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今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?  作者: Karamimi


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第86話:自分で決めた事なのに心が揺れる…~グレイソン視点~

 稽古も終わり、着替えを済ませるとそのまま貴族学院へと向かう。貴族学院に通うのも、あと何回だろう。本当にルージュには、もう会えなくなってしまうのだな。


 そう考えると、胸がズキリと痛んだ。本当はずっと貴族学院に通いたい。ルージュと一緒にいたい。


 ふと目に飛び込んできたのは、クリストファー殿下の姿だ。殿下もルージュを好きだと言っていた。もし僕が傍からいなくなったら、殿下と婚約をするのかな?いいや、ルージュは殿下とは婚約しないと言っていた。


 現にルージュは、殿下とは距離を置いているようにも見える。特にあの日以降、ルージュは殿下が近づいて来ても、軽く会話をすると急ぎ足で去っていく姿を何度も見た。


 きっと殿下が何を訴えても、ルージュが殿下と結婚する事はないはずだ。


 ただ、もし殿下が権力を使って、ルージュを無理やり手に入れたら?いいや、殿下はそんな事はしないはずだ。


 でも…


 自分からルージュと距離を取ると決めたのに、今になってこんな事を考えるだなんて。そもそもルージュが誰と結婚しようが、僕には関係ない話だ…


「グレイソン、大丈夫か?顔色が悪いぞ。医務室に行くか?」


「いいや、大丈夫だ。教室に行こう」


 後からやって来たアルフレッドに、声を掛けられたのだ。僕は何を考えているのだろう。ルージュの為に、彼女の前から姿を消すことを決めたのに。これでいいんだ。もう何も考えないようにしよう。


 そう思い、教室へと向かった。あと何回、ルージュの顔が見られるのだろう。せめて彼女の姿を、目に焼き付けておきたい。辛いときや無性にルージュに会いたくなった時、ルージュの笑顔を思い出せるように…


 僕はきっと、今後こんな風に誰かを好きになる事はないだろう。僕に人を愛する気持ちを教えてくれたルージュ。せめて彼女だけは、幸せになって欲しい。僕も君の幸せを願って、騎士団員として生涯を終えるつもりだ。


「あれ?ルージュ嬢、今日は学院に来ていない様だね。お休みかな?」


 隣でアルフレッドが、ポツリと呟いたのだ。確かにルージュが来ていない。もしかして、昨日の件がショックで休んでいるのか?


 でも、ルージュは僕の事を心の中では恨んでいたはず。それなのに、どうして?もしかして僕は、ルージュを傷つけてしまったのだろうか?


 昨日のルージュ、とても悲しそうな顔をしていた。僕はルージュの幸せを願って、身を引いたのに…


 家に帰ったら、一度ルージュの様子を…いいや、ダメだ。僕はもう、ルージュには関わらないと決めたのだ。それに僕が様子を見に行っても、ルージュはきっと喜ばない。


 それでも僕は、ルージュが気になって仕方がない。ルージュ、大丈夫かな?



 その日の午後、学院が終わり、騎士団の稽古場へとやって来たけれど…


「グレイソン、もっと集中しろ。怪我をするぞ」


 何度も何度も先輩から注意を受けた。さらに


「今日はもう帰れ。今のグレイソンでは、怪我をするだけだ」


 そう言われてしまったのだ。仕方なく帰り支度をしていると


「グレイソン、ここにいたのか?今日ヴァレスティナ公爵が騎士団にやって来て、グレイソンが騎士団の宿舎で生活をしたがっているから、手続きをしたいとおっしゃられていたよ。それでグレイソンに、確認をとりに来たのだ」


 僕に話しかけてきたのは、騎士団長だ。団長自ら話しに来るだなんて…


「はい、事務の方には既に話をしてあります。いつでも入れるとの事でしたので」


「本当にそれでいいのかい?俺には君が本当に騎士団が好きで、ずっとここで生活したい様には見えない。それに公爵家の養子も解消したいと言ったそうだね。平民になるという事は、相当大変な事だぞ。こんな事は言いたくないが、どんなに実力があっても、我が国では騎士団の役職は、貴族しかなれない。アルフレッド達とも今後一緒に稽古自体出来なくなるかもしれない。平民と貴族とは、それほど住む世界が違うんだ。騎士団だって例外ではない。分かっているのかい?」


 騎士団長の言葉に、正直どう答えていいか分からない。まさかアルフレッド達と、今後は一緒に稽古を受けられなくなるだなんて。よく考えてみれば、今僕が稽古を受けている隊は、皆貴族だ。もし僕が平民になったら、貴族の隊にはいられなくなる、そう言う事だろう。


 そういえばアルフレッドも、そんな様な事を言っていたが、あまり気に留めていなかった。


「公爵にもこの話しはしてある。もう一度公爵ときちんと話をしなさい。貴族から平民になった人間には、平民たちも厳しい目を向ける事も多い。せっかく実力もあるのだから、君の芽を潰すような事は、俺もしたくないからな」


 そう言うと、団長は去って行ったのだった。

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