第107話:久しぶりの貴族学院です
しばらく進むと、懐かしい貴族学院が見えて来た。
馬車から降りると
「おはよう、ルージュ。一緒に教室に行きましょう」
「おはよう、皆。もしかして待っていてくれたの?」
「ええ、そうよ。さあ、行きましょう」
友人4人が門の前で待ってくれていた様で、そのまま4人に手を引かれ、教室へと向かう。
ただ…
「ルージュ、待って…」
後ろでグレイソン様が叫んでいるのだが、皆気にしていない様子。それどころか…
「グレイソン様と一緒に来たという事は、仲直りをしたのね。でもあの人、ルージュを傷つけたから、私はやっぱりまだ許せないわ」
「私もよ。あの程度で許されると思ったら、大間違いよ」
何やら訳の分からない事を、ブツブツと呟く友人達。一体どうしたのかしら?
教室に着くと
「どうしてあなたが学院に来ているのよ!もうこの国には帰ってこないのではなくって!」
私を見るなり、顔を真っ赤にして文句を言ってくるのは、ヴァイオレットだ。
「そのつもりでおりましたが、急遽帰国する事になりましたの。どうかこれからも、よろしくお願いしますね」
もちろん、この女とよろしくするつもりはないが、笑顔でそう伝えてやった。
「何なのよ!あなたがいない間、私は殿下とグレイソン様と仲良くしていたのに」
「誤解する様な事を言わないでくれ。僕は君と仲良くした覚えはない。ルージュ嬢、お帰り。パレッサ王国は楽しかったかい?」
私に話しかけてきたのは、クリストファー殿下だ。あなたがグレイソン様に変な情報を与えなければ!そう言いたいが、きっと殿下も悪気はなかったのだろう。
「ええ、とても素敵な国でしたわ。とにかく魚介類が美味しくて。海に潜ったりして、自分で貝を取ったのですよ。そうですわ、沢山お土産を持たせてもらいましたの。皆様にもどうぞ」
せっかくなので、クラスの皆にもお土産を渡した。叔母様ったら、これでもかというくらいお土産を持たせてくれたのだ。クラス皆に配っても、まだあまりそうだ。
「まあ、なんて素敵な宝石なのでしょう。ルージュ様、この宝石はなんというのですか?」
「この宝石は真珠といって、アコヤガイが作り出す非常に貴重な宝石なのです。パレッサ王国では、養殖にも力を入れているとの事ですわ」
「真珠ですか?本当に美しいですわ。こんな宝石、見たことがありません。こんな貴重な物を、いただいてもよろしいのですか?」
「ええ、もちろんですわ。まだありますので」
どうやら皆、喜んでくれた様だ。さすがにヴァイオレットは、私のお土産なんていらないだろう、そう思っていたのだが…
「ちょっと、あなたの真珠の方が、私のよりも大きいわ。交換して頂戴」
そう言って、一番立派な真珠が付いたアクセサリーを吟味していた。この人、がめつい性格をしているのね…
お土産を配り、皆で盛り上がっているうちに、先生が来てしまったので急いで席に着く。せっかくなので、先生にもお土産を渡したら、とても喜んでくれた。
こんな風にまた皆で授業が受けられるだなんて。パレッサ王国も楽しかったけれど、やっぱり母国が一番いいわね。
そしてお昼休み。
「ルージュ、一緒に食事を…」
「ルージュ、今日はとてもいい天気よ。中庭で食べましょう」
「グレイソン様、アフレッド様達が待っておりましたよ。どうぞそちらへ」
「でも僕は…」
「あら、ずっと令息たちと食べていらしたではありませんか。それとも令嬢たちの輪に入りたいのですか?」
「いや、そう言う訳では…」
ちょっと待って、皆、一体どうしたの?なぜかグレイソン様を攻撃している。
「皆、グレイソン様は…」
「さあ、ルージュ、行きましょう。令嬢だけで色々と話したい事もあるものね。それではグレイソン様、ごきげんよう」
友人たちに背中を押され、そのまま中庭へとやって来た。一体どうしてしまったのだろう。
「皆、急にどうしたの?どうしてグレイソン様を、のけ者にするの?可哀そうよ」
「何が可哀そうなものですか。散々ルージュを傷つけておいて。しばらくは寂しい思いをさせておけばいいのよ」
「そうよ、ルージュ。あなたが甘やかすから、付け上げるのよ。男をあまりつけあがらせるものではないわ」
私は別に、グレイソン様を甘やかしてはいないのだが…
「セレーナもミシェルも、ちょっとやりすぎよ。さすがにグレイソン様が可哀そうだわ」
「そうよ、いくらルージュの為だからって。ルージュ、グレイソン様はこの3ヶ月、ずっとあなたがいつ帰って来るか分からず、不安な日々を過ごしていたのよ」
「えっ?どういう事?」




