んでいたら、雨宮さんの顔色も良くなっていた。彼女は泳いで少し疲れが出ただけだと笑うが……。

 もう一度 フードコートに戻れば、人の数は増えているものの虹色も男女の集団もいなかった。


 雨宮さんがホッと息を吐いていた気がする。


「――アマミン! ハレくん! こっちこっちー!」


 先に来ていた雷架がブンブンと手を振る。

 白い丸テーブルをふたつくっつけて、席を確保してくれていたらしい。


 雷架の隣には雲雀もいて、こちらは湿った髪を背に張り付けてグッタリしている。

 し、死んでる……。


「雲雀はどうしたんだよ?」

「どうもこうもありませんよ!」


 俺がおそるおそる理由を問えば、ウォータースライダー巡りで雷架に散々振り回されたのだそう。


「この人、体力がバケモノ過ぎるんです……! 普通は一周すれば終わりなところ、二周、三周、四周と!」

「雷架ちゃんはまだまだ滑れるよん! 一回転するやつが一番好き!」

「もう私はお断りですから」


 ツンツン怒りながらも、すべて雷架と滑り切ったらしい雲雀も付き合いがいい。俺なら途中でギブアップだ。


「あ、もうみんな来ていたんだね」


 次にのほほんと現れたのは薄井先輩で、雲雀とは逆に肌の血色が良くなって活き活きとしていた。『リラックス島』で回復したようだ。


 あとは意味深にいなくなった、会長だけだが……。


「会長とはついさっき、ここに来る途中で会ったんだ。まだ集合場所には行けそうにないからって、これを預かって……」


 薄井先輩が手に隠していたのは、ここにいる人数分のリストバンドだった。


 細いシリコン製のそれらには、白地に赤で『関係者用フリーパス』と印字されている。売店の人にこれを購入時に見せれば、すべて無料で食べ放題だという。


 なんと有難い。

 会長の権力の集合体みたいなバンドに、雨宮さんが「そ、そんなVIP待遇でいいのかな?」とアワアワしている。


「実際にVIP待遇だし、いいんじゃないか? 素直に受け取っておこうぜ」


 雨宮さんが下手に遠慮し過ぎないようにフォローしていると、『遠慮』の字も知らなさそうな(比喩でもなんでもなく漢字も書けない気がする)雷架が一気に沸き立つ。


「やったー! じゃあカレー、何杯でもおかわり出来るね!」

「雷架はカレー好きなのか?」

「一ヶ月毎日カレーでも生きられるよ!」


 それはさすがに飽きるだろう。


 俺はそう思ったのだが、雨宮さんと雲雀は「わかるよ、小夏ちゃん! 私もどら焼きなら一年中でも食べられるもん!」「クリームソーダなら一日三杯いけますね」とうんうん同意している。


 偏愛する食べ物があるって、幸せなことなのかな……いっぱい食べる女の子は可愛いからいいか。


「カレーとクリームソーダって合うかなあ? セットで食べてみよっかな!」

「小夏ちゃん、カレー味のどら焼きも近所のお店にあるよ」

「そのどら焼きは私も気になるのですが……」


 好物談義で盛り上がる女子三人。


 みんなと合流してから、わかりやすく雨宮さんが明るさを取り戻している。雷架や雲雀とは本当にいい友達になれたようでよかった。


 リストバンドをしっかり身に着けて、俺たちは売店に注文しに行く。

 雷架は真っ先にレジに走り、甘口カレー、カツカレー、激辛カレー、ウィンナーカレー、温玉カレー……って!


「どんだけ頼むんだお前はっ⁉ あとカレーの種類豊富だな⁉」

「私はけっこう大食いなんだよ? 泳いでショーヒするからいいの!」


 運動量ですべて消費するタイプか。

 それで健康的なスタイルを維持しているのだから、めちゃくちゃな奴である。


 異様にカレーの種類が多いのは、カレーフェア的なやつだとか。


「私は今、ガッツリしたものを食べたら吐きそうです……『真夏の奇跡♡弾けるメロンクリームソーダ』だけ三つお願いします」

「雲雀も雲雀で三杯は凄いけどな……」


 ウォータースライダーで酔った口元を押さえながらも、雲雀はそこだけは譲らなかった。


 今やロリィタ界のカリスマとなった雲雀の好物ということで、密かにロリィタちゃんの間でクリームソーダが流行っているとか。もともとレトロ喫茶ブームとかで人気とはいえさすがだ。 


 カリスマはそうやって流行を作ってしまうんだよな。hikariが身に着けたものは即売れするのと同じ理論である。

 そう、俺こそが『可愛い』のインフルエンサーだ!


「僕はそうだなあ……。hikariちゃんがちょっと前に出ていたWEBのCMで、苺クレープを齧っていたんだよね。同じものを食べて少しでもhikariちゃんを感じたいし、クレープにしようかな……」 


 ふふふ……とほくそ笑む薄井先輩。

 どんどんストーカー度が増していっているぞ……? 


 チョイスの理由がほんのり怖くて、深くは聞けませんでした。


 オプションで苺クレープを持つよう、美空姉さんの指示があった時だよなたぶん。可愛い女の子(女装男子)と可愛い食べ物の組み合わせはウケが良いとかなんとかで……まあウケたはウケた。


 hikariはイカ焼き持ってもスルメ持っても可愛いけどな?


 みんなが注文を終えて席に戻っていった後で、雨宮さんはどうするのか尋ねると、酸辣湯麺にするという。俺もそれでいいかな。


「晴間くんと一緒にシェアしてもいいかな……? 一杯は食べられそうになくて」

「おお、もちろん」


 プールで一杯の酸辣湯麺を分け合う、シュールな光景だが俺もそこまでお腹が空いているわけではないのでちょうどいいかもしれない。


 それから全員の注文分が揃うまでは早く、ふたつのテーブルの上はずいぶんと賑やかになった。ひとつ分はぶっちゃけ雷架のカレーで埋まっている。


「どのカレーもおいしいー!」


 ニコニコ満面の笑みで、種類も量も大量なカレーを爆食いする雷架。

 隣の雲雀が念願のクリームソーダを飲みながら「こっちが胸焼けしそうです」とげんなりしている。


「ヒバリンも甘口の食べる? いーんして、いーん」

「『いーん』ではなく『あーん』でしょう。『い』の口じゃ食べられません、別にいりませんが……」

「それもそっか! 『あーん』して、ヒバリン!」

「だからいりませんって!」

「じゃあクリームソーダをシェアハピして!」

「ちょっと! 勝手に飲まないでください!」


 パクッと横からクリームソーダのストローを咥える雷架に対抗し、雲雀がジタバタ身を引こうとしている。

 なんかあの二人、俺と雨宮さんよりイチャついてないか?


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【お知らせ】
GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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