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Atlantis World Online -定年から始めるVRMMO-  作者: 双葉鳴
三章 お爺ちゃんと古代の導き
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融通の利かない大人達

「ほれ、出来たぞ。ご注文の品じゃ」



 納期を軽く三週間ぶっちぎっておいて、ダグラスさんがいい笑顔で次のクランイベントの目玉である記念コインを持ってきた。

 掌サイズのコインでありながら、中央に桜町町内会AWO部のロゴ、透かし、明星に、開いたスペースには桜のマークが載っている。

 裏まできっちり作っている完璧具合。ちなみに裏にはロットナンバーが記されていて、300枚を想定しているからか[No.001]と記されている。


 バカだなぁ、やり過ぎでしょ。

 これじゃあリアルの硬貨と同じレベルの技術使われてるやつじゃない。誰がここまでやれって言ったの?


 隣で完成度に頷くジキンさん。

 きっとこの人だな、趣味人に余計なこと言ったの。



「なんですか、クランマスター。その不躾な視線は?」


「なんでもないですよサブマスター。しかしダグラスさん、これ一枚にコストどれだけかけました?」


「うぬ、まぁ趣味の範囲で作ったし、コストなんて度外視じゃわい。注文表には他では絶対に真似できない技術と、やれる事を全力でやれとしか書いておらんかったし」



 あーあ、やっちゃった。

 言い出しっぺの私が言うのもなんですけど、この人達バカじゃないかな?

 きっとクラン設立費くらい湯水の如く溶かしてそうだ。

 私言いましたよね? 300枚用意しろって。

 なんで見本品作るのに一ヶ月以上使ってるんですかこの人!



「しかし見事な色合いですね、何の鉱石を使ったんです?」


「そいつは合金じゃな。一応人力でも合金は作れるんじゃが、この街は一応銀の産出場じゃろ? そんでもって始まりの街からの連絡口じゃ。だからその中間地点で入手可能な鉱石は全部ぶっ込んだ。ちなみにそれらを使ったところで出来上がったインゴットに何の価値も無いわい」



 ガッハッハと豪快に笑うダグラスさん。

 本当にこの人自由だなぁ。



「合金としての価値がないのはわかりました。でも重さは記念コインに丁度いい」


「そこじゃ。普通ならこんな趣味のもんに合金なんか使う奴はハッキリ言って居らん。だからこそ、そこに目をつけた」


「確かにコインに丁度いいですね。しかし合金の価値がないとは?」


「単純に武器に錬成しようにも、防具に錬成しようにも脆すぎるんじゃ。なんせ色んな鉱石を全部ぶっ込んだんじゃしな。弱点も耐久の低さもてんこ盛りじゃわい。だからこそこんなもんを欲しがる奴は居らんじゃろ?」


「そうですね。わかりました、合金の採用を認めます。でも単純にそのコイン、量産て可能ですか?」


「可能じゃよ。単純に今まではデザインで迷ってたようなもんじゃし、型は作ったから後は材料次第じゃな」



 ほっ、よかった。そこまでバカじゃなくて。

 合金と言っても鉱石はファストリアからセカンドルナまでに手に入るものなんだよね?



「ちなみに一個作るのに最低アベレージ100万は覚悟してもらうぞ?」



 やっぱりバカだった。

 ねぇ、なんでこの人採用したの?

 300枚作るって言ったじゃない!

 なんでコイン作るだけでクランが傾きそうなコストかけてるの?

 言ったよね、これは布石でまだ先があるって!

 


「これはゴーサインですね、クランマスター」


「私はポケットマネー出さないけど、本当に平気なの?」


「なんじゃ、材料さえ揃えば炉の燃料くらいワシの方で出すぞ? ここでかかる費用のほとんどが炉の温度調整に使われるからの。ワシの方の負担が一枚辺りアベレージ70万くらいじゃの」



 流石一級鍛治師。

 っていうか材料より炉の燃料費の方が高いってどういう事です?

 まぁ一枚30万で300枚なら9000万で済む。

 それくらいならば予算のうちで済むかな?



