第97話:パレッサ王国に着きました
「見て、アリー。あれがパレッサ王国なのね。なんて綺麗な国なのかしら?建物全体が白を基調にしているのね。なんて素敵なのかしら?」
「お嬢様、身を乗り出すのはお止めください。落ちたらどうするのですか?」
「ごめんなさい、あまりにも綺麗な国だから、ちょっと興奮してしまって。この国で私はこれから暮らすのね。なんだかワクワクしてきたわ」
国を出てから1ヶ月、やっと目的地でもあるパレッサ王国に着いたのだ。パレッサ王国は、海に囲まれた小さな国。我が公爵家保有の領地と同じくらいの面積だと聞いている。
小さな国だけあり、王族や貴族、平民との距離が比較的近いとの事。
「お嬢様はこの国では暮らせませんよ。旦那様から用事を済ませたら、すぐに帰国する様言われているでしょう?」
そういえばそうだったわね。グレイソン様が私と話をしたいと言っていると。きっと私が国に戻ったら、グレイソン様は公爵家を出ていくだろう。グレイソン様には、どうか公爵令息として、これからも生きていって欲しい。
私の我が儘だと言う事は分かっているが、散々苦労したグレイソン様には、何不自由ない生活を送って欲しいのだ。
だから私は、国に戻るつもりはない。
ふと港を見ると、叔母様の姿が。隣にいるのはきっと、この国の国王陛下ね。近くには2人の子供たちの姿も。
きっと私を迎えに来てくれたのだわ。
港に着くと、急いで船から降りた。
「叔母様!」
「ルージュ、よく来たわね。随分と大きくなって!」
すぐに私元に駆け寄り、叔母様が抱きしめてくれた。私もギュッと抱きしめる。10年ぶりに会った叔母様は、あの頃と変わらず美しい。懐かしくて、つい笑みがこぼれる。
「ルージュ嬢、よく来てくれたね。さあ、疲れただろう。宮殿に戻ろう」
「パレッサ王国の国王陛下ですね。お久しぶりですわ。それから…」
「こっちが息子のデイズよ、今9歳なの。それから娘のアン、7歳なの。私と陛下の子供よ」
「デイズ殿下にアン殿下ね。初めまして、私はルージュ・ヴァレスティナよ。アラカル王国から来の。どうか仲良くしてね」
2人に挨拶をした。すると…
「銀色の髪をしているのですね。なんて綺麗なのでしょう…」
「本当ですわ、月の女神様みたい。ルージュお姉様は、私たちの従姉弟だとお母様から聞きました。アラカル王国には、銀色の髪をした人が他にもたくさんいるのですか?」
「アラカル王国でも、銀色の髪は珍しいのよ。さあ、話しは王宮でしましょう。ルージュ、疲れたでしょう。王宮に向かいましょう」
叔母様たちと一緒に、馬車に乗り込んだ。1度目の生の時は、叔母様が嫁いだ後、1度も会う事はなかった。でも、今回の生でこんな風にパレッサ王国を訪問できるだなんて。なんだか嬉しいわ。
「叔母様、この国は本当に美しい国ですね。建物自体が白を基調にしていて、空と海の青がより引き立って見えますわ。まさに国自体が、芸術品ですわね」
「そうでしょう?この国は本当に美しい国なのよ。明日にでも街を案内するわね。そうだわ、この国では海の中を見る事も出来るの。潜水艦というものがあってね。海の中はとても綺麗なのよ」
「そんな凄いものがあるのですか?ぜひ海の中を見てみたいです」
話を聞いているだけで、ワクワクしてきた。
「ルージュ、あれが王宮よ。どう?素敵でしょう?」
目の前に現れた大きな宮殿。こちらも白を基調とした、とても素敵な宮殿だ。
宮殿に着くと、沢山の使用人が迎えてくれ、早速部屋に案内された。
「宮殿の中は明日案内するから、夕食までゆっくりしていなさい。ルージュ、お兄様が色々と言っている様だけれど、ルージュは好きなだけここにいたらいいのだからね。私はルージュの味方だから」
そう言って私を抱きしめてくれた叔母様。
「ありがとうございます、そうさせてもらえると嬉しいですわ。私はもう、母国には帰るつもりはありませんから…」
「可哀そうに…とにかく今は、ゆっくり過ごして。長旅で疲れているでしょうから」
そう言うと、叔母様は部屋から出て行った。それにしても、おしゃれな部屋だわ。近くでアリー達メイドが、私の洋服などを次々と片づけてくれている。
「お嬢様、夕食までに湯あみを済ませてしまいましょう」
「ええ、そうね」
早速湯あみを済ませ、ドレスに着替えた。ふと窓の外を見ると、目の前には海も広がっている。本当に素敵な国ね。
「お嬢様、そろそろ夕食のお時間だそうです。食堂に参りましょう」
王宮の使用人に案内され、立派な食堂に案内された。そして次々と美味しそうなお料理が出てくる。それも見た事のない料理が沢山あるのだ。
「ルージュ、これはムール貝と言う貝なのよ。とても美味しいから、食べてみて」
ムール貝か。初めて見る貝ね。早速頂いてみる。
「この貝、とても美味しいですわ。それに身も大きいのですね」
「そうでしょう。こっちはムール貝を使ったパスタよ。アラカル王国には、パスタ自体がないのよね」
目の前には細長いものが沢山絡まった食べ物が。これがパスタというものなのね。早速1口。
「この細長いものが、ソースと絡んでとても美味しいです。それにこの細長いもの自体も、モチモチしていますし。こんな美味しいお料理があるだなんて!」
「それは良かったわ。このパスタと呼ばれる麺は、乾燥させることで、長時間保存も出来るのよ。凄いでしょう。今他国に売り出し始めているの。他国でも徐々に人気が出てきているのよ」
「まあ、そうなのですね。友人達にも食べさせてあげたい。そうだわ、このパスタ、お土産に…いえ、何でもありません」
もう二度と国には帰らないと決めたのに、私ったら。
その後も初めて食べるパレッサ王国のお料理を、美味しく頂いたのだった。




