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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
三章 お爺ちゃんと古代の導き
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飛空挺の名前は……


 空の旅は順調だ。

 惜しむべきは誰も景色を楽しんでないということくらいか。

 みんなしてスクラムでも組むようにヒソヒソ話をしてるんだ。あるものは何処かへ連絡を取り、あるものは掲示板で情報を書き込んでいる。すぐ横には山本氏とダグラスさんがついていて、いろいろ確認しながら出せる情報を絞っているようだ。

 なんだかなぁ。君たちは内密って言葉の意味を知らないのかい?


 

「はぁ、もったいないね。この高度からの景色は鯨君からじゃ味わえないというのに」


「仕方ないですよ、ハヤテさん。一般プレイヤーからしたら気になる情報のびっくり箱の中に押し込まれたんですから」


「スズキさんはもうお話は良いのかい?」


「ええ。僕の要望は通してきたつもりです。あとはその要望が持ち主に通るか否かですね」



 ニコニコしながら言い切る彼女。

 持ち主って私だよね? なんの要望を出したのか気になるところだ。

 少しして山本氏は手を打って注目を集める。



「さて、本日のパイロットテストにご搭乗頂きありがとう。だがいちばんの懸念対象があるとすればここからだ。これは今後空を飛ぶ上で一番の肝であり、これが失敗したら空路自体が絶望的になる。そろそろ目的地の[三の試練]に到着する。俺が何を言いたいか分かる奴はいるか?」



 全員が頭を傾げている中で、挙手をしたのは4人。

 オクト君、私、ジキンさん、探偵さんである。

 


「まずは精錬の騎士のマスターから聞いてみようか」


「はい。山本さんがいちばん懸念していること。それはつまり空鯨がこの船を敵対してこないか? が最初に上がるのではないかと思っています」


「そうだな。それで?」


「で、あれば乗組員がある程度空導力を持っている必要があるのではと進言します」


「いいや、そこじゃない。はい次」



 なんもわかってねーなと山本氏はオクト君の回答を切り捨て、ジキンさんを顎でさす。



「空導力ではない。つまるところこの船の運営は対空鯨決戦兵器になりうる環境が揃っている。そう聞こえましたが?」


「質問してるのは俺だぜ? 質問に質問で返すんじゃねーよ」


「失礼。では僕の意見を述べましょう。そうですね、船とは本来大人数の人々を運ぶものです。それが空を飛ぶとなれば空導力を持ってない人こそ欲しがるでしょう。まず前提がそこにある。で、いいですか?」



 山本氏は何も言わない。だがなかなか的を射ているじゃないかという顔をしている。



「そして相見えたら戦闘必至。相手は電磁バリアや大型エネミーの絶対防御を貫通するレーザーを駆使する技術を持つ超古代文明。こちらの技術でどのように対抗するか。いいや、もうあらかた答えは出てるようですね。これ以上の憶測は山本さんの答えを奪いかねないので、僕からは以上です」


「ケッ、食えない爺さんだ。だが概ね正解だな。その研究結果がどのような結果で終わるか。今回のフライト計画はそこも加味されている」



 今ので殆ど答えが出てしまったと言いたげに山本氏は表情を顰めた。その上で私に話を振ってくる。さっきから勢いよく手をあげてる探偵さんは無視されてるようだ。

 さっき何かあったのだろうか? 関わるのも面倒くさいという態度である。



「じゃあ締めにアキカゼさんに聞いてみようか」


「そうですね。私は山本氏がこの飛空挺をどのようなビジネスに使おうと口を挟む義理はないのでしょうが、依頼主の私から言わせてもらうともっと夢のある装いにして欲しいなと思っています」


「つまり?」


「空に鯨が泳いでいる。なら古代人にとっては空も海と同義なんだ。だからそこに景観にそぐわない戦闘機とかが浮かんでたら、それは嫌だなと思うんだ。きっと私の言葉は山本さんの言いたいこととは違うだろうけど、私はこの船のあり方をこの大空という海に泳ぐ一匹の魚でありたいと思っています」


「実にアキカゼさんらしい誇大妄想をどうもありがとうよ。だが論点から外れているようで、大きく外れてないのは悔しいな。そうだ。ウチのクラメンからの情報では、海の生物と同じ形状を保っている機体であれば攻撃されない情報を得ている」


「そんな情報聞いたことありませんが?」


「おいおい、ウチは飛行機乗りの総本山だぜ? 個人で空飛べる奴ならともかく、真下から鯨に向かっていろんな試作型を飛ばして得たデータだ。そんじょそこらの奴らから得られるデータなもんか! 無慈悲にキルされてったクラメンの意思を乗っけた大事なデータを安売りするかよ。ま、それを知ったところでこの船の構造から何から何まで秘匿してるからな。欲しいならウチに頼むしかないんだ」



 私のお話には誇大妄想と言っておいて、データ主義者のオクト君にはマウントを取る山本氏。

 


「つまり何が言いたいんです?」


「ああ、この船は色んな魚のバリエーションがあってな、本体の表面にホログラフで投影して誤魔化すのさ。だが、こいつが通用しないと落とされる可能性がある。命の惜しい奴は途中下車してもいいぜ?」



 そう言いながらパラシュートを手渡す山本氏。

 ゲーム内の命が安いとは言え、それを使って降りた先でどんな質問攻めに合うかわからない。なにせ情報は既に撒かれたあとなのだ。

 ならば死なば諸共と山本氏は赤の聖獣さんに突っ込んでいく。

 そんな折、不意に私に提案をしてきた。



「そんでアキカゼさん、もしこの船に名前をつけるんなら何にする?」


「これから事故る可能性のある船の名前ですか? じゃあタイタニック号で」


「そいつは縁起が悪ぃや! いくぞ、鯛タニック号! 発進!」



 なんだか山本氏の言い方が微妙におかしかったけど、どういう事だろうか? スズキさんがニコニコしているのも気になる。



「もしかしてスズキさんの提案て?」


「あ、はい。この船の名前を提案してたんです」


「ほう。なんて?」


「鯛タニック号、と」



 ああ、それでか。タイタニックと鯛をかけたんだ。

 良いんじゃないかな? 鯛は縁起物だし。それで本家の不吉な由来を相殺してくれたら良いなぁ、なんて。



「逆にウチらしくていいんじゃないかな?」


「ハヤテさんならそう言ってくれると思ってました!」


「じゃあ、無事に生き残ったら大いに宣伝に使わせてもらおうか」


「僕も応援手伝いますよー」


「よろしくね」



 こうして私達のクラン専用飛空挺の名前は鯛タニック号に決定した。

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