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今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?  作者: Karamimi


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第82話:グレイソン様に避けられることがこんなに辛いだなんて…

 グレイソン様が私を避け始めてから、1ヶ月が過ぎた。あの日以降、グレイソン様とはほとんど話をしていない。


 私がいくら話しかけても、軽くあしらわれてしまうのだ。朝早くに出掛け、夜遅くに帰ってくるうえ、食事も自分の部屋で摂っている為、同じ屋敷に住んでいても、ほとんど顔を合わせる事はない。


 どうやら私は、完全にグレイソン様に嫌われてしまった様だ。


 今も教室で、アルフレッド様と楽しそうに話しをしているグレイソン様を見つめた。どうしてこんな事になってしまったのだろう。私は一体、何をしてしまったのだろう。


 辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになる。グレイソン様に避けられる様になってから、改めてグレイソン様の存在の大きさを痛感した。


 グレイソン様が傍にいてくれるだけで、安心できた。グレイソン様が私に笑いかけてくれるだけで、心が温かくなった。


 グレイソン様とずっと一緒にいられたら…そう思っていたのに…


 きっともう、グレイソン様は私の事が嫌いなのだろう。顔も見たくない程、嫌われてしまったのだ。その現実が、辛くてたまらない。


 ただ、友人たちの前では極力笑顔で振るまっている。彼女たちには、これ以上心配を掛けたくなはないのだ。私は1度目の生の時、彼女たちにどれほど心配をかけた事か。


 とにかく彼女たちには心配を掛けたくはない。


 それに何より


「ルージュ様、最近グレイソン様と一緒にいらっしゃらないのですね。もしかして、グレイソン様に嫌われたのですか?お可哀そうに。まあ、あなた程度の女性では、グレイソン様に相手にはされないでしょうね」


 そう、このにっくき女、ヴァイオレットが私とグレイソン様の仲が悪くなった事をネタに、色々と絡んでくるのだ。煩わしい事この上ない。


「別にグレイソン様と、仲が悪くなったわけではありませんわ。適度な距離を取っているだけです」


 そう強がっているが、完全に私は嫌われ避けられているのだ。好きな人から嫌われ避けられることが、これほど辛い事だなんて…


 正直もう、グレイソン様にどんな顔をして会ったらいいのか分からない。私にできる事は、グレイソン様と関わらない様にすることだろう。


 でも…


 それがどんなに辛く苦しい事か、この1ヶ月間、身をもって経験したのだ。このまま大好きなグレイソン様に避けられ続けて暮らすなんて辛すぎるわ。


 一体どうしたらいいのかしら…


 はぁっとため息をつきながら門を目指していると


「ルージュ、ちょっといいかい?」


 話しかけてきたのは、殿下だ。


「申し訳ございません、今あなた様と話をする元気はありませんわ。どうかそっとしておいてください」


 殿下が1度目の生の記憶を持っている事を聞いたあの日、1度目の生の時の夢を見た。あれ以来、極力殿下を避けて来た。殿下を見ると、1度目の地獄の様に辛かった記憶が蘇り、苦しくてたまらなくなるからだ。


 ただ今は、グレイソン様の事が気になりすぎて、殿下を見ても何にも思わない。それくらい私は、追い詰められているのだろう。


 殿下を無視して、門に向かって再び歩き出そうとした時だった。


「待ってくれ、ルージュに謝らないと…」


「ルージュ、ここにいたのね。あら?クリストファーも一緒だったの?」


 私の元にやって来たのは、セレーナだ。隣には3人の姿もある。


「皆、一体どうしたの?」


「どうしたの?じゃないわよ。今日は令嬢だけでお茶をする約束だったでしょう。それなのにあなた、さっさと帰ろうとしちゃうのですもの。慌てて追いかけて来たのよ」


「そういえば、そうだったわね。ごめんなさい。殿下、セレーナ達と約束がありますので、私はこれで」


「あっ、待って…」


 殿下が何かを言いかけていたが、とりあえずセレーナ達と一緒に中庭を目指した。


「相変わらずクリストファーも、あなたの事を諦めていないのね。でも、ルージュはグレイソン様の事が好きなのでしょう?」


 セレーナは既に、私の気持ちに気が付いている様だ。


「ええ、でも、グレイソン様は完全に私の事を嫌っている様なの。あそこまで嫌われてしまったら、もう私は諦めるしかないわ」


「ねえ、ルージュ、本当にグレイソン様は、ルージュを嫌っているのかしら?時折切なそうにルージュを見つめている時があるの。それがどうしても引っかかって…」


「私も何度も見たことがあるわ。アルフレッド様が言っていたのだけれど“僕はルージュを好きでいる資格はない”みたいなことを言っていたそうよ。一体どういう意味なのかは分からないけれど」



「グレイソン様が、そんな事を?」


「ルージュ、一度きちんとグレイソン様と話をしてみた方がいいのではなくって?もしかしたら、グレイソン様は何か勘違いをしているのかもしれないし」


「私も一度話したいとは思っているのだけれど、当のグレイソン様が、私を避けていて…」


 私がどんなに話したいと願っても、グレイソン様が相手にしてくれないのだ。これ以上どうしろというのだろう。


「もう、ルージュったら。とにかく一度しっかり話してみるべきよ。分かった?」


 皆からそう強く言われてしまった。


「分かったわ、私、もう一度グレイソン様と話してみるわ」


 もしかしたら、また避けられるかもしれない。それでもこのまま自分の気持ちも伝えられないまま、終わってしまうのも嫌だ。どんな結果になろうと、一度しっかりと話してみよう。

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