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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
一章 お爺ちゃんとVR
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街中散策

 人伝てに聞いて歩くこと15分。


 大通りに面した建物に様々な種族が出入りする木造建築が建っている。おおよその外観から察するにあそこが『冒険者ギルド』であるのだろう。

 種族専用の窓口とかもあるのだろう、空を飛ぶ種族は上空からヘリポートのような場所に降り立っていくのが見えた。

 すぐ横には川が流れており、その川から身を上げるものが居たりする。

 目があってしまって何と言っていいかわからず、会釈しながら同じ歩みで中に入る。


 どんな種族でも入れるようにと扉は押すだけで開くスイングドア形式。

 入り口周りはすっきりとしているが、そこから先は雑多というか賑やかな雰囲気。

 わいのわいのと多種多様な人種が入り乱れて情報を交換しあっている。全員が違う容姿なのに言語が日本語だから違和感がすごい。



「あれかな?」



 孫娘から聞いた話では受付カウンターの左側にブログ閲覧コーナーというのがある。そこでいくつかブログを覗くと、またも電子音がピコンと頭の中で響く。



<アナウンス:ブログ情報が開示されました。以降、システム内からいつでもブログの発信と閲覧が可能になります>



 どうやらこれであっていたようだ。

 情報発信といえば掲示板のようなBBS形式が流行っているが、今の私についていける自信はない。

 なにせみんなが思考インプット形式の猛者。読むどころか目に止めるのも無理だろう。


 だからこういう自分目線で書き込めるブログがありがたい。

 覗いて見た限りでは結構世代の近い人が多いようでいくつかお気に入り登録した。

 やはりみんな冒険しにきていないのがなんとも自分と似ていて、釣り好きが高じてゲーム内の釣り情報を上げている人もいた。


 その中に私も入り込むのだが……ううむ何だか今から緊張してしまうな。果たして受け入れられるだろうか?


 いいや、そもそも誰かに読まれたくて書き込むわけではない。これはあくまでも自己満足。私はここにいるぞという決意表明だ。


 そうと決まればネタ探しに出かけよう。

 と、その前にギルドに登録して戦わずともお駄賃を稼げるようにしておかないと。自分で欲しいものはあまりないが、次に孫にあった時の資金は必要だからな。


 そこでいくつか見繕ったのがどぶさらいとゴミ拾いだ。

 持っててよかった持久力UP。


 心は60歳でも、こちらの肉体は若いのですぐに疲れないのがまたいい。

 ゴミを拾って行ってきれいになっていく経過が楽しくなって、気づけば予定の時間を大幅に過ぎていた。

 クエストは拾ったゴミでポイント分けされており、取れば取るほど高得点というミニゲームのようなものだった。


 どぶさらいも同様、ぬかるんだ足元に感じる感触でゴミかそうでないかを判別して探り当てる宝探しの気分を味わえる。

 

 それでも二つ合わせて今日消費した金額の半分くらいなので、もう一つくらい受けておこうかとギルドでクエストを探しているところで背後から声をかけられた。



「もし?」


「はい? 私でしょうか?」


「そうですそうです。ああ、申し遅れました。私はジキンと言います。皆が冒険に明け暮れる中、一人でゴミ拾いに集中しているようでしたのでどうされたのかと心配になって声かけしました」



 ご迷惑でしたか? そう付け加えてジキンさんは会釈する。


 彼は人型ではあるが獣の種族が混じった獣人と呼ばれる種族だろう。

 垂れた犬耳、薄茶の毛皮。皮の防具を身に纏っている。


 見た目は獣だけど理性の色を宿した瞳で人間臭い動きをするのだからNPCではなくプレイヤーだと窺い知れる。



「いいえ。やはり珍しいですか?」


「あまり見かけませんね」


「そうなのですか。実は──」



 恥ずかしながら事の経緯をかいつまんで話すと、彼は納得したように頷いてくれた。そして私の名前を聞いて「ははぁ、その名前をチョイスする辺り結構なお年ですよね」と返される。



「ではジキンさんも?」


「はい。状況はハヤテさんとは違いますが、親族から誘われる形で参加しました」


「なるほど、なるほど。奇妙な縁もあったものですね。あ、迷惑でなかったらフレンド宜しいですか?」


「こちらこそ。右も左もわからぬ新参ですが」



 ジキンさんは私のスキルビルドに大変興味を示していた。

 彼は親族からの誘いで戦闘スキルに偏ったビルドを勧められてそのままやったのだが、案の定頭がついていかなかったらしい。


 子供や孫にとっては当たり前に扱えるスキルも、彼にとっては全くの未知。

 言葉の組み合わせでパッと思い付かずに戦力から追いやられてしまったらしい。


 ずっとゲームに浸っていたのならまた別かもしれないが、私と同じで社会人になってからその手のゲームには手をつけてこなかったのだ。

 立場は違うが一歩間違えば私もそうなっていたのかもしれない。

 それを見過ごせないという気持ちも同じ様に持っていた。



「もし宜しければ私と組みませんか?」


「良いのですか?」


「勿論です。断る理由はありませんし、何しろ世代も近いでしょう。若人たちの話についていけないという点ではお互いに利があると思います。どうでしょう?」


「こちらからお願いしたいくらいです」


「ではパーティ申請送ります」


「受諾しました」


「ありがとうございます」



 あらかじめ申請と受諾のやり方は孫娘から聞いている。

 年寄り扱いされているが、ゲームくらいはやったことがあるのだ。

 ただしそれらは画面の向こう側にアバターがあるゲーム。

 こうやって精神が入り込むのは初めてというだけ。



「ではジキンさん、ブログのネタ探しにご協力して貰えますか?」


「ほほう、ハヤテさんはブロガーでしたか?」


「まだ始めてませんが、趣旨は決まってます」


「差し支えなければ聞いても宜しいでしょうか?」


「ええ。風景写真を撮ろうと思いまして」


「へぇ、良いんじゃないですか」


「おや、あまりご興味が無いですか?」


「どうでしょう、あまりそっちは得意じゃないものでして」


「ならばその魅力に取り憑かせてあげましょう」


「はは、お手柔らかに」



 相手が過去の自分のような状況と知り、俄然やる気が出てくる。

 まずはこの街をぐるりと囲う外壁の天辺に登る。それを目標として私達は歩き出した。

お読みいただきありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

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