第93話：ルージュはいつ帰ってくるのだ？～グレイソン視点～

　僕の話を真剣に聞いてくれた義両親。

「それじゃあ、グレイソンは私達やルージュの為に、この家を出ようとしたのかい？どうしてすぐに、私たちに相談してくれなかったのだい？」

「申し訳ございません。僕が１人暴走したせいで、義両親だけでなく、ルージュにも多大な迷惑をかけてしまった事、本当に申し訳なく思っております」

「どんな理由でグレイソンがそう思ったのかは知らないが、私たちはどんなことがあっても、グレイソンがいない方がいいなんて事はない！たとえ君が、大きな犯罪を犯したとしてもだ。だからどうか、もう二度と自分がいなくなればいいだなんて、考えないで欲しい。いいね」

「義父上…はい、もう二度とそんな事は考えません。本当にごめんなさい。それで、ルージュはすぐに帰って来てくれるのですねよ？ルージュにもちゃんと謝罪したいのです。そして、もし可能であれば、ルージュにきちんと僕の気持ちを伝えたいのです！」

「ああ…そうだな…ただ、ルージュはすぐには帰ってこられないかもしれない」

　なぜか義父上が、スッと目をそらしたのだ。

「すぐに帰ってこられないとは、一体どういう意味ですか？」

「いや…その…とりあえず、ルージュにはすぐに帰って来るように伝えておくから。とにかくグレイソンは、何も心配しなくていい。グレイソン、今日は本当の事を話してくれてありがとう。さあ、晩御飯にしよう。お腹が空いただろう？」

「あの…ルージュは…」

「ルージュの件は心配しなくていい。いつでも連絡を取れるようにしてあるから。昨日も連絡を取ったが、とても元気そうだったよ。さあ、晩御飯にしよう」

　義理父上に促され、一緒に夕食を食べた。早くまた４人で食事が出来るといいな。でも、ルージュは許してくれるだろうか？

　“どうか笑顔を絶やさず、幸せになってください”

　最後のルージュの言葉を思い出す。弱気になってどうするんだ？ルージュの願いを、せめて叶えないと。

　ルージュが帰ってくるまでは、ずっと笑顔でいよう。それにまだルージュがこの家を出て、２日しか経っていない。きっとすぐに帰って来てくれるはずだ。

　そう思っていたのだが…

「義父上、ルージュはいつ帰ってくるのですか？もうルージュに連絡を入れてから、１週間も経っているのですよ」

　いつまで待っても、ルージュは帰ってこなかったのだ。

「ルージュにも色々と考えがあるのだろう。心配しなくてもそのうち帰って来るよ」

「それなら、せめて僕もルージュと話をさせてもらえないでしょうか？」

　そう訴えるも…

「そうだな…そのうちな。そうだ、私はちょっと用があるのだった。グレイソン、ルージュの事はそんなに心配しなくていいよ」

　そう言って足早に去って行ったのだ。義母上に聞いても

「お父様に全て託しているから、私は分からないの。ごめんなさい」

　と言われるだけで、ルージュの状況が全く分からない。もしかして、本当は僕に会いたくなくて、帰って来るのを渋っているのかもしれない。

　あんなひどい暴言を吐いたから…もう二度と、ルージュには会えないのか？そんなのは嫌だ。

　義両親が駄目なら！

「君たち、ルージュの連絡先を知らないかい？義両親に頼んで、ルージュに帰国してもらう様に頼んだのに、一向に帰って来る気配がないんだよ。頼む、ルージュとの連絡手段を持っているのなら、僕に教えて欲しい」

　ルージュの親友たち４人に必死に訴えた。きっと彼女たちなら、知っているはずだ。そう思ったのだが…

「申し訳ございませんが、連絡手段は知りませんわ。まあ、そのうち帰って来るでしょう。気長に待っていてください」

　そう言われてしまったのだ。なんだか彼女たち、怒っている様な気がするのは気のせいだろうか？

　藁をもすがる気持ちでアルフレッドに、マリーヌ嬢にルージュの情報を提供してもらえる様に頼んで欲しいとお願いしたが…

「すまない、マリーヌは何も知らないの一点張りで…俺にも何も教えてくれないんだ」

　そう言って申し訳なさそうにしていた。

　その後もルージュを待ち続けるが、全く帰ってくる気配がない。どうしてルージュは帰ってこないのだ？やっぱり僕の事を…

　落ちこむ僕に相変わらずヴァイオレット嬢は、毎日のように絡んでくる。今日も

「グレイソン様、今日はお菓子を持ってきましたの。一緒にお茶をしましょう」

　そう言って僕の元にやって来たのだ。

「悪いが遠慮させてもらうよ。僕はルージュ以外の令嬢とは、関わらないようにしているんだ」

「あら、ルージュ様は国を出られたのでしょう？きっともう帰って来ませんわ。そんな令嬢を思い続けても無意味ですわ。どうか私と…」

「いい加減な事を言わないでくれ。ルージュは必ず帰って来る！とにかく、もう僕に構わないでくれ」

　何なんだよ、あの女。

　でも…

　あの女の言う通り、本当にルージュが帰ってこなかったらどうしよう。そもそも僕がルージュに

　“君の顔なんて見たくない”

　と言ったから国を出て行ったんだ。それなのにルージュに会いたい、話しがしたいだなんて、図々しいよな。さすがのルージュも、僕に呆れているのかもしれない…

　もしこのままルージュが帰って来なかったら…