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今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?  作者: Karamimi


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第79話:ルージュをこれ以上苦しませないために~グレイソン視点~

「殿下、無礼を承知で申し上げます。それならどうか、ルージュにはもう構わないであげて下さい。あなた様は、ヴァイオレット嬢を愛していらしたのですよね?それなら、これからもヴァイオレット嬢を…」


「あの女を愛する事なんて、出来ない。あの女は本当に最低な女なんだ。でも…あんな女にうつつを抜かし、大切な婚約者を殺した僕は、もっと最低な男だよね…だからこそ、今度こそあの女から必ずルージュを守り、幸せにしたいと思ったのに、まさかルージュまで、1度目の生の時の記憶が残っていただなんて…それでも僕は、ルージュを愛している。今度こそ僕の手で…」


「殿下、本当にルージュの事を愛していらっしゃるのなら、もうルージュには関わらないであげて下さい。昨日あなた様とルージュは、話をしたそうですね。そのせいかは分かりませんが、昨日の夜、ルージュは1度目の生?の時の夢を見た様です。尋常でない汗をかき、涙を流しながら悪夢にうなされておりました」


「ルージュがかい?そうか…」


「また私を殺すのですか?両親まで殺して!そう呟いておりました。僕はどの様にルージュが殺されたかはわかりませんが、そう叫ぶ前に、“お父様、お母様”と叫んでいたので、目の前で両親を殺されたのではないかと推測します。ルージュは誰よりも家族思いの優しい子です。そんなルージュの前で、もし両親が殺されていたとしたら。そう考えただけで、僕は胸が張り裂けそうになる」


 ルージュが1度目の生の時、どんな思いで死んでいったのだろう。その記憶を持ったまま、2度目の生を生きているルージュ。どれほど辛く苦しかっただろう。考えただけで、胸が張り裂けそうになる。


 どうして僕は、1度目の生の時、ルージュと義両親を助けなかったのだろう。僕は彼らに助けられ、人間らしい生活を送れていたはずなのに。一番苦しんでいる時に、彼らを助けられなかっただなんて…


 どうせ死んだのなら、せめて義両親とルージュを助けて死にたかったな…


 僕には1度目の生の時の記憶はないが、それが悔しくてたまらない。それと同時に、殿下やヴァイオレット嬢にも、怒りがこみ上げて来た。


「グレイソン殿の気持ちは分かったよ。ルージュはそこまで僕を拒絶しているのだね。僕はそれだけの事をしたのだから、仕方がないか…でも僕は、それでもルージュを愛している。ルージュの為にも、少なくともヴァイオレットからルージュを守りたい」


「ヴァイオレット嬢は、どうしてルージュをそこまで嫌うのですか?ルージュが何をしたというのですか?」


「ヴァイオレットは、自分よりも目立つ存在の人間が嫌いなんだよ。ただそれだけだ。自分が一番でないと気が済まない。非常に自己中心的な人間なんだ。ただ、見た目が美しく、人に取り入るのが上手いあの女に、僕はまんまと虜にされてしまった。ただ…君だってヴァイオレットに魅了された男の1人だったよ」


「僕が、ヴァイオレット嬢を?」


 あり得ない、僕がルージュ以外の令嬢を好きになるだなんて。でも、殿下が嘘を言っている様には見えない。


「君も僕も、1度目の生の時は同じ様に過ちを犯したのに、どうして君だけ許されるのだろうね?それはおかしいと思わないかい?そもそも君がヴァイオレットの虜になって、駆け落ちなんてしようとしなければ、ルージュもルージュの両親も死なずに済んだかもしれないのに…」


「それはどういう意味ですか?」


「君が僕の新しい婚約者でもあるヴァイオレットと一緒に、駆け落ちをしようとしたのだよ。そのせいで君は処刑され、ルージュやルージュの両親は国外追放になった。その途中で、ルージュたちは殺されたんだよ。ヴァイオレットの指示でね」


「そんな…僕のせいで、ルージュや義両親は、殺されただなんて…」


「僕も愚かだが、君も大概愚かだったって訳だよ。愚かな令息2人に言い寄られて、ルージュも大概気の毒だよね。本当に…」


 ポツリと殿下が呟いた。


 僕がルージュと義両親を裏切り、死に追いやった…


 僕が、ルージュを…


「正直君にこの話をするのは止めようと思った。でも、君があまりにも無責任な事ばかり言うから、少し腹が立ってね。でも、君はヴァイオレットに騙されていたという事が、後でわかって…て、僕の話、聞いている?」


「僕が、ルージュと義父上と義母上を…死に追いやった。僕が…」


「グレイソン殿、最後まで人の話を聞いてくれ。グレイソン殿…」


「殿下、申し訳ございません。体調がすぐれませんので、これで失礼いたします」


「待ってくれ、すまない、いい方が悪かった。確かに君の罪が原因でルージュたちは国外追放になり、その結果殺されたが、君だってヴァイオレットに騙されていたことが後に分かったんだ。だから、ルージュも君の事は恨んでいないと思うよ」


「でも、結果的に僕のせいで、3人は殺されたのですよね…それなら、僕が殺したようなものです。殿下、今度こそ失礼いたします」


 殿下に頭を下げ、そのままフラフラと歩き出した。


 あんなに優しいルージュと義両親が、僕のせいで殺されただなんて…そんな事とは知らず、僕はルージュと結婚して公爵家を2人で支えて行けたらだなんて、図々しい夢を…


 ルージュはどんな気持ちで、2度目の生を生きていたのだろう。どんな気持ちで、僕に優しくしてくれていたのだろう。


 ルージュが辛い記憶と戦っているとも知らずに、僕がルージュを幸せにしたいだなんて。僕はルージュと義両親を不幸にした人間なのに…


 ルージュ、義父上、義母上、本当にごめんなさい。


 僕は本当に愚かだったようです。


 それでも僕は、ルージュを心から愛している。ルージュには誰よりも幸せになってもらいたい。ルージュが幸せになるために、僕に出来る事は…

次回、ルージュ視点に戻ります。

よろしくお願いしますm(__)m

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