「ちなみにじゃが、これはワシだから一枚100万で済むことを忘れてもらっては困る。うちの倅じゃと、一枚辺り1000万は燃料調整につぎ込むじゃろうな」


「やはり技術ですか?」


「いんや、単純にあいつは種族が人間じゃからの。ドワーフじゃなきゃそこらへんの調整は無理じゃわい。なんたって種族補正で鉱石の声が聞こえるからの。なまじ側に拘ると損するんじゃ、このゲームは」



 そんな仕掛けがあったんだ。奥深いと言うか、キャラクタークリエイト時にネコ妖精のミー君が言ってたのはそう言う事だったんだな。人間にこだわる必要はない、違う種族になることも大切だって。



「普通はハヤテ君のようなビルドって速攻詰まるんじゃわ。じゃが、ハヤテ君はワシらの想像を簡単に飛び越えていきおる。見てて面白いんじゃな、ワシら種族に取り憑かれた人間にとっちゃ」


「僕も種族は適当に選びました。でも周囲についていけなさからもっと慎重に選べばよかったなぁって思います」


「ジキン君はそれくらいで丁度いいわい。変に行動的になられても周囲が困るからの。それに普通にその姿で大活躍しとるじゃろ? 何を今更拘り直す必要があるんじゃ?」



 何やら褒められて変に恥ずかしいところでジキンさんの独白が始まりました。ただし十分おかしいレベルで馴染んでるので、これ以上リアルのポテンシャルをこっちにもってこられても困るのはこちらでしょうね。

 私もダグラスさんに同意しますよ。

 あなたはやり過ぎだ。なのにまだまだとかこれから一体どれだけやらかすつもりなんですか?


 私のジト目に気づいたのか、ジキンさんは変な余裕顔を見せつけてくる。



「冗談ですよ。私だってあまり目立つつもりはない。本当は孫と一緒に遊べればそれでよかったんだ。でもね、違う楽しみを見つけてしまった。ハヤテさん、貴方ですよ。貴方は見てて非常にヒヤヒヤする。だから僕がサポートすることによって円滑に回っているんだ。それを覚えていて欲しいな」


「余計なお世話ですよ、サブマスター。でもありがとう。私も貴方に変に畏まられると調子が狂う。いつも通りでよろしくお願いします」


「それでこそハヤテさんだ。実は僕は社長時代に本性を隠して生きてきた。一応会社の顔だからね、変なイメージはつけられたくなかったんだ。でもね、本音で話せる友人を見つけてしまった。その責任はこれからとってもらうとして、これからもこんな調子で付き合って頂けたらありがたい」



 ジキンさんは柄にもなくペコリと頭を下げて私に言う。



「やめてくださいよ恥ずかしい。新しい精神攻撃か何かですか?」


「ふふ、変わらないですね。すばらしいです。この僕がここまで態度を改めたのに。普通だったら驚くとか、変に畏るとかするもんですよ? でも貴方は変わらない。うちの息子たちにも見習わせたいものだ。でもやめておこう、変な癖をつけられても困る。あの子たちはなんだかんだ純粋だからね。子供を守るのは親の務めだ」


「頼まれたって嫌ですよ、面倒くさい。だいたい私には可愛い娘たちがいるんだ。今更余計なイメージで汚さないでください」



 罵り合いに注ぐ罵り合い。

 でも不思議と心があったかくなる。

 本当はちゃんと頭を下げて頼まれたら断れない性格だってわかってて聞いてるんだよ、この人。

 それでも息子達を守りたいって気持ちは本当なんだろうなぁ。


 でも純粋?

 森のくま君とか相当に手遅れな部類じゃないのか?

 一番上は知らないけど、ギン君とかロウガ君とか結構癖強いよね? 

 純粋ってなんだっけ?

 親の言うことを真面目に聞いてくれるとかそう言うこと?

 それってただの横暴の間違いじゃないの?



「話が纏まったところで量産に入ってもいいかの?」


「ええ」


「今更やり直したところでまた一ヶ月とかかけるんでしょう?」


「そりゃもちろんじゃ。材料探しから始めるからの」


「じゃあクランマスターとしては許可します。ダグラスさん、よろしくお願いします」


「任されたわい」



 こうして一大事業であるクラン記念コインのイベントが開始された。時間かかり過ぎですよ。

 でも、互いの気持ちが知れたのは大きかった。

 あとは出店だな。妻は乗り気になってくれるだろうか?

お読みいただきありがとうございます

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