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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
二章 お爺ちゃんとクラン
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これからの展望


 一度ログアウトして家族一緒に昼食をいただく。

 今日のおかずはロールキャベツだった。よくこんな手のこんだものを作る時間があったねとカンピョウで縛られたキャベツを箸でつまみ、口の中で味わう。

 娘曰く、料理は全てインスタントでお湯を注ぐだけで出来るからどれを食べたいか選ぶだけでいいのだと教えてくれる。

 なんとも味気なく感じるが、時代が変わったのだと痛感した。


 食後の話題はそれぞれの近況だ。

 孫の美咲から始まり、娘、秋人君、私の順番で語っていく。


 おおよそは朝の時から大して進展しておらず、それぞれの次の準備を聞くことにした。



「私はお昼からユーノと一緒にダンジョン行ってくるの」


「あら何処の?」


「ちょうどセカンドルナに居るから近辺調査とまだ見つかってないイベント発掘がメインかな?」


「あんな手垢のついたダンジョンを探っても今更新しい発見とかあるかしら?」


「お爺ちゃんだって見つけたんだから手がかりは絶対あるもん!」



 娘と孫の会話を微笑ましく見ているところで、秋人君が私に声をかけてくる。



「お義父さん、実は僕から改めてお願いがあるのですが」


「なんだい藪から棒に」


「とある特殊合金の精錬についてです。ウチでもいくつか試みているのですが、難易度が高すぎて難航してまして」


「ふむ、私から頼んだ装備関連のものだね? それで私に頼みとは?」


「はい。お義父さんの幼馴染みであるダグラスさんに精錬……つまりインゴット化が可能かどうかをご教授頂きたく」


「ふむ、そういうことか。勿論いいよ。頼むだけならタダだからね。でもそんなに難しいのかい? インゴット化というのは」


「ミスリルやダマスカスまでならば僕たちでも精錬出来るのですが、それ以上だと中間素材なしに至るにはなかなかハードでして。特に素材が希少です。イベント時にのみ配布された素材でして、他の地域では産出されていないものです。もしかしたらまだ未発見のものなのかもしれませんが、現状入手が不可能。

 参加者から可能な限り集めましたが、減っていく一方で、だったら無駄に消費するならとここは涙を飲んでお願いしようと思ったわけです」


「ふむ。君たちとしても本来なら他人に頼むべきではないと感じているのだね?」


「当たり前です。腕が未熟だからこそ、その素材を征服してみせるのは生産職としての願望。精錬し、加工し、それを人々の役に立てるのが我々生産職の務めだと思っていますから」


「分かったよ。そのことも含めてお願いしてみよう。それと私のお願いした装備のことだけど、くれぐれも内密にお願いするよ? うっかり朝話すのを忘れていたのを今思い出した」


「その事でしたら言われずともしっかり内密に進めてますよ。お義父さんは身内ですが大事な顧客ですし、顧客情報をしっかり管理するのも我々生産道クランの務めです」


「それは良かった」


「それに、そんな使い道の限定された装備は売れ残るのが目に見えています。こちらはそのノウハウを生かして違う装備に作り替えるのみですよ」


「確かにそれは理に適ってるね。では今回の依頼は君たちにとっても腕を磨くいい機会なわけだ?」


「はい。お義父さんにはいつもこちらに都合の良いお話をいただいてばかりで返す恩が増えていく一方です。いずれ返すにしても、ちょっと今から気が重いですね」



 はははと乾いた笑いを漏らす秋人君。そんなに競わなくてもいいのに。



「そうだね。じゃあ早速返してもらうアテとしてクラン設立の時の保証人をお願いしてもいいかな?」


「その程度でしたらお声掛けいただければすぐにでも」


「ありがとう。でもまだ人数が揃ってないから当分先の話になるかな」


「お爺ちゃん、クラン作るの?」



 秋人君と私の会話に孫の美咲が割って入ってくる。



「うん。私の実家のご近所さんと何かしたいねって話し合って取り敢えずイベントを起こしてみようということになったんだ。けれどクランを作るのに人数が必要でね。人探しもしながら検討中なんだ」


「じゃあ私そこに入るよ! お手伝いだってするし」


「いいのかい? 私は助かるけどお友達のユーノ君と別れてしまうよ?」


「クランは別でも友達は友達だもん。クランが違うからって仲が悪くなるわけじゃないんだよ?」


「それもそうか。ではお願いしようかな」


「うん。なんだったらユーノも誘ってみるし、鈴木先生もお誘いしたら?」


「スズキさんか。あの人は生態系が違うから来てくれるだろうか? それにリラックスを求めてあのゲームにきてるのに個人的なイベントの開催に来てくれるかな?」


「言うだけならタダだよ!」


「これは一本取られたな」



 言葉を真似る孫に、私は額にピシャリと手を当てて唸った。

 新たに孫、ユーノ君、スズキさんの候補が加わって6人。

 あと4人……何処かにいないだろうか?

 ジキンさんファミリーは全員漆黒の帝入りしてるらしいし、ダグラスさんのところも娘のクランよりも目の上のタンコブになっている。

 もう少し人脈を増やす必要があるか。



「よし。では私の午後の目標は……」


「目標は?」



 ワクワクとした視線を孫から受け止め、発表する。



「当初の予定通り山登りだ。この間諦めた場所の探索をしてないからね」


「えー」



 突然ブー垂れる孫。現状がどん詰まりだからこそ、違う場所の散策をしてみるべきだと私をダンジョンに誘おうと試みるつもりだったらしい。だから本来なら行かなくてもいいようなセカンドルナ近辺を選んだというわけか。



「領主様との取り決めでお咎めなしになったばかりですもんね。しかしこの間諦めた場所とは?」


「近隣にある森の中、隠し通路の先にある山岳だね」


「お爺ちゃんすごいスピードで登っていくから私達足手纏いになっちゃうの。でも一人で大丈夫?」


「あの時紹介してもらったナガレ君っているだろう?」


「うん。あのビシッとした人だね」


「彼から聞いたんだ。モンスターをある一定の高さまで置き去りにすれば戦闘フィールドから脱出できるって」


「つまり?」


「木に登れば敵はやがて諦める」


「そんな事が!」



 孫にとっては驚きの事実だったようだ。



「戦闘の回避手段があったんですね。僕は逐一由香里に守って貰ってばかりでしたよ」


「最初に取得したスキルによって向き不向きはあるからね。私は偶然そういうのが得意だっただけさ」


「確かに。僕はものづくりに特化してます。お義父さんの場合は探索に重きを置いてます。その差ですか」


「そういう事だよ。また新しい発見があればブログに載せるから楽しみにしていてくれ」


「分かった」


「はい」


「行ってらっしゃい」


「では行ってくる」



 家族全員に見送られ、私は次の探索場所を頭に入れてログインした。

お読みいただきありがとうございます。

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