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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
二章 お爺ちゃんとクラン
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義務と勧誘


「アキカゼさん、あんたが悪い人じゃないとは分かってるが、このイベントには巻き込ませたくない。これは、俺たちで解決すべきものだ」



 私の問いかけに対してどざえもんさんは申し訳なさそうに語る。

 何か様子がおかしいと思ったら、どうもシークレットイベントの類を引き当てたようですね。

 なるほど、それで私を巻き込まないように予防線を貼ったわけだ。

 これに関われば、彼らの後ろにいるスポンサーから私が不利益をもたらされると知っての抑制。この忠告を飲むことで彼との関係が続けられるのであれば飲んでおいた方がいいでしょうか。

 本当なら遠慮なく巻き込んで欲しいのですが、彼は一度そのことで失敗してしまっている。だから私はその言葉を否定せずにそのまま受け取ることにした。



「分かりますよ。どんさん達山登り同好会の都合に私を巻き込ませない為の配慮ですね?」


「そういう事だ。これからブログを書いてスポンサーに連絡を回す。少し待たせてしまうが大丈夫だろうか?」


「はい。その間撮影なりなんなりして時間を潰しておきますよ」


「悪いな」



 どざえもんさんとしてもスポンサーにいいように使われているのは分かっているが、そんなスポンサーでも失えば困るのは彼らの方なのだ。

 それだけ趣味に勤しむというのは活動資金が必要であり、私みたいに好き勝手に動いてお金もそれなりに得ているプレイヤーというのは多くないのだろう事が窺えた。

 そう思えば同情こそするが、あまり首を突っ込むものでもないな。

 もし私がクランを運営しているのだったらいくらでも引き抜く事はできるが、現状彼らに何かしてやれる事は今の私にはない。

 けれどせっかくフレンドになったのだからもう少し頼って欲しいものだ。



「ああ、そうそう。探索に詰まったらいつでも頼ってくれていいですからね?」


「あんたの人脈を聞いて、おいそれと頼めないとついさっき悟ったばかりなのに?」


「人脈はどうであれ、私は私です。私が必要と思ったら頼るかもしれませんが、私に相談したからと言って全てのフレンドにまで話が回るなんてことではないですよ。何でもかんでも漏らすほど私の口は軽くありませんから」


「どこまで信じて良いがわからんが、困ったらアテにはさせてもらうよ」


「それで十分です。私からは以上です。作業を止めてしまってすいません」



 彼からその言葉を引き出し、私は満足そうに頷いた。

 ようやく登り切ってスタミナ回復に努めてるナガレ君がどざえもんさんに急かされてシステムからブログを立ち上げている。


 結局彼らの見つけた情報は私の方に入ってこなかったけど、それは別に構わない。

 私は別にブログを上げる事が急務ではないからね。

 彼らのようにスポンサーにお金を出してもらってるわけでもなければ行動を容認してもらってるわけでもない。

 そういう意味では家族に支えてもらって好き勝手させてもらって彼らに悪いと思ってしまうくらいだ。


 時間にしておおよそ三十分くらいか。

 どざえもんさんはコールでスポンサーさんと連絡を取り付け会話中、ナガレ君はどこかにメール添付してブログの画像を送り修正チェックをお願いしてるようだった。


 一連の流れを観察しながら、自分のブログを書くスタンスと大きく異なるのだなと思う。

 そもそも趣味で自分の思うままに製作してる私と違って向こうはある程度の固定読者を持つ人気ブロガーだ。

 スポンサーがつく程度には知名度もある分、ミスはないように努めているのだろうね。

 その違いの大きさに嘆息しながらも学ぶべきこともあるかと作業を食い入るように見守った。

 そんな折である。作業を一段落させたどざえもんさんが話しかけてきたのは。



「悪いな、アキカゼさん。こちらから誘っておいてこちらの都合で勝手に取り止めてしまって。今日は二つのルートを巡って心ゆくままに登山に勤しもうと思っていたんだが、俺の過去に集めたフラグが一つの解答を導き出しちまった」


「そのお気持ち、痛いほどわかります。まあ私はその場に居合わせた人を高確率で巻き込みますからね。だからどんさんのように配慮してくださってありがたく思ってますよ。ええ、フレンドの一人が今ここにいたら見習うべきだと茶々を入れてくる事請け合いですね」


「ハハハ、まるでその人が何度も被害に遭ってるみたいな言い分だが、そうだな。一緒に行動するなら俺の方も心構えが必要か」


「はい。私だってクエストを受ける前に一応予定を聞きますが、空いてるなら問答無用で突き進む人です。後になってからやっぱりなしと言われても困るので予定があるなら事前にお願いしますよ?」


「心得た。しかしどうしようか、時間が余ってしまった」



 どざえもんさんは困ったように嘆息し、周囲を見回す。

 今から下山してもう一本、という気分ではなくなってしまったようだ。

 後から向かってくるスポンサーと合流して情報の引き継ぎを行わなければいけないらしい。

 ご苦労なことだと思いつつ、自分はここまで行動を縛られたら窮屈に感じてしまうな。

 そこでどうせ時間が余ったのならと本来の目的地にご案内してしまおうかと脳裏にかすめる。



「ああそうだ、なら私の予定していた登山場所に向かいましょうか? そこなら入山ルートも安全ですし、問題ないでしょう」


「おい、そこってまさか……」



 どざえもんさんは私の誘いに早速気がついたようですね。

 はい、私はこれから領主邸の奥にある山脈に向かう事を彼に打診していました。



「ええ、ブログで示した場所ですよ。どうですか? 丁度スポンサー提出用のブログも書き終わったことだし、息抜きに新しいロマンでも探し求めに行きません?」



 手を差し出し、笑いかける。

 どざえもんさんはその手を受け取ろうと躊躇うが、やがて諦めたように握り返してきた。



「たまには仕事以外のロマンを追いかけてみるのも悪くない。その誘い、ありがたく乗らせてもらおう」


「それは良かった。ナガレ君も一緒にどうです?」


「僕はまだブログ作業の編集があるので今日は遠慮しておきます。それに、引き継ぎ作業をするのに誰か一人残っていないといけませんし。情報は既に把握しているのでどんさんは行ってきて大丈夫ですよ。でも後でどんな場所だったか教えてくださいね」


「そうか、悪いな。恩にきる」


「僕としても非常に興味をそそられる反面、お二人についていくには実力不足だなと実感しているところですから。僕を待ってる時間があったら先へ先へと行ってしまいたいでしょう?」



 ナガレ君はそう言うが私としては彼を待ってる間景色を眺めていたり、新しい発見をしたりスクリーンショットを走らせたりやる事はあるのでそこまで待つのは苦ではなかったんだが。

 それでも気を遣ってくれてる事は痛いほど理解してるので無理に誘う事はやめた。



「では後で個人的に景色やルートをお教えしよう。ただし私有地なのでスクリーンショット以外の持ち出しは禁じられてるのでそこはよろしく頼むよ?」


「目的は登山だろう? むしろ上り詰める以外のものなんか必要ないんだが?」


「どんさんはそう言ってくれますが、そうじゃない目的の人もいるんで、一応注意事項をお伝えしただけです。なお、何か持ち去った形跡があった場合は街に帰れなくなるので本当にお気をつけください」


「徹底してるな。領主は私有地に何か隠してるのか?」


「さぁ? 私の口から語る事は何もありませんし、余計な詮索はしない方が皆さん幸せになれますよ」


「それもそうだ。私有地に侵入してもお咎めがないだけで御の字だと思わなければな!」


「そういう事です。それではナガレ君、また今度」


「はい、行ってらっしゃい」



 ナガレ君をその場に残し、私とどざえもんさんは一路セカンドルナへと向かった。

お読みいただきありがとうございます。

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